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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) >  乗揚事件一覧 >  事件





平成15年長審第56号
件名

貨物船高山丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年1月22日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(清重隆彦)

理事官
金城隆支

受審人
A 職名:高山丸船長 海技免許:四級海技士(航海)

損害
右舷船首部から同舷中央部にかけて船底外板に破口を伴う凹損

原因
針路の保持不十分

裁決主文

 本件乗揚は、針路の保持が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年5月10日07時30分
 長崎県相浦港港外
 
2 船舶の要目
船種船名 貨物船高山丸
総トン数 583トン
登録長 66.66メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,323キロワット

3 事実の経過
 高山丸は、主に長崎県相浦港からの海砂運搬に従事する、船首部にジブクレーン(以下「クレーン」という。)を備えた船尾船橋型の鋼製産業廃棄物運搬船兼石材・砂利採取運搬船で、A受審人ほか4人が乗り組み、海砂1,100立方メートルを積載し、船首3.6メートル船尾4.5メートルの喫水をもって、平成15年5月10日07時00分同港を発し、福岡県三池港北方沖合で錨泊中の台船に向かった。
 ところで、A受審人は、平素からよく航行する海域であったところから、餅米瀬灯浮標の西方950メートルばかりのところに、滝瀬と称する浅所が存在することを知っていた。
 A受審人は、出港操船に引き続いて単独で船橋当直に就き、07時11分相浦港1号防波堤灯台から355度(真方位、以下同じ。)40メートルの地点で、針路を219度に定め、機関を全速力前進にかけて8.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)とし、周囲に多数の漁船が認められたので、手動操舵で進行した。
 A受審人は、07時26分餅米瀬灯浮標を右舷側に100メートル離して航過したのち、舵中央として操舵スタンドに両肘をついて身体を舵輪にあずけ、甲板上で手仕舞い作業をしている乗組員やクレーンの動きを目で追っているうち無意識に身体を動かして右舵がとられ、自船は徐々に右回頭していたが、このことに気付かず、直進しているものと思い、コンパスで針路を確認するなどして、針路の保持を十分に行うことなく、滝瀬に著しく接近する状態で続航した。
 高山丸は、同じ速力で右転しながら進行中、07時30分260度に向首したとき、牛ケ首灯台から106度1.3海里の滝瀬に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、右舷船首部から同舷中央部にかけて船底外板に破口を伴う凹損を生じたが、のち修理された。 

(原因)
 本件乗揚は、相浦港を出港して南下する際、針路の保持が不十分で、滝瀬に著しく接近したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、単独で船橋当直に就き、相浦港を出港して南下する場合、滝瀬の存在を知っていたのであるから、同瀬に著しく接近することのないよう、針路の保持を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、手動操舵のまま、舵中央として操舵スタンドに両肘をついて身体を舵輪にあずけ、甲板上で手仕舞い作業をしている乗組員やクレーンの動きを目で追っているうち無意識に身体を動かして右舵がとられ、右回頭していたことに気付かず、直進しているものと思い、コンパスで針路を確認するなどして、針路の保持を十分に行わなかった職務上の過失により、滝瀬に著しく接近する状態で進行して乗揚を招き、右舷船首から同舷中央部船底外板に破口を伴う凹損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して、同人を戒告する。





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