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 海難審判庁採決録 >  2004年度(平成16年) >  乗揚事件一覧 >  事件





平成15年函審第53号
件名

漁船第五十五海鷹丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成16年1月28日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(野村昌志、岸 良彬、古川隆一)

理事官
今泉豊光

受審人
A 職名:第五十五海鷹丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
海鷹丸・・・船底中央部外板に亀裂、推進器翼及びシューピースを損傷、舵を脱落

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年7月27日20時40分
 北海道ハボマイモシリ島西岸沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第五十五海鷹丸
総トン数 9.7トン
全長 19.20メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 367キロワット

3 事実の経過
 第五十五海鷹丸(以下「海鷹丸」という。)は、刺網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人(昭和50年9月一級小型船舶操縦士免許取得)ほか4人が乗り組み、空倉のまま回航の目的で、船首0.3メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、平成15年7月27日19時30分北海道花咲港を発し、北海道歯舞漁港に向かった。
 ところで、海鷹丸のさんま刺網漁は、昼間に操業し、長さ1,000メートルほどの刺網の投網に約10分間を、揚網に1時間ないし8時間をそれぞれ要し、投網終了から揚網開始までの3時間ないし4時間及び夜間は漁場で漂泊して待機するものであった。
 これより先、同月25日09時00分A受審人は、歯舞漁港を出港し、同港南方40海里付近の漁場に至って操業を行い、27日16時30分花咲港に入港してさんまを水揚げしたのち発航したものであるが、漂泊待機中には、漁具の整備を行ったり、見張りに当たったりすることがあり、また港と漁場間の航海当直を自ら単独で行っていたことから、連続的な休養が十分にとれず、疲労が蓄積した状況にあった。
 A受審人は、出港操船に引き続いて単独の航海当直に当たり、20時17分少し前ハボマイモシリ島灯台(以下「モシリ島灯台」という。)から220度(真方位、以下同じ。)4.3海里の地点に達したとき、針路を同島の西端部に向首する039度に定め、11.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
 定針したときA受審人は、操舵室右舷側にある背もたれ付きのいすに腰掛けて見張りに当たっているうち、蓄積した疲労から強い眠気を催したが、操舵室正面の窓を開けており、またあとわずかで入港するので何とか眠気を我慢できるものと思い、休息中の乗組員を昇橋させて2人当直とするなど、居眠り運航の防止措置をとらずに続航した。
 20時22分A受審人は、モシリ島灯台から220度3.3海里に至って、間もなく居眠りに陥った。
 こうして海鷹丸は、居眠り運航となり、20時38分モシリ島灯台から228.5度770メートルの予定転針点に達したが、歯舞漁港に向け転針が行われず、ハボマイモシリ島西岸沖合の浅所に向首したまま進行中、20時40分原針路原速力のまま、モシリ島灯台から278度150メートルの地点の浅所に乗り揚げた。
 当時、天候は雨で風力3の北北東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
 A受審人は、衝撃により目覚めて乗り揚げたことを知り、事後の措置に当たった。
 乗揚の結果、海鷹丸は船底中央部外板に亀裂を生じたほか、推進器翼及びシューピースを損傷し、舵が脱落して自力航行不能となり、来援した僚船により歯舞漁港に引き付けられ、のち修理された。 

(原因)
 本件乗揚は、夜間、北海道歯舞漁港に向け、同港沖合を航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、ハボマイモシリ島西岸沖合の浅所に向首進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、北海道歯舞漁港に向け、同港沖合を航行中、眠気を催した場合、休息中の乗組員を昇橋させて2人当直体制にするなど、居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、あとわずかで入港するので何とか眠気を我慢できるものと思い、休息中の乗組員を昇橋させて2人当直とするなど、居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により、操舵室右舷側のいすに腰掛けて見張りに当たっているうち、いつしか居眠りに陥り、ハボマイモシリ島西岸沖合の浅所に向首進行して乗揚を招き、海鷹丸の船底中央部外板に亀裂を生じさせ、推進器翼及びシューピースを損傷させるとともに舵を脱落させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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