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平成15年広審第113号
件名

旅客船こくどう丸岸壁衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年2月18日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(西田克史)

副理事官
園田 薫

受審人
A 職名:こくどう丸船長 海技免許:三級海技士(航海)

損害
こくどう丸・・・右舷防舷材に凹損
フェリー岸壁・・・防舷材及び支柱に損傷

原因
針路選定不適切

裁決主文

 本件岸壁衝突は、着岸するにあたり、進入態勢の立直しの措置が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年5月22日13時48分
 香川県高松港
 
2 船舶の要目
船種船名 旅客船こくどう丸
総トン数 999トン
全長 73.32メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 2,059キロワット

3 事実の経過
 こくどう丸は、岡山県宇野港と香川県高松港との間で定期運航に従事し、可変ピッチプロペラ及びバウスラスタを備えた操舵室が船首後方18メートルに位置する2機2軸の旅客船兼自動車渡船で、A受審人ほか7人が乗り組み、旅客12人及び車両7台を載せ、船首2.9メートル船尾3.0メートルの喫水をもって、平成15年5月22日12時47分宇野港を発し、高松港北浜フェリー岸壁(以下「フェリー岸壁」という。)に向かった。
 ところで、フェリー岸壁は、中央ふ頭の基部にあって南東方に面しており、054度(真方位、以下同じ。)に45メートル延びる岸壁と、その延長線上で5.0メートル隔てて鋼製支柱7本で海底に固定された長さ5.0メートル幅4.5メートルのドルフィンとで構成されていた。
 また、こくどう丸は、フェリー岸壁に入船右舷付けで着岸するにあたり、その進入方法として中央ふ頭北方沖合から南方の同岸壁沖合に向かって右回頭し、風などの影響がなければ、フェリー岸壁北東端から船首までの距離140メートルばかりの地点で、岸壁法線に沿う234度の平行針路をとりフェリー岸壁を右舷側5メートルに離す間隔を保って進入していた。
 A受審人は、宇野港発航時から操船に就いて備讃瀬戸を南下し、13時半過ぎ高松港港界線付近で入港部署を発令したのち、高松港の航路を通過したところで、操舵室右舷側に設備された可変ピッチプロペラの翼角操作用のジョイスティック、舵角操作用の回頭ダイヤル及びバウスラスタ操作用のダイヤルが組み込まれた操縦スタンドに移動して手動操舵にあたり、13時45分高松港東防波堤灯台(以下「東防波堤灯台」という。)から155度300メートル(以下、船位については操舵室を基準とする。)の地点に達したとき、海上が穏やかでいつもの予定針路線に乗せるつもりで、回頭ダイヤルを適宜操作して5.0ノットの対地速力で右回頭を始めた。
 A受審人は、予定針路線に差し掛かったので翼角及び舵角をそれぞれ0度とし、13時46分東防波堤灯台から160度420メートルの、同針路線上に至ったとき、右舷前方から進路が交差する態勢で接近するプレジャーボートを視認して驚き、翼角を後進に短時間かけて同船の動きを見守り、右回頭惰力と2.5ノットの残存速力で予定針路線よりわずかに右偏しながら進行した。
 13時47分A受審人は、東防波堤灯台から170度435メートルの地点に至り245度に向首していたとき、プレジャーボートが反転して危険がなくなったのでフェリー岸壁へ進入することとし、このとき予定針路線より10メートルほど右に偏して同岸壁北東端が左舷船首10度60メートルばかりに迫った状況であったが、バウスラスタを使ってフェリー岸壁を右方に替わしさえすれば何とか着岸できると思い、いつものように同岸壁と余裕のある正横距離を保って安全に進入することができるよう、機関を後進にかけてフェリー岸壁から十分に離れたうえで進入態勢の立直しの措置を適切に行うことなく、翼角を適宜前進にかけながらバウスラスタを使って針路を種々修正して同岸壁の奥に向かう235度の針路としたものの、フェリー岸壁に著しく接航したまま続航し、船首が同岸壁北東端を通過したので行きあしを止めるつもりで翼角を後進にかけたとき、13時48分東防波堤灯台から177度475メートルの地点において、こくどう丸は、原針路のまま、1.0ノットの残存速力で、その右舷前部の防舷材が、フェリー岸壁の防舷材にほぼ平行に衝突した。
 当時、天候は晴で風力1の北風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 岸壁衝突の結果、こくどう丸は、右舷防舷材に凹損、並びに岸壁の防舷材及び支柱に損傷をそれぞれ生じた。 

(原因)
 本件岸壁衝突は、香川県高松港において、フェリー岸壁に入船右舷付けで着岸するにあたり、予定針路線より右偏して同岸壁が船首至近に迫った状況であった際、進入態勢の立直しの措置が不適切で、フェリー岸壁に著しく接航したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、香川県高松港において、フェリー岸壁に入船右舷付けで着岸するにあたり、予定針路線より右偏して同岸壁が左舷船首至近に迫った状況であった場合、いつものようにフェリー岸壁と余裕のある正横距離を保って安全に進入することができるよう、機関を後進にかけて同岸壁から十分に離れたうえで進入態勢の立直しの措置を適切に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、バウスラスタを使ってフェリー岸壁を右方に替わしさえすれば何とか着岸できると思い、進入態勢の立直しの措置を適切に行わなかった職務上の過失により、同岸壁に著しく接航して衝突を招き、こくどう丸の右舷防舷材に凹損及びフェリー岸壁の防舷材等に損傷をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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