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平成15年広審第96号
件名

油送船大日丸貨物船第二十一旭豊丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成16年1月21日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(道前洋志、西林 眞、佐野映一)

理事官
村松雅史

受審人
A 職名:大日丸船長 海技免許:三級海技士(航海)
B 職名:第二十一旭豊丸船長 海技免許:五級海技士(航海)

損害
大日丸・・・船首部に凹損
第二十一旭豊丸・・・船尾部に凹損

原因
大日丸・・・居眠り運航防止措置不十分、追越し船の航法(避航動作)不遵守(主)
第二十一旭豊丸・・・追越し船の航法(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、第二十一旭豊丸を追い越す大日丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、第二十一旭豊丸を確実に追い越し、かつ、同船から十分に遠ざかるまでその進路を避けなかったことによって発生したが、第二十一旭豊丸が、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aの三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 受審人Bを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年12月18日20時53分
 備後灘西部
 
2 船舶の要目
船種船名 油送船大日丸 貨物船第二十一旭豊丸
総トン数 896トン 436トン
全長 77.24メートル 61.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 1,456キロワット 735キロワット

3 事実の経過
 大日丸は、船尾船橋型鋼製油送船で、A受審人ほか5人が乗り組み、C重油2,000キロリットルを載せ、船首4.4メートル船尾5.2メートルの喫水をもって、平成14年12月18日13時15分兵庫県姫路港を発し、福岡県宇島港に向かった。
 A受審人は、船橋当直を自らと一等航海士及び二等航海士とによる単独4時間制とし、出港操船に引き続いて船橋当直に就き、14時30分次直者に船橋当直を引継いで自室で休息し、18時00分ころ夕食を済ませた後風邪気味であったことから市販の薬を服用して再び自室で休息した。
 19時30分A受審人は、六島灯台から250度(真方位、以下同じ。)2.0海里の地点で、前直の一等航海士から正船首やや左方2.5海里ばかりのところに先航する第二十一旭豊丸(以下「旭豊丸」という。)の船尾灯が見えている旨の引継ぎを受けて単独の船橋当直に就き、針路を250度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて10.5ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で、暖房を効かせて立って見張りを行いながら、法定灯火を表示して進行した。
 20時18分A受審人は、備後灘航路第4号灯浮標を左舷側0.6海里に並航したころ、旭豊丸を正船首やや右方2海里ばかりに見るようになり、同船との速力差がわずかであって、付近に他船はいなかったことから気が緩んだうえ、風邪気味でもあって眠気を催すようになったが、他の乗組員を休ませようと思い、他の乗組員を昇橋させて2人で当直に当たるなど居眠り運航の防止措置をとることなく、船橋前面中央部の棚に肘をついて寄りかかって見張りを続けているうち、いつしか居眠りに陥った。
 A受審人は、20時32分に旭豊丸が来島海峡に向かうため針路を左に転じたうえ減速したので、同時35分には右舷船首10度1.6海里のところに同船を視認できる状況となり、同時48分高井神島灯台から303度1.8海里の地点に達したとき、右舷船首15度700メートルのところに同船を視認でき、その後同船を追い越す態勢で接近する状況となったが、依然、居眠りを続けてこのことに気付かず、旭豊丸を確実に追い越し、かつ、同船から十分に遠ざかるまでその進路を避けないまま続航した。
 20時53分少し前A受審人は、ふと目覚めたとき、船首至近に旭豊丸を認め、急いで手動操舵に切替えて右舵一杯としたが及ばず、20時53分高井神島灯台から286度2.5海里の地点において、大日丸は、5度右回頭して255度に向首し、原速力のまま、その船首が旭豊丸の船尾に後方から15度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力1の南西風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 また、旭豊丸は、船尾船橋型鋼製液体化学薬品ばら積船兼油送船で、B受審人ほか4人が乗り組み、1,4-ブタンジオール400トンを載せ、船首2.2メートル船尾3.8メートルの喫水をもって、同月17日16時50分三重県四日市港を発し、愛媛県松前港に向かった。
 B受審人は、鳴門海峡及び備讃瀬戸を経て、翌18日19時20分六島灯台から238度2.8海里の地点で、前直の一等航海士から引継いで単独の船橋当直に就き、針路を255度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて10.0ノットの速力で、法定灯火を表示して進行した。
 20時32分B受審人は、高井神島灯台から335度1.8海里の地点に達したとき、針路を240度に転じ、来島海峡通航の時間調整をすることとして5.0ノットの微速力前進に減じて続航し、同時48分同灯台から297度2.1海里の地点に達したとき、左舷船尾25度700メートルのところに大日丸の白、白、緑3灯を初めて視認し、その後同船が追い越す態勢で接近していることを認めた。
 20時50分B受審人は、大日丸が左舷船尾300メートルばかりに接近したので、エアーホーンによって短音を5回吹鳴して警告信号を行い、同船との距離をあけるため7.0ノットの半速力前進とし、同時51分には大日丸が避航しないまま200メートルばかりに接近したが、警告信号を行ったのでそのうち同船が避航してくれるものと思い、大きく右転するなど衝突を避けるための協力動作をとることなく進行し、同時52分大日丸が更に接近するので危険を感じて全速力前進としたが及ばず、旭豊丸は、原針路のまま、10.0ノットの速力となったとき、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、大日丸は船首部に凹損を、旭豊丸は船尾部に凹損をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理された。 

(原因)
 本件衝突は、夜間、両船が備後灘西部を西行中、旭豊丸を追い越す大日丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、旭豊丸を確実に追い越し、かつ、同船から十分に遠ざかるまでその進路を避けなかったことによって発生したが、旭豊丸が、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、単独で船橋当直に当たって備後灘西部を西行中、風邪気味であったことから眠気を催した場合、他の乗組員を昇橋させて2人で当直に当たるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、他の乗組員を休ませようと思い、他の乗組員を昇橋させて2人で当直に当たるなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、旭豊丸を追い越す態勢で接近していることに気付かず、同船を確実に追い越し、かつ、同船から十分に遠ざかるまでその進路を避けることなく進行して旭豊丸との衝突を招き、大日丸の船首部に凹損を、旭豊丸の船尾部に凹損をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 B受審人は、夜間、単独で船橋当直に当たって備後灘西部を西行中、自船を追い越す態勢で接近する大日丸を左舷船尾方に認めて警告信号を行い、その後同船が避航しないまま接近した場合、大きく右転するなど衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、警告信号を行ったのでそのうち同船が避航してくれるものと思い、大きく右転するなど衝突を避けるための協力動作をとらなかった職務上の過失により、大日丸との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図





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