(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成15年3月20日03時50分
福井県敦賀港
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第二十八結城丸 |
総トン数 |
75.92トン |
登録長 |
28.06メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
536キロワット |
3 事実の経過
第二十八結城丸(以下「結城丸」という。)は、沖合底びき網漁業に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか5人が乗り組み、かに漁の目的で、船首2.8メートル船尾3.2メートルの喫水をもって、平成15年3月18日05時00分福井県敦賀港を発し、10時30分ころ経ケ岬北北西方約30海里の漁場に至って操業を開始し、延べ14回の操業でかに約900匹を漁獲し、翌19日22時30分同岬北方約19海里の地点で操業を終え、帰途に就いた。
漁場を発進後A受審人は、甲板員2人に船橋当直を命じて休息し、翌々20日03時00分立石岬北方1,300メートルのところで甲板員と交替し、単独の船橋当直に就いた。
A受審人は、それまで4時間半ほど休息をとったものの、ほぼ1昼夜半にわたる操業中、十分に休息をとっていなかったので、椅子に座ると眠るかも知れないと思い、船橋右舷側の機関操作盤の横に立って見張りにあたり、03時12分立石岬灯台から085度(真方位、以下同じ。)1.6海里の地点に達したとき、針路を178度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、敦賀港港奥に向け、10.0ノットの対地速力で進行した。
定針後A受審人は、疲労と睡眠不足から強い眠気を感じるようになったが、当直前に休息をとったので、入港まで眠気を我慢できると思い、休息中の乗組員を呼んで2人で当直にあたるなど居眠り運航の防止措置をとることなく、船橋右舷側の窓にもたれて立った姿勢で当直を続けるうち、いつしか居眠りに陥った。
03時25分半結城丸は、敦賀港金ケ崎灯台(以下「金ケ崎灯台」という。)から356度3.7海里の地点で敦賀港内に入り、その後着岸予定の松栄町岸壁入口に向かって続航し、03時47分半同灯台を左舷側200メートルに航過し、前示岸壁入口の防波堤まで600メートルばかりとなったが、A受審人が居眠りをしていたので減速、転舵などの入港操船が行われず、港奥の陸岸から120メートル沖合に東西方向に設置された長さ120メートルの離岸堤に向首して進行し、03時50分金ケ崎灯台から198度780メートルの地点において、原針路、原速力のまま、前示離岸堤にほぼ直角に衝突した。
当時、天候は晴で風力3の北風が吹き、潮候はほぼ高潮時であった。
衝撃で目覚めたA受審人は、機関を後進にかけて離岸堤から離れたあと、自力航行で松栄町岸壁に接岸し、直ちにオイルフェンスを張るなどして船首タンクから流出した燃料油の拡散防止及び流出油回収の措置をとった。
衝突の結果、船首部を圧壊して船首タンクに亀裂が入るとともに、船橋内の航海計器類が衝撃で損傷したが、のち修理された。また、同タンクに積んでいた燃料油の一部が海上に流出した。
(原因)
本件離岸堤衝突は、夜間、福井県敦賀港において、沖合底びき網漁の操業を終えて同港に帰航する際、居眠り運航の防止措置が不十分で、港奥の離岸堤に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、1昼夜半にわたる沖合底びき網漁の操業を終えたあと、夜間、福井県敦賀港沖合において、単独の船橋当直に就いて同港港奥に向け帰航中、疲労と睡眠不足から強い眠気を感じた場合、休息中の乗組員を呼んで2人で船橋当直にあたるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかし、同人は、当直前に休息をとったので、入港まで眠気を我慢できると思い、休息中の乗組員を呼んで2人で船橋当直にあたるなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥って離岸堤との衝突を招き、船首部を圧壊して船首タンクに亀裂を生じさせるとともに、船橋内の航海計器類を損傷させ、同タンクに積んでいた燃料油の一部を海上に流出させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。