日本財団 図書館


船舶の対応策と津波対応計画
 津波による船舶への影響を検討したうえで、船舶の船型、状況別に各船舶の望ましい対応を検討することになります。委員会では、望ましい対応策として標準的な対応策を検討し、船型と船舶の状況別に整理して詳しく示すとともに、「津波に対する船舶対応表」として、【図4】にまとめて示しました。
 以上の検討結果を基に、地域防災計画との整合性を図って、津波対応計画を策定することになります。津波対応計画のなかでは、津波対策協議会(仮称)の関係機関の役割分担を定め、情報伝達の系統や効果的な伝達手段を確立し、避難順序や支援体制を構築し、避難勧告の発出要領、避難勧告などの解除時期や再入港の調整などについても定めておくことが必要であるとしています。
 また参考として、作成した港内津波対策検討手引きに従って、実際に清水港について津波対策の検討を簡易的に実施してみました。
おわりに
 本委員会では、船舶の望ましい津波対応について検討を行い、各港(地域)において津波対策を検討する場合の参考に資するため、港内津波対策検討手引きを作成しました。これは、一般的、標準的なものとしてまとめたものですが、船舶は、種類、大きさ、形態、航行状態、停泊状態などが各船ごとに異なり、さらに港湾の状況、利用状況なども異なることから、津波への対応はそれぞれの船舶、港ごとに異なるといえます。従って、今後、各港(地域)においては、本委員会の検討を参考に、それぞれの特性などに応じた対応策を検討・策定するとともに、各船舶においても適切な対応策を策定することが望まれます。
 また、本委員会では、既存の資料や過去の研究成果の整理分析を行いましたが、過去の津波災害に関する資料は、陸上災害に関するものがほとんどで、船舶の被害について詳細に分析し、報告した事例はわずかしかありません。わずかに報告されているものについても、その大部分は小型漁船などの陸上への打ち揚げ状況についてであり、津波規模と船舶被害について検証している事例はほとんどありません。また、大型船舶に関する被害(係留索の切断や岸壁との衝突による被害など)についてもほとんど報告されていません。
 大地震の発生が予想され、津波来襲による船舶への被害が想定される場合に、船舶の被害状況や被害程度を推定し、それに対する対策を検討するには、過去の津波に関する船舶被害の資料は非常に有用なものとなります。よって、このような資料の収集態勢を整備し、将来の津波対策に生かせるようにすることが必要と考えられます。
 それには、関係機関が連携し、津波来襲後速やかに調査班などを組織し、港湾を中心に幅広く船舶被害の状況を調査できる体制を整備するとともに、統一的で継続的な調査を実施することが望まれます。
 
[図4]津波に対する船舶対応表
(拡大画面:148KB)


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION