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参考資料
「地域文化財保存・歴史的遺産活用による地域おこしのためのプログラム」について
 自治省(現「総務省」以下同じ。)による地域伝統芸術等への取組の礎となる報告が「歴史的遺産・伝統文化(伝説・神話等)の活用による地域おこし懇談会報告書」(座長:梅原猛氏)として、平成11年3月に取りまとめられた。そのなかで、懇談会での意見を踏まえ「地域文化財保存・歴史的遺産活用による地域おこしのためのプログラム」の提言があった。
 
○「地域文化財保存・歴史的遺産活用による地域おこしのためのプログラム」の提言(概要)
 
 保存事業支援や全国イベントを中心として、国レベル・都道府県レベル・市町村レベルの取組みを体系的に結びつけ、全国的な広がりを目指す。
 
(市町村レベル)
 日常的・地域ぐるみの保存活動を活発化させる。
 
(都道府県レベル)
 都道府県としての日常的な保存活動のほか、次のような事業により保存継承事業の広がりを目指す。
(1)地域文化財保存委員会の設置
(2)地域文化財顕彰のための発表大会開催
(3)歴史的遺産等を活用した地域おこしのためのハード事業の実施
 
(国レベル)
 全国イベントの開催、専門家による後押し体制等により、全国的な取組みを鼓舞。
(1)地域文化財保存事業への支援
(2)全国的イベントの開催
(3)ビデオライブラリーの全国ネットワーク
 
※ その他国の施策として、
・地域文化財・歴史的遺産を活用した地域活性化の事業に対する地方債による支援
・都道府県・市町村の普通交付税に地域文化財保存活動にかかる経費の算入
 がある。
 
地域伝統芸術等保存事業について
 地域伝統芸術等保存事業は、「歴史的遺産・伝統文化(伝説・神話等)の活用による地域おこし懇談会」(会長:梅原猛氏)がとりまとめた「地域文化財保存・歴史的遺産活用による地域おこしのためのプログラム」(H11.3)に基づき、平成11年度から実施されてきた。具体的には、「保存事業支援や全国イベントを中心として、国レベル・都道府県レベル・市町村レベルの取組みを体系的に結びつけ、全国的な広がりを目指す。」という提言を踏まえ、(1)地域伝統芸能まつり(全国イベント事業)、(2)都道府県イベント事業(都道府県事業)(3)映像記録保存事業(市(区)町村事業)等が実施されている。
 これらの事業は、地域の伝統芸術等を映像に記録・保存するとともに、発表の場としてのイベントを開催することにより、地域住民の新しいふるさとづくりへの取組みや、地方公共団体の文化環境づくりの向上に大きく寄与している。
 
1 全国イベント事業(地域伝統芸能まつり)
(1)内容
(1)地域伝統芸能の実演
(2)古典芸能の実演
(3)映像、パネル、展示による地域伝統芸能の紹介
 
・地域伝統芸能まつりは、全国の地域伝統芸能等が一堂に会して実演を披露するイベントで、毎年1回NHKホールで行われており、平成16年度も「福(ふく)」というテーマで、平成17年2月16日、27日に開催された。
・演目の構成は2日間で合計15程度の地域伝統芸能の実演を行う。1日につき7〜8の演目の実演を行い、実演時間は1演目あたり30分〜40分程度である。また、実演に合わせて、地域伝統芸能などの由来や意義、それを支える人々、地域社会におけるあり方などを紹介している。
・伝統芸能が現代の古典芸能にどのように承継し、影響を与えているか明らかにするため、現代の古典芸能(狂言、歌舞伎等)も3演目程度併せて上演する。
 
(2)成果、問題点等
・定員を大きく超える観覧希望がある。観覧者からは、地域文化を見つめ直し、郷土愛を育む契機等となるイベントだと好評を得ており、地方公共団体や地域伝統芸能の実演団体からも、存続して欲しい、次回はぜひ出場したいという希望が多数寄せられるようになっている。
・出演団体は毎年8〜10程度で、実行委員会において可能な限り全国各地から選ぶよう配慮して選出しているが、いまだ出演のない府県が第5回イベント開催時で14府県残っている。
 
<参考1: 地域伝統芸能まつり観覧者数と応募倍率>
第4回 第3回 第2回 第1回
応募倍率 3.60 3.61 5.67 3.31
観覧者数 5,598名 5,276名 5,666名 6,028名
※男女比:女性が概ね6割、年齢層:50代〜70代で全体の8割
 
2 都道府県イベント事業(都道府県事業)
(1)内容
 住民の地域伝統芸術等に対する意識啓発に資するため開催される、地域伝統芸術の紹介や発表、シンポジウム等の事業(都道府県イベント事業)を実施する際に、都道府県に設置されたイベント実行委員会等に対して財団法人地域創造が助成を行うものである。
 助成額は1イベント実行委員会あたり、助成対象事業経費から入場料等収入を控除した額の10分の10以内とし、400万円を基準額とする。
 
(2)成果・問題点等
・都道府県イベント事業は、地域レベルで様々な伝統芸能等を披露する場として好評を得ており、この5年間でのべ35道府県において開催されてきた。しかし、複数回開催した地域を除き、実開催地は21道府県にとどまっている。
 
<都道府県イベント実績>
年度 採択数 開催県名
平成11年度 4 青森県、神奈川県、島根県、山口県
平成12年度 5 山形県、埼玉県、愛知県、奈良県、徳島県
平成13年度 8 北海道、山形県、埼玉県、神奈川県、愛知県、滋賀県、奈良県、徳島県
平成14年度 10 青森県、山形県、福島県、埼玉県、山梨県、岐阜県、愛知県、三重県、徳島県、鹿児島県
平成15年度 8 埼玉県、京都府、和歌山県、鳥取県、島根県、広島県、徳島県、鹿児島県
平成16年度 8 山形県、石川県、愛知県、奈良県、鳥取県、広島県、徳島県、鹿児島県
43
 
<都道府県イベントの例>
イベント名 概要
「奥羽越の民俗芸能まつり」(福島県) 福島・山形・新潟三県の三匹獅子舞を通じて、文化の交流の足跡をたどろうとするもので、ワークショップで獅子舞の所作の意味や、獅子頭や楽器を例に三県の共通点や違いなどの解説を行い、その後、三県の5つの獅子舞を実際に上演する。
「ふるさとの人形芝居と歌舞伎」(愛知県) 地域に伝承されている芸能文化を紹介。国指定重要無形民俗文化財に指定されている愛知県知立市の人形芝居「山車からくり」をはじめ、4つの地域の人形芝居・歌舞伎をそれぞれやさしい解説付きで上演。
「羽黒山芸能ファンタジー2004」(山形県) 羽黒山の「八朔祭」にあわせ、山形県内に伝わっている、能、神楽、獅子舞など多様な伝統芸能を一堂に集めるほか、アジアから民俗芸能を招聘する。
 
3 映像記録保存事業(市(区)町村事業)
(1)内容
 各地域の失われつつあり、かつ記録の少ない伝統芸術等を映像に記録・保存する市(区)町村に対して経費を財団法人地域創造が助成。
 助成額は1市(区)町村あたり、助成対象事業経費の10分の8以内とし、320万円を基準額とする。
 
(2)成果・問題点等
・毎年多数の申請があり、市(区)町村のニーズは依然として高い。これまで、毎年約30程度の採択があり、平成15年度までで合計159市(区)町村が採択されている。
・全国の市(区)町村数(約2,500)に比べると、採択された地域伝統芸術は少なく、また、過疎化の進行や市町村合併の進展等により、地域伝統芸能等の保存・継承が難しくなってきている地域が多くなってきている。
 
<映像記録保存事業の採択件数>
年度 申請 採択
11年度 30市町村(18府県) 28市町村(17府県)
12年度 49市町村(26都府県) 29市町村(19都県)
13年度 51市区町村(23都府県) 33市区町村(19都府県)
14年度 36市町村(25道府県) 32市町村(23道県)
15年度 40市町村(26都県) 38市町村(24都県)
16年度 30市町村(21県) 28市町村(20県)
合計 236市区町村 188市区町村
※平成13年度は、追加採択(4件)を含む。
※平成15年度は、追加採択(3件)を含む。
※平成16年度は、今回追加採択(2件)を含む。
 
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