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(3)画像の前処理
 ソーナー方程式から音響散乱強度値を算出し、これをもとに画像解析するためには、データに対して前処理が必要となる。
 前処理には、発信出力の検討、海面反射データの除去、不良データの除去がある。
1)発信出力の検討
 ソーナー方程式を使用して、後方散乱強度を求めるとき、ソーナー方程式のステップ1で発信出力を設定する必要がある。ANKOUの発信出力(Power Level)は、データ収録時、船上装置において、オペレータが4パターン設定することができる。ところが、ANKOUの収録ファイルのファイルフォーマットに記録されている「Power Level」は、3パターンである。発信出力が決定できないと、処理を行うことができないので、測量時のログノートに記録されている情報を参考に、収録ファイルに記録されている「Power Level」がどの発信出力に対応するか調査を行った。その結果、今回使用した収録ファイルでは、表5に示すような対応をしていることがわかった。そこで、これに従い、各収録ファイルの発信出力を設定し、後方散乱強度を求め画像データを作成した。作成した画像の結果を図33に示す。この結果、赤枠で示した測線の一部に他の部分と異なる濃度値を持った画像が作成された。そこで、赤枠で示した測線については、収録ファイルに記録されている内容とは異なる発信出力を設定して処理することとした。赤枠部分は、表5によると発信出力はMEDである。これに対し発信出力をTESTに設定した結果図34に示すように均一な画像が作成できた。このため、赤枠部分だけ、表5の対応とは異なるTESTを設定した処理することとした。
 
表5. Power Levelの比較
ログノート 収録ファイル 発信出力の設定
(off) Off Off
TEST
LOW TEST LOW
MED LOW MED
MAX Max HIGH
 
図32 収録ファイルに記録されている
発信出力データをもとに作成した画像
(拡大画面:79KB)
 
図33 発信出力を修正した画像
(拡大画面:86KB)
 
2)海面反射データ除去
 海面反射データは、曳航体より発信した音波が、直接海面で反射し、さらに、海底面より跳ね返ってきものである。ANKOUデータでは海面反射が比較的強く画像上に線上のパターンとして存在することが多い。研究対象エリアの収録したデータには、海面から反射したと思われる音波データが2箇所記録されている。これが存在すると、底質分類を実施する際に誤分類の原因になる。
 そこで、海面反射データの除去処理を実施した。
 
図34 海面反射データ
 
 図35はデータの一部を切り出したものである。データの進行方向は上から下である。画像中央部の曳航体直下付近を除き、直下付近から左右にともほぼ同じ距離に線状の音圧レベルの高いところが見られる。
 図35の(1)のように、直下付近に見られるパターンは、曳航体から発射された音波が、海面で反射し、海底に到達したものを受信したものである。図35の(2)のように画像両翼に見られるものは、さらに海面に到達し、海底面で反射して受信されたものである。
 
図35 海面・海底反射の関係
 
 これらの海面反射データに対して、以下の方法により処理を実施した。
 
(ア)図35に示した(1)(2)あたる位置を収録ファイルに記録されている高度値、深度値の計算する。
(イ)(1)(2)にそれぞれの位置において、処理を行う範囲を設定する。図36は、海面反射データがみられる位置における後方反射強度の分布図である。ここに示している海面反射データが表れている幅は、(1)より(2)の方が大きい。そこで、処理範囲を図22より、(1)は、処理範囲を前後12.5mとし、(2)は、前部分(直下方向)を12.5m、後ろ方向(探査幅外側部分)を125mとした。


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