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4. 考察
 
役割分担モデルの考察
 
・自治体による計画立案能力
−アイデア出しでの地元大学、コンサルの支援も
・NPO、市民団体による代替性
・インフラ部分への関与
−バス停決定の地元交渉、関連施設整備
−ターミナル部分での利用権確保
−車両(購入、リース、性能標準対応)
・事業者への動機付けの方法
・フィードバックの方法(CS、モニタリング等)
 
採算性の新展開
アメリカの無料運行バスの事例
・シアトルのマジックカーペット
−運賃収受方法の工夫で都心区域で実現
−効果は減収と相殺できているか
・バス停停車時間の短縮効果
・乗り継ぎ抵抗の緩和効果
・デンバーの1マイルモール(トランジットモール)
−道路整備と車両購入の沿道負担
−運行費用の沿道負担
−ショッピングセンター内のエレベータの役割
・無料多頻度で回遊性向上、効果はテナントで負担
 
国内の関連事例
 
・お台場と丸の内(東京都)by日の丸リムジン
−利用者は無料
−地区の企業の協賛による費用回収
・みなとみらい100円バス(横浜市)
−赤字分は地元企業が(も)負担
・福祉バスで無料事例は多数ある
・地方SCの無料送迎バス等限定目的事例も多数ある
 
考察:採算性から生産性へ
(運賃収入だけが収入ではない)
 
・地元負担の仕組みの整理
−自治体負担←税金(一般財源)合意どうとるか
−地元企業負担→企業の出資判断基準は
・採算性→生産性(バスの成否の評価)
−同じ費用で最大限のサービス供給(生産性)
−費用負担者が納得できる結果であればよい
−環境負荷など外部不経済は内部化して評価
 
まとめ
 
・主体間の役割分担の再認識
−得意な分野を担当する
−潜在ニーズを含めたニーズの確実な把握
−目標達成を前提に効率化の努力
−従来の発想での採算性を金科玉条としない
−上下分離スタイルの可能性の検討
・道路上の商売→道路活用の「公共的」システム
 
 
地域交通の主体は誰か
〜「協働の時代」の市民参加の視点から〜
横浜市・青葉区民会議広報委員長 中谷 英世
 
 横浜市青葉区は多摩丘陵地帯を東急電鉄が開発した住宅都市。1966年田園都市線の開通で急速に都市化、38年間で人口が2万人から28万に急増、低地を電鉄が走り、住宅やマンションが高台にある山坂の多い都市構造である。更に東急バスと市バスが田園都市線の駅と遠方の団地や大学を結び、通勤通学客を大量輸送している。しかし、駅前道路の構造がこうしたバス路線集中とマイカー急増に対応できず、駅周辺の慢性的な渋滞が地域住民の悩みの種になっている。
 
 一方、開発40年で東京都からの移住者も定年年齢を過ぎ、開発地区順に高齢化が進行、青葉区の男性の平均寿命が80.3歳と日本第3位の高齢化にあるように高齢化問題が顕在化、山坂の多い地形からも、生活サポート交通システムヘのニーズが高まっている。
 しかし、人口35万巨大都市横浜市の北辺にある青葉区は自治権の希薄な行政区で、交通政策の立案機能がない。それは横浜市庁交通局にあるが、赤字対策に大童であり、広大な横浜市の周辺部まで対応できないのが現実である。
 
 こうした現実のなかで青葉区では、都市経営に市民が参加し、都市計画マスタープラン「青葉区まちづくり指針」策定に参画、恩田元石川線問題でも住民参加で道路つくりにとり組んでいる。青葉区民会議は、マイカー抑制と公共交通機関利用促進の視点から、駅前交通問題の提起や新しいバス交通のあり方を検討するシンポジウムを開催するなどキャンペーンを展開している。住民の視点からみた交通網のあり方、団地・学校のピストン輸送型から住宅地生活路線へ、通勤通学からお買物・お出かけサポートヘ、駅センター型から巡回型への必要性を訴えている。
 
 横浜市の中田市長は「民の力が存分に発揮されるまちづくり政策」を進めるため「協働推進の基本指針」を4月1日に発表、市民参加の中で行政改革を進める方針を明らかにした。住民生活の基本的ライフラインである、バス路線を誰が決めるのか、バス料金は誰が決めるのか、住民の声を反映するシステムとはなにかを考えたい。特に路線新設におけるコンセンサス作りに地元住民組織・自治会の役割が極めて大きいが、住民の役割、行政の役割、公共的企業の役割を改めて明らかにし「協働の時代」における交通政策のあり方を問いたい。







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