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(3)滋賀県の地域防犯の取組動向
(1)警察体制の現状
 滋賀県内には、15の警察署管轄(平成16年4月1日現在)があり、交番は46箇所(1管轄あたり3箇所)整備されている。
 警察署警察官数は1,338人である(全国平均:都道府県あたり5,143人)。また警察官1人当たりの負担人口が1,011.88人、負担世帯が343.95世帯である(全国平均:警察官1人当たりの負担人口527.94人、負担世帯203.78世帯)。
 
図表1-46 警察体制の現状(平成16年4月1日現在)
  面積(Km2 人口(人) 警察官1人あたり負担人口 世帯数 警察官1人あたり負担世帯 警察職員数 警察施設数
警察官 一般職員 交番 駐在所 水上派出所 検問所
大津* 211.47 249,816 968.28 95,547 370.34 258 16 14 14 1 2
草津* 100.97 170,178 1,057.01 62,595 388.79 161 11 6 6    
守山 105.71 118,187 1,181.87 39,061 390.61 100 8 3 3
水口 552.18 145,785 1,246.03 46,149 394.44 117 9 5 5 1
近江八幡 145.79 92,905 1,067.87 30,958 355.84 87 7 3 3 1
日野 152.27 37,931 1,025.16 11,082 299.51 37 4
八日市 281.27 84,378 1,041.70 27,451 338.90 81 7 3 3
愛知川 105.40 33,236 898.27 9,384 253.62 37 5
彦根 255.52 131,179 1,049.43 45,274 362.19 125 11 4 4 1
米原 223.10 41,597 967.37 12,377 287.84 43 4 1 1 1
長浜* 45.50 58,595 802.67 19,840 271.78 73 8 2 2 1  
虎姫 142.60 36,118 926.10 10,174 260.87 39 4 1
木之本 351.38 28,493 749.82 8,342 219.53 38 5
今津 511.36 55,488 828.18 18,317 273.39 67 7 2 2 1
堅田 162.59 70,007 933.43 23,648 315.31 75 8 3 3 1
3,347.11 1,353,893 1,011.88 460,199 343.95 1,338 114 46 46 6 5
注)人口・世帯数は平成16年3月31日現在の住民基本台帳による。
 
(2)条例・指針・計画策定
ア 「なくそう犯罪」滋賀安全なまちづくり条例(平成15年4月1日)
 犯罪に遭いにくい安全なまちづくりに関し、基本理念を定め、県、県民および滞在者、事業者の責務を明らかにするとともに、この取組を推進するための基本的な事項の整理を行っている。
 
イ 「なくそう犯罪」滋賀安全なまちづくり基本方針
 条例第6条に基づき制定され、5つの基本的方向として以下が掲げられている。
≪5つの基本的方向≫
○犯罪を防止する支援システムをつくります
○自分の安全は自分で守るという防犯意識を高めます
○規範意識を高め、犯罪抑止の地域づくりを進めます。
○犯罪被害者や弱者の支援に努めます
○犯罪に遭わないまちづくりをハード・ソフトの両面から進めます
 
ウ 学校等、道路等、共同住宅の防犯指針
 条例に基づき、現在以下の5つの各種防犯指針が策定されている。
○公立の学校における侵入者による犯罪を防止するための指針
○私立の学校における侵入者による犯罪を防止するための指針
○児童福祉施設における児童等の安全の確保に関する指針
○道路、公園、駐車場および駐輪場に関する防犯上の指針
○共同住宅に関する防犯上の指針
 
エ 防犯カメラの運用に関する指針(平成16年12月14日)
 
(3)各種事業(モデル事業・補助事業)
ア 自主活動団体への補助(平成15年度〜)
 市町村が自主活動団体の立ち上げに対して補助を行う経費について、補助金を交付している。
 
補助対象事業 小学校区またはおおむね小学校区と同等と認められる区域において安全なまちづくりに資する活動に取組もうとする自主活動団体が、次に掲げる活動のうち5以上の活動について具体的な活動計画を策定した事業について市町村が補助を行う事業
(1)地域におけるパトロール活動(第8号および第9号の活動を除く。)
(2)防犯診断活動
(3)防犯灯の点検活動
(4)防犯器具のあっせん又は配布
(5)玄関灯点灯運動
(6)防犯教室・講座の開催
(7)「子ども110番の家」マップの作成
(8)通学路における安全指導
(9)通学路・公園等の安全点検
(10)広報・啓発活動
(11)防犯機器の設置
(12)その他安全なまちづくりに関する自主的な防犯活動
補助金額 市町村が自主活動団体へ補助する金額の2分の1以内(上限500千円)
補助対象期間 単年度
 
イ 「なくそう犯罪」安全なまちづくり事業費補助金(平成16年度)
 犯罪抑止に取組む職域・NPO等の団体に対して補助金を交付している。
 
補助対象事業 パトロールや情報の収集・伝達の機能を持ち、県域の団体が犯罪抑止を対象として取組む継続的な活動に対して、次に掲げる事項について複数の活動計画に対する立ち上げ支援事業。
(1)防犯パトロール活動
(2)防犯教室の開催
(3)犯罪情報の伝達・収集活動
(4)その他安全なまちづくりに関する自主的な活動で知事が必要と認めるもの
補助金額 1団体あたり300千円を限度とする。
補助対象期間 平成16年4月1日から平成17年3月31日までの1年間
 
ウ 「なくそう犯罪」防犯フォスター制度(平成16年度)
 防犯関係職務の経験者の知識やノウハウを活かし、集落・自治会等の自主防犯活動を支援するため補助金を交付している。
 
補助対象事業 防犯機能向上をめざし、複数の自治会、集落で連携し協働して防犯活動を行うために結成された団体(グループ)が「なくそう犯罪」防犯フォスターとして、次の各号に掲げる事項のうち3以上について具体的な活動計画を策定した事業
(1)防犯パトロール活動
(2)防犯環境の整備活動
(3)防犯灯の点検整備
(4)防犯教室・講座の開催
(5)学校等の安全確保活動
(6)その他安全なまちづくりに関する自主的な活動
補助金額 1団体あたり75千円を限度とする。
補助対象期間 平成16年4月1日から平成17年3月31日までの1年間
 
エ 防犯アドバイザー制度
 地域防犯活動団体、自治会、事業所単位で、安全なまちづくりのための取組を行う際、警察官OBの防犯アドバイザーが助言・指導を行う。
 
オ 「なくそう犯罪」滋賀安全なまちづくり大賞
 継続的な活動展開、先進的な活動展開を行っている個人または団体(自治会、サークル、グループ、NPO団体等)を対象として表彰を行う。
 
カ 落書き一掃事業(平成15年9月〜12月、平成16年9月〜12月)
 県、市町村、県民、事業者等の連携により県内各地の落書き消しを実施している(平成15年4市3町(22地区114ヶ所)、平成16年3市7町(25地区92ヶ所))。
 
キ 空き巣パトロール事業(平成16年6月〜12月)
 緊急雇用により地域の防犯関係機関・団体との協働に配意し、車両・徒歩を併用してパトロール活動を実施している(体制:9車27名)。
 
(1)調査の概要
ア 調査目的
 滋賀県が平成15年度に実施した自主活動団体支援事業による成果と、当該事業が地域防犯活動に与えた影響について把握し、地域防犯システムの構築に関する研究の基礎資料を得ることを目的とした。
 
イ 調査対象
 平成15年度支援対象地区となった21地区の自主活動団体および自治体(50音順)。
 
自治体名 学区、地区名 自治体名 学区、地区名
今津町 今津町東小学区 長浜市 神照地区
近江八幡市 岡山学区 南郷里防犯隊
金田学区 西浅井町 永原部会
八幡学区 能登川町 能登川駅前地区
大津市 晴嵐学区 日野町 南比都佐地区
瀬田駅前地域 米原町 米原学区
西大津駅周辺 マキノ町 マキノ学区
草津市 草津学区 野洲市 北野学区
玉川学区 栗東市 金勝学区
甲賀市 希望ヶ丘地区 竜王町 竜王西学区
湖東町 湖東南学区 -
(平成16年12月31日現在)
 
ウ 調査方法
 支援対象市町村の所管課および自主活動団体へ調査票を配布、回収。
注)記述式による回答を選択肢化し頻度の傾向を把握した。したがって、一団体から複数の回答が得られる場合もある。
 
エ 調査項目
(1)犯罪抑止面での効果(自治体による回答)
(2)自主活動推進の効果(自治体による回答)
(3)活動助成金の使途(自主活動団体による回答)
(4)支援対象団体指定によってもたらされた効果(自主活動団体による回答)
(5)活動を進めるための課題(自主活動団体による回答)
(6)今後の活動の展開方向(自主活動団体による回答)
 
オ 実施時期
 平成16年8月下旬〜10月上旬
 
(2)調査結果
ア 活動助成金の使途(自主活動団体による回答)
 
●ジャンパー、腕章等「パトロール用品」、「のぼり旗」、「啓発看板」といった、防犯意識啓発と活動の宣伝を兼ねる備品の購入
●「ビラ・ティッシュの配付」や「110番の家マップの配付」、「広報誌の発行」などの啓発活動資金
●「防犯カメラ」や「パトロール車」など、比較的高価な備品の購入
 
 自主活動団体が活動助成金をどのように使用しているかについては、『隊服一式、腕章、赤色棒、啓発看板、のぼり旗等の購入』(長浜市南郷里防犯隊)など、メンバーの装備や啓発看板、のぼり旗といった啓発・宣伝効果のある備品の購入が最も多い(合わせて29件)。
 また、「ひったくり防止ネットなどの配布グッズ購入」、「啓発ビラ発行・配付ティッシュ購入」(各3件)、「子ども110番の家マップの作成・配付」、「広報誌発行」(各2件)といった啓発活動資金としての活用のほか、「センサーライト設置」、「防犯カメラ設置」(各5件)、「パトロール車の購入・整備」(2件)、「通学路緊急通報システム設置」(1件)など、比較的高価な備品の購入を挙げる団体もあった。
 
図表1-47 活動助成金の使途(自主活動団体による回答)
 
イ 支援事業が自主活動団体や地域に与えた効果(自主活動団体、自治体による回答)
≪自主活動団体の評価≫
 
●支援の効果は「メンバーの意識や活動の質の向上」、「地域における団体の認知度の向上」、「まちの防犯環境の改善」という面で表れた
●「住民の防犯意識啓発」、「地域や行政との連携」、「犯罪件数の減少」については、支援によって活動の効果が拡充された
 
 自主活動団体が支援による効果を感じている点としては、「住民の防犯意識の高まり」(13件)が最も多く、以下、「活動内容・活動量の充実」(11件)、「地域での認知・評価」(10件)、「活動メンバーの意識の向上」(9件)となっている。特に活動の充実については、『落書き消し活動だけでなく、通学路の安全確保についても自主的に動こうと計画する団体も出てきた』、『助成金が下りることで活動の質も向上する』(マキノ町マキノ学区)など、自主活動団体にとって、支援は活動活性化の契機となっていることがうかがえる。
 また、『防犯灯の球切れ等について関心が高まった』(甲賀市希望ヶ丘地区)、『家を取り囲んでいた生け垣などは低くし、周りからも犯罪を発見しやすい環境づくりが取組まれた』(米原町米原学区)など、防犯環境の改善が(監視性の確保)なされたとする記述もみられた(7件)。
 地域での認知・評価が上がったとする部分については、『生徒の登下校時のあいさつが良くできるようになった』、『自警団事務所に住民の相談が増えてきた』(以上甲賀市希望ヶ丘地区)などの記述が見られた。
 しかし一方で、自治体の回答でもあったように、団体からの危険箇所等の指摘に対し、行政が迅速な対策を取れないことへの不満もみられた(竜王町美松台)。
 
図表1-48 支援が自主活動団体や地域に与えた効果(自主活動団体による回答)







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