中国は近く、台湾海峡に面する福建省東山島で、十万人規模の陸海空三軍合同演習を開始する。陳水扁政権に軍事的圧力を加え、「台湾独立」を阻止、「祖国統一」を強要する狙いだ。このような政治目的の軍事威嚇に対し、重大な懸念を抱かざるを得ない。
今回の演習計画は、早くから観測されていたが、今月初めの中国公式紙「中国青年報」は、中国外務省当局が「七月開始」を確認したと伝えた。中国軍の東山島演習は一九九六年以来八回目で、過去最大の二〇〇一年の演習を上回る規模になるとみられる。
台湾海峡での演習は、九六年春の台湾総統選前、李登輝氏当選を妨害する目的で開始して以来、一貫して「独立」派への威嚇が目的だった。中国青年報によると、今年は、従来の「独立の予防」、つまり威嚇宣伝ではなく、台湾が独立を宣言、戦争に突入した場合の作戦能力を高める狙いという。
同紙によると、演習は(1)情報戦(2)台湾上陸作戦(3)台湾支援軍への反撃−の三段階から成り、(3)では米太平洋艦隊の介入を想定、これを戦闘機、ミサイル、原潜など陸海空の最新鋭兵器で撃滅する訓練を行う。その重点は制空権と制海権の確保にあるという。
台湾上陸を想定した実戦演習は、中国の期待に反し再選された陳水扁総統が、〇八年までに新憲法を制定、独立の是非を含め台湾の将来を住民投票で決めると「公約」していることへの中国側の危機感を反映している。中国は「独立すれば戦争」と公言、それを演習で示そうとしているわけだ。
仮に台湾が独立し中国が戦争を仕掛けた場合、中国は国際社会の猛反発を受け、そのダメージは経済面だけにとどまらないことは中国自身が熟知している。従って今回の演習も、威嚇のレベルアップとみてよい。
軍事威嚇によって台湾住民の意思を変える試みは、九六年以来、ことごとく失敗してきた。にもかかわらず、なお威嚇を続けるのは、江沢民中央軍事委員会主席率いる軍部の発言力と予算拡大のためとの見方もある。
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