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1996/11/29 産経新聞朝刊
【主張】台湾の孤立と日本の役割
 
 南アフリカが台湾と断交し、一九九八年一月一日に中国と国交を樹立することを明らかにした。台湾との外交関係を維持しながら中国との国交を図る“二重承認”を模索してきた南アフリカだが、中国の堅いガードに阻まれ、結局台湾との断交を選択せざるを得なかったわけだ。
 一九七一年に国連を離れ、国際社会で孤立状態にあった台湾にとって、南アは残る最大の承認国であっただけに、予測されていた事態とはいえ、衝撃は大きいだろう。引き続き、世界第三位の外貨準備を背景として経済力と文化交流を軸に友好関係を維持発展させる「実務外交」を追求するしか現実的な政策はない。南アが中国との国交樹立に踏み切ったとはいえ、「中華人民共和国」と「中華民国(台湾)」という政治実体に分裂している実態に変化が出たわけではない。自己の生存を図るうえでも、台湾は国際社会における空間を拡大しなければならず、国際社会もその点を理解する必要がある。
 台湾の進める「実務外交」やバカンス旅行を利用した首脳陣の「休暇外交」に対して、中国はさまざまな圧力をかけてきた。巨大市場と世界第二位の外貨準備に基づく経済援助を武器とする外交攻勢の裏には、台湾を国際的に干ぼしにし、吸収しようとの戦略がある。九〇年代に入ると、中東の大国・サウジアラビア(一九九〇年)、アジアの有力国・韓国(一九九二年)に次いで今度はアフリカの大国・南アフリカが台湾から離れていった。
 残る台湾承認国は二十九カ国(国連加盟国は現在百八十五)だが、いずれもアフリカや中南米など影響力の小さい小国であり、国連への加盟などで大きな支持を期待するのは現状では不可能に近い。
 李登輝総統の国際戦略には依然苦しいものがあるが、その一方では中華社会で稀有(けう)なほどの民主化を成し遂げ、高度な経済社会を築き上げた実績への高い国際的評価があるのも事実だ。総統選挙妨害のために中国のミサイル攻撃にさらされたことへの同情も記憶に新しい。台湾は苦難を乗り越えてきた歴史を糧に、この苦境を克服すると信じたい。
 
 
 
 
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