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1.3 熱交換器モジュールの設計・製作
 ガスタービンの再生サイクルでは、熱交換器で排気ガスの排熱を回収し、圧縮機で圧縮された燃焼用空気を予熱することで熱効率を上昇させることができる。しかし、A重油等の低質油を燃料に使用した場合、排気ガス中に含まれる煤が熱交換器の伝熱面に堆積することにより、熱交換性能が悪化することが予想され、これが再生サイクルを運用する際の一つの問題となる。よって、SMGT2用の熱交換器としては、煤が堆積しにくく、なおかつ煤洗浄等のメンテナンス性に優れている必要がある。SMGT2ではこれらの特徴を備えた2種類の熱交換器を開発した。その一つは細管型の熱交換器で、もう一つはSMGTで実績のあるプレートフィン型でフィンを大きくし、フィンを真っ直ぐ配置して洗浄性を高めたタイプである。
 また、SMGTよりも温度効率を下げて75%とし、実用性を向上させた。
 平成14年度に細管型熱交換器とプレートフィン型熱交換器を設計、製作した。平成15年度は、最初の試験運転で、細管型熱交換器を使って作動確認および性能確認を実施し、引き続き第1回耐久試験を実施した。第2回耐久試験は、プレートフィン型熱交換器を使って作動確認および性能確認を実施した後開始した。
 平成16年度は、引き続き第2回耐久試験を実施し、途中分解点検を実施した後、第3回耐久試験を実施した。平成16年度の耐久試験は、運転実績を積むためプレートフィン型熱交換器を使用して試験を継続した。細管型熱交換器については、改良設計を検討し、対策案を決定した。
 
1.3.1 細管型熱交換器
(1)設計・製作
1)構造検討
 細管型熱交換器の構造図を図1.3-1に示す。上下2段の分割構造とし、上下のモジュールは各ヘッダー間を2本の折り返し配管で接続する。上下各モジュールには、伝熱管を格子状に配列し、端部を管板に拡管で固定する。
 ガスジェネレータから送られてきた空気は、上段の入口ヘッダーから伝熱管を通り、折り返し配管を通過した後、下段の伝熱管及びステー管内を通って出口ヘッダーに到達する。一方、排ガスは、ケーシング内部を下から上に向かって流れる直交流タイプの熱交換器である。
 
2)熱伝達性能確認試験
 細管での熱伝達特性を確認するため、1/5サイズのモデル試験を実施した。その結果、実機における目標温度効率75%に対し、十分に余裕があることがわかった。
 
3)全体構造強度検討
 構造強度検討のため、熱交換器全体モデルでのFEM解析を実施し、定常時及び起動時の熱応力に対する強度評価を実施した。温度分布と応力分布を図1.3-2、図1.3-3に示す。強度解析の結果、問題となる箇所は無かった。
 
4)拡管部強度検討
 細管(伝熱管)の管板部への固定には拡管を適用した。
 拡管部の強度を確認するため、拡管部の部分モデルでのFEM解析を実施し、強度的に十分であることを確認した。
 
5)熱交換器製作
 以上の検討結果をもとに熱交換器本体を製作した。図1.3-4が熱交換器組立状態、図1.3-5が熱交換器に保温材を施工した完成状態を示す。
(2)運転試験での評価
1)性能試験
 細管型熱交換器を用いて性能試験を実施した。定格点での性能を表1.3-1に示す。表に示すように温度効率および各圧損率とも設計目標値を達成することができた。
 
2)耐久試験
 第1回目の耐久試験後に、熱交換器を搬出し、工場にて分解後、外観検査および漏れ試験を実施した。
(1)外観検査
 細管型熱交換器を上下段に分離した写真を図1.3-6、図1.3-7に示す。この状態でケーシングの外観検査を実施後、空気ヘッダーを取り外して内部の管板面等の検査を実施した。
 細管は、その両端部を管板部に拡管によって固定してあるが、この拡管部の抜け等の発生は見られなかった。細管の外表面への煤の堆積もほとんど無かった。また、ケーシングおよびヘッダー等の溶接部での割れ発生も無く、その他の部品にも異状は見られなかった。
 
(2)漏れ試験
 細管型熱交換器については空気側経路の漏れ試験と、ガス側経路の漏れ試験の二つを実施した。空気側漏れ試験の概要図を図1.3-8に示す。空気側の各取合いフランジ部および計測用座を塞いだ状態で、熱交内部にエアを投入し、内圧を上昇させ空気漏れの有無を調査した。また、ガス側漏れ試験の概要図を図1.3-9に示す。ガス出入口フランジに蓋をし、エアにて内圧を上昇させ空気漏れの有無を調査した。
 空気側漏れ試験では熱交換器下段側の空気出口側管板部のフランジ面の四隅から、空気漏れが認められた。空気側の上記以外の場所およびガス側漏れ試験では漏れが無かった。
 
(3)空気漏れの発生状況及び原因
 漏れ発生原因の検討結果を図1.3-10に示す。ガスケット接触部の管板フランジ面には全周にフレッティングが発生している。また、管板部に使用しているメタルジャケットガスケット表面にはしわが発生している。
 以上のことより、漏れ発生原因として、下記の二つの原因が考えられる。
 
a)ガスケットの固定位置管理が不十分であるため、発停時フランジが伸び縮みする際に、ガスケットが移動(変形)する。
b)ガスケットにメタルジャケットタイプを使用しているため、フランジ面とのシール部にフレッティングが発生しやすい。
 なお、隅部では、これら二つの原因に加え、面圧も低いため、ガスケットでのシールが不十分となり空気漏れが発生したものと考えられる。
 
(4)対策検討
 (3)の推定原因a)、b)の対策として以下の設計を実施した。
 a)についての対策としては、フランジ面に溝部を設けることによりガスケットの移動(変形)を防止する。
 b)については、ガスケット材質をメタルジャケットからシートタイプに変更し、なじみ性を向上させフレッティングの発生を防止する。
 
1.3.2 プレートフィン型熱交換器
(1)設計・製作
1)構造検討
 プレートフィン型熱交換器の構造図を図1.3-11に示す。熱交換器のコア部は左右の2つのモジュールに分割されており、空気入口から入った空気は左右のコアモジュールに分かれて流入し、熱交換を行ってからそれぞれのコア出口から出てくる。一方、排ガスも、熱交換器ケーシング入口部で左右のコアモジュールに分かれて流入して、熱交換器コア出口で 再び合流する。当熱交換器のタイプは対交流型である。
 ガス側のフィンには、煤が堆積しにくく、かつ、煤洗浄等のメンテナンス性を考慮して、プレーン型を採用した。
2)全体構造強度検討
 構造強度検討のため、熱交換器全体モデルでのFEM解析を実施し、定常時及び起動時の熱応力に対する強度評価を実施した。温度分布の一例を図1.3-12に、応力分布の一例を図1.3-13に示す。強度解析の結果、問題となる箇所は無かった。
 
3)熱交換器製作
 以上の検討結果をもとに熱交換器本体を製作した。
 
(2)運転試験での評価
1)性能試験
 平成14年度に製作したプレートフィン型熱交換器本体を図1.3-14に、また、試験設備に設置した写真を図1.3-15に示す。
 第1回耐久試験の後、細管型熱交換器と入れ替えて設置し、作動確認試験を行い、特に問題が無かったため、性能試験を実施した。負荷試験時の定格点性能を表1.3-2に示す。表に示すように温度効率および各圧損率とも設計目標値を達成することができた。作動確認試験および性能試験後のガス入口側写真を図1.3-16示す。煤の堆積は見られなかった。
 
2)耐久試験
 プレートフィン型熱交換器は、平成15年度末から平成16年度にかけて実施した第2回耐久試験、第3回耐久試験、さらにその他の温度計測試験等に使用して信頼性を確認した。各耐久試験での運転時間及び起動回数を表1.3-3に示す。
 第2回の耐久試験後に以下の二つの検査を実施した。
(1)外観検査
 第2回、第3回の耐久試験終了後ともに排気通路内のダクト表面への煤の堆積はほとんど無かった。また、ケーシングおよびヘッダー等の溶接部での割れ発生も無く、その他の部品にも異状は見られなかった。
 第3回の耐久試験終了後の熱交換器外観を図1.3-17に示す。また、空気側ヘッダー内部及び排気側通路の写真を図1.3-18及び図1.3-19に示す。
(2)漏れ検査
 各耐久試験後に、熱交換器コアからの空気漏れ(空気側通路からガス側通路への空気の内部漏れ)を確認するため、空気側の漏れ検査を実施した。検査要領図を図1.3-20に示す。空気出入口配管を取り外し、取合いフランジに蓋をした状態で、出口フランジに設置した供給口よりエアを供給し、内圧を上昇させ空気漏れの有無を調査した。漏れ箇所の確認には、石鹸水をコア及びダクト表面に噴霧し、漏れの確認を実施した。
【第2回耐久試験後の漏れ検査結果】
 排気ガス入口側のコア端部の一部排気側通路より、微量の漏れが確認された。しかし、漏れ量としては、計測できない程度であったため補修等を実施せずそのまま第3回の耐久試験に供試した。
【第3回耐久試験後の漏れ検査結果】
 前回の漏れ検査結果とほぼ同一位置にて漏れが確認された。漏れ量は増加したが、性能への影響は小さく、使用上問題無いと考えられる。
 なお、ガス側(ガス側通路から外部への外部漏れ)の漏れ検査については、実施していないが、外観検査にて排ガスダクトに割れ等の異常が無いことより、ガス側の漏れは無いと考えられる。
(3)空気漏れの発生原因
 漏れ発生箇所が、熱交換器コアの減速機側端部であったが、当該部は起動の際、最もガス温度の上昇が大きい箇所である。ガスタービン側の排ガス温度に比べ、減速機側端部の温度上昇が大きく、熱交コア自体の温度も差があるものと考えられる。よって、漏れの発生原因としては、起動時等の熱衝撃により熱交換器コアのろう付け部が割れ、そこから空気がガス側通路に漏れるものと考えられる。
(4)空気漏れ対策
 耐久試験後の漏れ量は少なく実用上は問題ない。しかし実使用条件等により、漏れ量が増加することも考えられるため、以下の対策を検討した。
【空気漏れの対策案】
(a)ディフューザ出口部にバッフル等を設置し、熱交換器前のガス流れの均一化を図る。
(b)起動中のEGT制御により、熱衝撃を緩やかにする。







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