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地震防災対策基準
第1章 総則
(目的)
第1条 この基準は、運行管理規定第3条に基づき、地震が発生した場合、津波警報等が発せられた場合又は警戒宣言が発せられた場合に実施する措置並びに地震に係る防災訓練並びに地震防災上必要な教育及び広報に関する事項を定め、地震防災対策を迅速かつ的確に実施し、人命の安全確保と被害の軽減を図ることを目的とする。
 
(地震防災対策実施上の基本方針)
第2条 地震防災対策は、次に掲げる基本方針のもとに、原則として次章以下に定めるところにより実施するものとし、これによることが不適当な不測の事態が生じた場合には、事態に即応した最善の措置をとるものとする。
(1)人命の安全確保を最優先とする。
(2)関係機関と相互に密接な連携をとりつつ全力をあげて対処する。
 
(適用)
第3条 この基準は、当法人が営む全ての航路に適用する。
 
(地震防災対策組織の設置)
第4条 地震が発生した場合(小さな揺れで、運航等に支障がないと判断できる場合を除く。)若しくは津波警報等が発せられた場合又は警戒宣言が発せられた場合(以下「地震発生時等の場合」という。)には、地震防災対策組織(以下「対策組織」という。)を設置するものとし、その組織及び編成を別図1のとおりとする。
 
(職務及び権限の委任)
第5条 対策組織の要員の組織は、別図2のとおりとする。
 
(情報の伝達経路)
第6条 地震等に関連する情報の伝達経路は、別図3のとおりとする。
2 (副)運航管理者(本社、支店の防災対策部長)と船長との連絡は、携帯電話により行う。
 
(旅客に対する情報の伝達)
第7条 本社及び支店の旅客対策部長並びに船長は、地震等に関連する情報を乗船待合所の旅客及び船内の旅客に対し、速やかに伝達し周知する。
2 地震等に関連する情報の伝達にあたっては、次の事項に留意し、旅客の混乱を招かないよう配慮する。
(1)ラジオ又はテレビ等により情報を確認し正確を期するとともに、旅客が直接ラジオ又はテレビ等を視聴できるよう考慮する。
(2)船舶の運航方針等をあわせ伝達する。
(3)市町村長等から居住者等に対する避難の指示又は勧告が出ている場合には、避難場所、避難経路その他避難の要領を教示する。
(4)非常の場合の避難要領、救命胴衣の格納及び着用方法等を周知・徹底する。
 
(平常時の点検及び整備)
第8条 運航管理者及び船長は、あらかじめ海図をはじめ港湾施設の状況、漁具の設置状況等の資料を収集し、船内その他の必要な場所に備え付けておくものとする。
2 船長は、発航前に食料、飲料水、燃料等を点検し、これらが運航を中止した場合、数日間の海上への避難又は避難予定港への航行に十分であることを確認し、必要に応じ補給しておくものとする。
3 運航管理者及び船長は、情報の収集及び確認のため船内その他の必要な場所にラジオを備え付け、常に使用可能な状態に整備しておくものとする。
 
(津波警報発令時の場合の点検及び整備)
第9条 船長は、津波警報等が発せられたことを知った場合には、情報を把握し、津波到達まで時間的余裕があり、かつ、避難に要する時間を十分確保できる場合には、船体、機関、救命・消防設備等の点検を行い、特に船内移動物の固縛及び危険物の保管に万全を期するものとする。
2 船長は、警戒宣言が発せられたことを知った場合においても、上記の点検等に係る措置をとるものとする。
 
(運航中止)
第10条 地震発生時の場合は、原則として運航を中止する。
 ただし、地震等の影響を受けるおそれのない安全な港へ向けて航行中若しくは直ちに安全な港へ向けて出港しようとしている場合にはこの限りではない。
 
(運航中止後の船舶の避難及び保安)
第11条 第10条の規定に従い運航を中止した時点において、着桟中の場合は安全を確認し、旅客を下船させたうえ、また、航行中の場合は直ちに、次のいずれかにより避難及び保安措置を講ずる。
(1)他船の交通の妨げとならず、かつ、津波による被害のおそれのない広い海域へ避難し、航走、漂白又は錨泊のうえ所要の保安措置を講ずる。
(2)全ての事項が確認できる港へ避難する。この場合にあっては、状況変化に対応しいつでも移動、避難できるよう、航海要員を配置し、機関用意をしておくものとする。
イ 津波警報等が発令されていない、又は地震予知情報により津波のおそれがないとされていること。
ロ 海上保安庁による交通規制(入港の制限又は避難の勧告)がなされていないこと。
ハ 港湾管理者による港湾施設の使用制限がなされていないこと。
ニ 市町村長等による居住者に対する避難の指示又は勧告がなされていないこと。
 
(運航中止後の旅客の取扱い)
第12条 運航を中止し、旅客を下船させた場合又は乗船させない場合であって、当該港について市町村長等の居住者等に対する避難の指示又は勧告がなされている等旅客の非難が必要とされるときの避難要領については、別紙に定めるところによる。
 
(避難先等の通報)
第13条 船長は、第11条により避難した場合には、速やかに防災対策部長に対し、避難措置、避難後の状況等を通報するとともに、以後の連絡を密にするものとする。
 また、防災対策部長は、これを運輸局等その他の関係機関へ別表「防災対策実施状況通報機関一覧表」により通報するものとする。
 
(避難時の留意事項)
第14条 第11条による避難を行う場合には、次の事項に留意し、万全の保安措置を講ずるものとする。
(1)他の避難船等も多く、混雑が予想されるので衝突等を避けるため、操船には慎重を期すること。
(2)狭い水道や港口付近を航行中津波が来襲すると圧流による偏位や蛇行の変更のため乗揚、衝突等の危険も考えられるので、見張、船位確認の徹底、機関用意、錨用意等十分な保安措置を講ずること。
(3)錨泊中津波が来襲すると振回りや走錨による他船との接触や乗揚等の危険も考えられるので錨鎖の伸長、第二錨の使用、機関用意等の措置をとること。
 
(運航の再開)
第15条 第10条により運航を中止した船舶は、津波警報等が発せられている場合にはこれが解除され、かつ、使用港湾につき安全が確認される等運航再開に支障がないと認められた場合、又は警戒解除宣言が発せられた場合には運航を再開する。
 
(地震発生後の旅客の下船)
第16条 第11条により旅客を乗船させたまま海上へ避難した場合であって、地震が発生し、津波が去った後、第15条による確認ができず、短時間で運航を再開する見込みがない場合には、港湾施設の損傷状況、水深等を慎重に確認し、安全な港へ入港して旅客を下船させる等の措置を講ずるものとする。
 この場合において、津波は、必ずしも第1波が最大振幅をもって来襲するとは限らないということに留意するものとする。
 
(発災後の措置)
第17条 旅客、乗組員、船舶等に被害が生じたときは、事故処理基準の定めるところにより措置するものとする。
 
(地震防災に関する教育及び訓練)
第18条 運航管理者は、当法人単独に又は関係機関若しくは関係事業者と共同して地震防災に関する教育及び訓練を計画的に実施するものとする。
2 地震防災に関する教育については、特に次に掲げる事項に重点をおいて実施するものとする。
(1)地震に伴い発生すると予想される地震動及び津波に関する知識
(2)地震及び津波に関する一般的な知識
(3)地震が発生した場合に具体的にとるべき行動に関する知識
(4)職員が果たすべき役割
(5)地震防災対策として現在講じられている対策に関する知識
(6)今後地震対策として取り組む必要がある課題
3 地震防災に関する訓練の計画は、特に次の事項に重点をおいて実施するものとする。
(1)地震等に関する情報の収集、伝達
(2)従業員、旅客等の避難に関する事項
(3)旅客に対する広報
(4)資機材等の点検
 
(地震防災に関する広報)
第19条 事業者は、地震発生時等の場合の運航及び避難に関する計画、下船した旅客の非難場所、避難経路等を示す図面等をあらかじめ乗船待合所に掲示しておくとともに、これらを記載したパンフレットを船内その他の場所に備え付けておくものとする。







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