〔平成16年度 日本財団助成事業〕
自閉症の人たちのための環境整備推進事業の実施について
〜広汎性発達障害の行動評価チェックリスト(PARS)の開発と実用化に向けての展開〜
これまで長い間「自閉症」(ここでは「自閉症」という言葉を、自閉性障害・非定型自閉症を含む特定不能の広汎性発達障害・アスペルガー障害(または症候群)を包括的に指し示すものとして使っています)は、知的障害の枠内での支援対象でしかありませんでした。しかし最近、いわゆる知的障害を伴わない自閉症の人たち(高機能広汎性発達障害やアスペルガー障害)の存在とその生活の困難さが明らかとなってきている中で、これまで知的障害という枠の中で対応されていた知的障害を伴う自閉症の人たちについても自閉症ゆえに抱える困難さへの理解と対応が必要であり、その主障害が知的障害ではなく広汎性発達障害である一群の中に位置づけられるものとして広く理解されるようになりました。広汎性発達障害を主障害とする一群が公的に認められるに至ったその大きな一歩が平成16年12月の「発達障害者支援法」の成立であったと思います。これにより「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」という文言がはじめて法律に明記され、知的障害の有無に関わらず主障害である「広汎性発達障害」として支援の対象であることが規定されています。
しかしながら、行政的に活用するための広汎性発達障害としての困難さを把握するための有用性のある尺度は、現在の日本においては未だ確定を見ておりません。
このため日本自閉症協会では、未開発であるこの分野において、行政的にも活用いただけるように、簡便な方法で一般の方々にも広汎性発達障害のことを把握しやすくまた実際の福祉サービスの給付判定時に使用が出来ることを目的に、評価尺度の開発と実用化の全国展開への試みに努めて参りました。これにより評価尺度「PARS (PDD ASJ Rating Scale)」が開発され、これをもとに今年度は、全国5箇所において実用化に向けてのPARS紹介&啓発セミナーを開催したところです。
本報告書は、評価尺度であるPARSのご紹介とともに、全国5箇所で開催いたしましたPARA紹介&啓発セミナー(自閉症やアスペルガー症候群への理解推進と困難さの把握(気づき)についてのスペシャリスト向け講習会)の内容を中心にまとめたものです。また講習会開催にあたり参加されたスペシャリストの皆さまよりご協力を頂きました基礎調査資料についても併せてご紹介をさせて頂きました。ご参考になれば幸いです。
広汎性発達障害のある人たちの早期発見・早期の発達支援をスタートとし、生涯にわたり一人一人のニーズにあった具体的な教育や福祉などのサービスの実現に向けて今回開発された「PARS」が役立つことを願っています。
* PARSは更に全体としてブラッシュアップを進め、使いやすい評価尺度へと整えていきます。そのため現段階でのPARSの無断使用はお控えいただいております。研究協力としての利用は可能ですが一定の条件がありますので、ご希望の機関は、事務局までご一報ください。
最後になりましたが、このような実践的な研究にご支援くださいました日本財団様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
2005年3月31日
社団法人日本自閉症協会
実施報告(日程順)
(1)名古屋会場 平成16年12月13日 中京大学名古屋キャンパス 参加者 76名
(2)旭川会場 平成17年1月23日 旭川障害者福祉センターおぴった 参加者 152名
(3)横浜会場 平成17年1月27日 仲町台センター 参加者 16名
(4)福岡会場 平成17年1月29日 福岡市心身障害福祉センター 参加者 38名
(5)大阪会場 平成17年2月5日 大阪府立青少年会館 参加者 52名
旭川会場
横浜会場
名古屋会場
大阪会場
福岡会場
|