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はしがき
 本報告書は、(財)九州運輸振興センターが日本財団の平成16年度助成事業として実施した「奄美群島における静脈物流ネットワークのあり方に関する調査研究」の成果を報告書としてとりまとめたものであります。
 近年、循環型社会の形成に向け、廃家電、ペットボトルなどの様々なリサイクルシステムが構築されようとしております。これらのリサイクルにおいては、高度の技術やノウハウが必要であり、経済規模が小さく、業者が育ちにくい離島では、島内ではリサイクルができず、島外へ輸送してリサイクルすることとなります。このため、輸送コストが余分にかかることから、離島住民の負担が大きくなり、不法投棄、野積みの増加が懸念されております。
 こういう状況の下、使用済自動車については、「使用済自動車の再資源化等に関する法律」(通称「自動車リサイクル法」、平成17年1月1日施行)が施行され、「離島対策支援事業」(海上輸送費への支援)が実施されることになっています。奄美群島などの離島では、この使用済自動車への適切な対応が急務となっています。
 本調査は、こうした背景を踏まえ、鹿児島県の奄美群島を対象に、使用済自動車をはじめとするリサイクル資源について、効率的かつ円滑な静脈物流ネットワークのあり方を検討、提案することにより、関係自治体及び関係事業者等の具体的な取り組み方策を明確化し、奄美群島における廃棄物等の処理、輸送問題の解決に寄与することを目的に実施したものであります。
 調査の方法は、関係者による調査委員会を設置して、奄美群島に関わる船社、港湾関連企業、産業廃棄物処理業者、産業廃棄物収集運搬業者、行政等関係者へのヒアリング、アンケート調査等により、分析、検討を行い、報告書にとりまとめました。
 この報告書が関係者の方々にいささかなりともご参考になれば幸いに存じます。
 おわりになりましたが、本調査研究をとりまとめるにあたって終始ご指導、ご協力を頂きました九州大学 外川健一助教授はじめ委員各位、関係官公庁並びに調査にご協力頂きました関係の方々に、改めて御礼申し上げます。
 
平成17年3月
財団法人 九州運輸振興センター
会長 田中浩二
 
1. 調査の背景と目的
 奄美大島を中心とする奄美群島では、本土から約380〜600km離れた立地のため、廃棄物等の処理、輸送に関して様々な問題を抱えている。例えば、使用済自動車や廃家電等のリサイクル資源に関して「公共用地や私有地への放置、退蔵が見られる」、島外へ輸送するにしても「収集運搬料金が高額で住民負担が大きい」。発泡スチロールやFRP廃船等はリサイクルルートが確立していないため、「公共用地や私有地への放置・退蔵が見られる」という状況にある。家電リサイクルの場合、指定引取場所のない離島の住民は、本土と比べて高い輸送コスト負担を余儀なくされている。
 こういう状況の下、使用済自動車の場合は、平成17年1月1日に「使用済自動車の再資源化等に関する法律」(通称「自動車リサイクル法」)が施行され、使用済自動車の引き取り業者への引渡及びリサイクルが義務づけられるとともに、離島からの使用済自動車の輸送(海上輸送)について、使用済自動車の放置、退蔵を回避するために、市町村が行う輸送対策への支援措置が予定されている。
 この支援措置は、平成17年度から実施予定であり、様々なルートで本土への輸送が必要な奄美群島では、「自動車リサイクル法」への対応策が急務となっている。
 こうした中、奄美大島の名瀬港の佐大熊地区では、リサイクル資源の輸送に関する状況を改善するために岸壁、ストックヤード等の整備が進められている。同地区では平成17年度より使用済自動車、金属スクラップ等の取扱いが予定されており、新たな港湾施設を活用した効率的なリサイクル資源の輸送が期待されているところである。
 奄美群島の各市町村では、廃棄物等の処理、輸送について取り組んできたが、様々な廃棄物等のリサイクルが義務づけられる下で、個別的な対応には限界があり、関係する市町村が連携した、より効率的な処理、輸送のあり方が必要とされている。
 以上のような状況から、奄美群島では、使用済自動車を含む廃棄物等を対象とし、効率的かつ環境に配慮した奄美群島全体としての静脈物流ネットワークのあり方が求められている。
 本調査は、奄美群島及び本土間における効率的かつ円滑な静脈物流ネットワークのあり方を検討、提案することにより、関係自治体及び関係事業者等の具体的な取り組み方策を明確化し、奄美群島における廃棄物等の処理、輸送問題の解決に寄与することを目的とする。
 
2. 調査の対象地域
 奄美群島全体(奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島)
 
3. 調査の対象品目
 本調査は、以下の廃棄物等を対象とし、問題となっている廃棄物等を抽出し、検討する。特に使用済自動車については、平成17年から「自動車リサイクル法」が施行されることから重点的な対象品目とする。
 
個別法に基づく廃棄物 使用済自動車、食品廃棄物、建設廃材、廃家電、容器包装(ペットボトル等)
一般廃棄物 燃えるゴミ、不燃物、粗大ゴミ 古紙 等
産業廃棄物 農業用ビニール、発泡スチロール、漁網、FRP船 焼酎かす(廃液) 廃タイヤ 廃パソコン 等
その他 金属スクラップ 等
 
4. 調査内容
(1)奄美群島における廃棄物等の処理、輸送の現状の整理
 一般廃棄物を扱う自治体・衛生組合、産業廃棄物を排出する事業所(農、漁協を含む)、廃棄物の収集運搬業者へのヒアリング等により、奄美群島における生活、産業等の廃棄物の処理、輸送の現状を各離島、品目ごとに把握、整理する。
 特に、「自動車リサイクル法」への対応が急務となっている使用済自動車は重点的な調査対象とする。
<調査項目>
(1)処理(中間処理、最終処分を含む)
(2)輸送(保管を含む)
(3)島内放置・退蔵等の問題点の整理
 
(2)名瀬市における使用済自動車の輸送対策の整理
 平成17年の「自動車リサイクル法」の施行と離島対策の実施に対応し、国の法律・対策の概要を整理するとともに、名瀬市における使用済自動車の島外への適正かつ円滑な輸送に向けて、これまで検討されている計画・調査等の概要を整理する。
<調査項目>
(1)「自動車リサイクル法」におけるリサイクル対策
(2)既存計画・調査等において検討されている措置・対応策の整理
(3)収集、保管、輸送の各段階において想定される問題点の整理
 
(3)関係者の意向の整理
 廃棄物等の処理、輸送に係わる事業所、関係行政機関へアンケート調査、ヒアリング調査を実施し関係者の意向を把握、整理する。
<調査対象>
(1)処理事業所(処理業者)
(2)輸送業者(海上輸送、港湾運送、トラック運送等)
(3)関係行政機関
<調査項目>
(1)廃棄物等の処理、輸送の現状
(2)問題点
(3)廃棄物等の望ましい処理、輸送のあり方 等
 
(4)先進的な取り組み事例の分析
 島内におけるリサイクル、及び島外への搬出(静脈物流)の先進的な取り組みについて把握するため、新潟県佐渡、沖縄県離島等における事例をヒアリング調査して分析する。
<調査項目>
(1)基本的な考え方
(2)島内リサイクル
(3)島外への搬出(静脈物流)
 
(5)奄美群島における静脈物流ネットワーク構築の必要性の整理
 奄美群島における廃棄物等のリサイクル、輸送上の課題を整理し、使用済自動車を含む静脈物流ネットワーク構築の必要性を明確にする。
<調査項目>
(1)リサイクル
(2)輸送
(3)静脈物流ネットワーク構築の必要性
 
(6)奄美群島における静脈物流ネットワークのあり方の検討、提案
 (1)〜(5)の整理等を踏まえて、奄美群島における静脈物流ネットワーク構築に向けた取り組み方策を検討、提案する。
(1)基本的な考え方
 奄美群島から島外への効率的かつ円滑な廃棄物等の輸送における基本的な考え方を整理する。
(2)名瀬市における使用済自動車の輸送対策の検討
 名瀬市における使用済自動車の効率的かつ円滑な島外への輸送の方策を具体的に検討する。
1)全体の仕組みの検討・整理
2)海上輸送パターンの整理
3)費用の算出
4)民間業者を取りまとめるための方策
5)国等への支援措置適用に向けた要望等の整理
6)名瀬市から関係機関への必要な申請 等
(3)奄美群島における静脈物流ネットワーク構想の検討
 奄美群島での使用済自動車を含むリサイクル資源の収集、保管、輸送を具体的に検討する。
1)対象品目・量の整理
2)海上輸送パターンの整理
3)港湾での取扱い
4)費用の算出
5)民間業者を取りまとめるための方策 等
(4)実現化に向けた取り組み方策の検討
 奄美群島における静脈物流ネットワークの実現化に向けた取り組み方策、及び関係者の役割分担を検討する。
1)実現化に向けた取り組みの検討
2)関係者の役割分担
 
5. 調査方法
(1)委員会方式
 学識経験者、関係事業者、関係自治体、国等からなる委員会方式にて実施する。
 
(2)ヒアリング調査
 奄美群島の各島の行政、民間の関係者へのヒアリング調査を実施する。
(1)各島の市町村(廃棄物対策課等)、衛生組合、県保健所:20カ所
(2)民間の処理、輸送事業者(各島市町村、鹿児島市):10カ所
 
(3)アンケート調査
 奄美群島の各島の行政、民間の関係者へのアンケート調査を実施する。
(1)各島の市町村(14市町村)
(2)民間の処理、輸送事業者(約300カ所)
 
(4)先進事例調査
 新潟県佐渡島、沖縄県の離島、東京都伊豆七島、長崎県の離島の4カ所
 
6. 調査期間
 平成16年度
 
7. 調査フロー
 







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