1997/01/29 読売新聞夕刊
[栄光を追って]公営ギャンブル初の年間賞金2億達成 競艇の植木通彦さん28
◆競艇はスポーツだ
暮れの賞金王決定戦(一着八千万円)で優勝、昨年の獲得賞金が二億千五百一万五千円となり、競馬、競輪など公営ギャンブルスポーツを通じて、初の二億円を達成した。
だが、競艇のスポーツとしての認知度は、競馬、競輪に比べてずっと低い。それが植木にはたまらなく悔しい。「自分たちのやっていることは、スポーツそのもの。鍛錬も並大抵ではない。それをもっと広い層にアピールし、もっと多くの人に愛されるスポーツにしたい」
そのため、今年は自分にテーマを課した。「(舟券に絡む)一、二着を狙うだけのレースはしない。それでは、ギャンブルだけになる。内容の深さを追求したい」
◆感動呼ぶレース目指して 内容の深さ追求する 3着でもかまわない
実際、競艇には、たくさんの見どころが詰まっている。
良いスタート位置を目指して、ピット(ボート着き場)からの猛烈な先陣争い。その後、ボートをほとんど止めての駆け引き。スタート後は、植木の代名詞ともなっている、腰を浮かせて超高速でブイを回る「モンキーターン」などの“必殺技”――。
二分足らずの短い間に繰り広げられる静と動の流れの中で、一瞬の勝機を捕らえなければ、一流にはなれない。
さらに、エンジン、プロペラの調整を選手自身で行う競技だけに、メカの理解度も勝敗に大きく影響する。
◆くやしい低い認知度
植木の顔には、痛々しい傷痕が今も残る。デビュー間もない一九八八年、転覆して後続艇のプロペラに顔を引き裂かれて負った七十五針の傷だ。その恐怖を振り払うように三か月で復帰し、闘志で頂点まで駆け上がった。
五十歳代の選手も第一線で頑張る競艇界。十年選手の植木は、まだまだ若手だが、今年は、賞金王決定戦三連覇がかかる。
「若い選手は、全員が競艇のイメージアップを考えている。そのためには、三着でもいいから、人を感動させるレースをしたい。そのうえで、(賞金六位以内に入って決定戦に)五年連続出場出来るように頑張りたい」
トップに君臨する“若手代表”としての強い決意がうかがえた。
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