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2004/11/19 産経新聞朝刊
【主張】自民改憲原案 妥当な日本の「国柄」明記
 
 自民党憲法調査会が、来年十一月の結党五十周年に発表する憲法改正草案のたたき台をまとめた。これは党内論議を経て、来月中旬に憲法改正草案大綱となるが、政権政党が包括的な改憲原案を初めて示したことを高く評価したい。
 「加憲」を掲げる公明党、「創憲」を訴える民主党も具体的な改正案作りを急ぐべきである。戦後の日本が抱えている多くの問題は、究極の構造改革といえる憲法改正なしでは、もはや解決できない状況に立ち至っている。
 党利党略を超えて改憲を実現する共同作業が求められている。
 自民案は九条改正では「戦争放棄」を残すものの、「自衛軍」設置と集団的自衛権の行使を明記した。国際貢献のための海外での武力行使も容認する一方、「必要かつ最小限の範囲内で行わなければならない」と、「制限された自衛権」を明確にした。
 戦後日本が目をそむけてきた平和をつくる軍事力の役割を正当に評価したものだ。イラク派遣自衛隊が「軍隊」としての位置付けがないため、警察権の範囲でしか対応できない武器使用などの問題点は是正されよう。
 「制限された自衛権」は、民主党が六月にまとめた「憲法提言中間報告」で打ち出した「最大限に抑制的な武力行使」と相通じており、共通の基盤を構築しようとの努力もうかがえる。
 「基本的な考え方」では「新憲法をわが国の歴史や伝統などを踏まえた価値観(国柄)を体現するもの」と定義した。天皇については「元首」と位置付けして、国旗・国歌も明記した。
 日本の国柄は、現行憲法にはうかがえなかっただけに妥当である。憲法改正手続きの緩和も支持したい。
 ただ生煮えの部分も少なくない。
 第二章の「象徴天皇制」では「皇位は、世襲のものであって、男女を問わずに皇統に属する者がこれを継承する」と、女性天皇を容認した。
 自民党内では、女性天皇は「皇統に属する男系男子」の継承を定めた皇室典範を改定して認めるべきだとの意見が多い。憲法に明記することなのかどうか、議論をもっと深める必要がある。民主党は自民党との協議に応じない姿勢を示しているが、憲法に体現される国家像を創り出す好機ではないのだろうか。
 
 
 
 
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