2)今後の方向
深層水は、表層水に比べて多くの優れた性質を持ち、資源的にも高い価値を持っています。しかし、地質学的な生成過程のなかで産生される化石燃料などの高密度・高品位の資源に比べると低密度・低品位であるといわざるを得ません。したがって、深層水資源を実用的なものにするためには、その低密度のエネルギーや低品位の物質をいかに上手に回収し、利用するか、といった手段や技術を確立するかが重要な鍵となります。
その可能性として、一つは、低密度・低品位の自然環境で効率的なエネルギー交換や物質転換を行っている生物機能(光合成、代謝など)を活用することです。先に述べたように、深層水の資源的特性は、水産生物の生産(生物機能の活用)に対して特に効果的なことが判明していることから、生物生産分野における実用化の見通しが高まっています。もう一つは、図3に示すような深層水の資源性を無駄なく回収・利用する多段利用システム(カスケード利用システム)を構築することです。
図1 深層水で飼育したサクラマスの成長(海産魚用配合飼料を給与)
図2 アカウニ幼生の生存率に対する深層水と表層水の影響比較
図3 深層水の多段利用システム(カスケード利用システム)
我が国では、39都道府県が海に隣接しており、そのうち海岸から5km以内に500m以上の水深を有する自治体は、16存在します。この点からみても、我が国は、深層水利用の立地条件に恵まれた環境にあるといえます。
わが国において深層水取水が可能な地域
深層水を利用した各種の商品
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