|
はじめに
本報告書は、競艇益金による日本財団の平成15年度の助成事業として、社団法人日本舶用工業会が実施した「超臨界水場エンジンの実用化に関する調査研究」事業の成果をとりまとめたものである。
本事業の背景には、益々厳しくなるIMO等の環境規制の強化ならびに日々増大する高効率かつ低コストを求める市場の要求という事情がある。こうした課題を克服して、環境適合性の優れたエンジンの開発が急務となっている。そこで従来の水噴射方式とは異なり排気ガスの熱を回収して、超臨界水を造り、これをシリンダ内に噴射することにより、NOxの大幅低減とCO2の低減を同時に図ることをねらいとした超臨界水場エンジンを世界に先駆けて開発し、日本の舶用工業界、海運業への貢献はもとより、世界のエネルギー・環境産業への貢献をねらっており、平成17年度内に原理実証を終了させる運びである。
本事業の実施に当っては、超臨界水場エンジン研究委員会を組織し、委員長に平田賢 東京大学名誉教授(日本学術会議会員/芝浦工業大学教授)を選出して、実施計画の検討・確認、並びに成果のとりまとめを行った。
貴重な開発資金を助成いただいた日本財団、並びに本事業の推進にご指導ご助言をいただいた国土交通省海事局へ感謝申し上げるとともに、多忙な中で貴重な時間を割いてご協力いただいた委員並びに関係者の皆様にはひたすら感謝にたえない。この機会を借りて御礼申し上げる次第である。
平成16年3月
(社)日本舶用工業会
超臨界水場エンジン研究委員会委員名簿
(順不動、敬称略)
委員長 平田 賢 芝浦工業大学 教授
委 員 田中 裕久 横浜国立大学 教授
畔津 昭彦 東海大学 教授
波江 貞弘 (独)海上技術安全研究所 環境・エネルギー領域長
伊藤 邦憲 三菱重工業(株) 次世代製品企画スタッフチームリーダー
玉井 邦義 (株)ササクラ 機器技術室技師
関係者 平岡 克英 (独)海上技術安全研究所
宮野 弥明 三菱重工業(株)
柚木 晃宏 三菱重工業(株)
井田 徳昭 三菱重工業(株)
三浦三智男 (株)ササクラ
オブザーバー
大谷 雅美 国土交通省海事局舶用工業課
竹内 智仁 国土交通省海事局舶用工業課
黒澤 茂 国土交通省海事局舶用工業課
事務局 山下 暁 (社)日本舶用工業会
吉田 英次 (社)日本舶用工業会
磯部 信一 (社)日本舶用工業会
神内 邦夫 (社)日本舶用工業会
排気ガスの熱を回収して超臨界水を造り、これをシリンダ内に噴射することにより、NOxの大幅低減とCO2の低減を同時に図ることをねらいとした超臨界水場エンジンの構想は決して新しいものではない。
しかしこの技術は従来より、噴射のタイミング、熱回収の困難さから実用化が難しいと考えられており、現在までに実現には至っていない。
この状況を打破するため平成14年度に日本財団助成事業として日本舶用工業会が「超高効率・高出力・低公害舶用内燃機プラント開発の調査研究」をFS研究として行った結果、超臨界水場エンジンの実現が可能であること、従来エンジンに対し革新的な性能改善が得られることが確認できた。
本事業は平成15年度からの3年計画であり、平成15年度は実証システムの計画および設計を実施完了した。これにより平成16年度のシステム製作へ向け準備が整った。また、目標値の設定論拠についても新たな視点を導入し、実験計画と試験の加速に備えることができている。平成17年度は実証システムを検証し、世界に先駆け超臨界水場エンジンの製品化に目処をつけることを目的とする。
目標スペックを以下に示す。
●NOxの低減(1/3に減少)
●CO2の削減(8%削減)
●出力の大幅上昇(15%アップ)
●熱効率のアップ(48→52%)
平成15年4月〜9月 実証システムの計画と設計
平成15年4月〜平成16年2月 一部コンポーネントの設計・製作
平成15年4月〜11月 実験機の設計
平成15年10月〜平成16年2月 試験計画(含む設備計画)
平成16年1月〜2月 まとめ
実施の場所:三菱重工業株式会社 横浜製作所、横浜研究所
専門事項の一部の調査研究については、株式会社ササクラ殿他の協力を得る。
本システムのモデルを構築し、性能計算を実施した。
3.1.1.1 検討モデル
図. 3-1-1に示す筒内サイクルに着目し、マスバランス、エネルギーバランス式より筒内サイクルのdT/dθ、dP/dθ導出する(式(1)〜(8))。
筒内ガスは混合ガスと考え、各種ガス単体を半理想気体として、比エンタルピを温度の5次式で近似して検討を進める(図. 3-1-2)。
図. 3-1-3は近似式に蒸気表の値をプロットしたものであるが良く近似できている。超臨界状態はこの近似範囲からややはずれるが、筒内に噴射された後は瞬時混合の仮定で分圧として存在し、またサイクル内ではより高温の領域で存在するため、今回の近似で十分性能を模擬できると言える。
図. 3-1-4は空気を単体ガスの混合物として、空気の物性を上記の近似式から導いたものである。今回対象とする圧力範囲の空気の物性0.1から30MPaを良く近似できている。低温領域で半理想気体では表せない範囲があるが、今回扱う範囲はせいぜい600〜700K以上であるので今回の近似で問題なく筒内ガス物性をシミュレートできるといえる。
また高温高圧条件下では、従来の気体の状態方程式が成立しない恐れがある。そこで工業上は問題ない精度が得られるとされる、圧縮係数Zを導入して検討も実施したが、圧縮係数なしの場合とほとんど変わらない結果を得た。(式(5)、(6))
3.1.1.2 検討結果
図. 3-1-5に示す、弊杜のディーゼルエンジン18KU30Bを対象に検討を行う。
(1)超臨界水噴射による性能改善効果
筒内に任意の超臨界水噴射を考えたときの効果を検討した。
まず、超臨界水の噴射波形による性能改善幅を検討するため、矩形、三角形(前高、後高)での噴射を考える。噴射期間は20deg、エンタルピ3000kJ/kg(35MPa、500℃相当)、Gw/Gf=3.0で計算した。またさらに受熱開始角度を遅らせて、Pmaxを一定とした場合についても検討を行った。検討結果を図. 3-1-6に、サイクル波形を図. 3-1-7に示す。
検討の結果、Pmax一定とした場合、熱効率は最大47.4%→50.5%の3.1ポイント改善の結果を得た。
(2)ディーゼルサイクルでの検討
ベースのサイクルに対して、Pmaxを維持するように任意の噴射を与える。ついで圧縮比をあげてディーゼルサイクルをつくり、そこでPmaxを維持するように噴射させる検討を行った。図. 3-1-8に検討結果を示す。ベースサイクル+Pmax維持投入で50.7%(3.3pアップ)、ディーゼルサイクル+Pmax維持投入で52.6%(5.2pアップ)の結果となった。
(3)超臨界水投入+燃料追加投入の検討
まずディーゼルサイクルをベースに投入燃料量を追加した場合の計算を行った。(Gf'/Gf=1.0〜1.5)。図. 3-1-9のとおり燃料量を追加するほどTmaxは増大し熱効率は低下する傾向となった。
ついで、燃料を追加した状態で、さらに超臨界水噴射をしたときの計算を実施した。検討結果を図. 3-1-10に、Gst/Gf=3.0のときのサイクル波形を図. 3-1-11に示す。Pmaxにて超臨界水を投入し、その後Pmaxを維持するように燃料からの受熱が行われると仮定した。出力15%アップ、熱効率4pアップ(8%改善)の同時達成を目標としたとき、h3000×Gst/Gf=3.0、Gf'/Gf=1.05程度で、目標性能に達する目処を得た。h3000×Gst/Gf=3.0、Gf'/Gf=1.05の投入条件で、排熱回収系+過給機系がバランスを証明できれば、システムとしての成立性が確認できる。
(4)システム全体での検討(フィードバックの概念を組み込んだ検討)
前項までで目標性能を達成する条件の目処をつけた。ついで研究当初より提案しているフィードバックの概念をとり入れた検討結果により目標性能を満足する下記性能値達成の目論見を得た。
・2流体サイクルプロセス設計の見地の解析(理論)モデルより
出力:1.3倍、熱効率1.15倍
・機関の誓約(通過可能ガス流量、温度等)を勘案して
出力:1.15倍、熱効率1.08倍
|