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平成15年神審第62号
件名

プレジャーボートウィンドメロディ浸水事件(簡易)

事件区分
浸水事件
言渡年月日
平成15年11月21日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(相田尚武)

副理事官
河野 守

受審人
A 職名:ウィンドメロディ船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船外機及び魚群探知機に濡損、さぶたなどが流出

原因
錨泊方法不適切

裁決主文

 本件浸水は、錨泊方法が不適切であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年4月27日08時30分
 徳島県孫埼西方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートウィンドメロディ
全長 4.97メートル
2.05メートル
深さ 0.79メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 36キロワット

3 事実の経過
 ウィンドメロディは、最大搭載人員5人の船外機を備えたFRP製プレジャーボートで、船首部に船首甲板及びその下方にキャビンが配置され、船体中央部に無蓋で風防ガラス付きの操縦席が設けられ、その後方は船尾甲板となっており、同甲板の両舷船尾に放水口が設けられ、同甲板周囲が、放水口付近で高さ約51センチメートルの船側外板で囲われていた。
 ところで、船尾甲板放水口は、無人とした係留状態においては、海面上の高さが低く、大人3人ばかりが乗船した係留状態では、海水が容易に浸入する位置に設けられていた。
 A受審人は、平成2年5月に四級小型船舶操縦士の免許を取得し、同8年9月に中古で購入したウィンドメロディを専ら釣りの目的で使用しており、平素、錨泊する際、直径15ミリメートルの合成繊維製錨索(以下「錨索」という。)を船首クリートに係止する方法をとっていた。
 ウィンドメロディは、A受審人が1人で乗り組み、船首0.2メートル船尾0.6メートルの喫水をもって、釣りの目的で、平成15年4月27日07時15分徳島県鳴門市鳴門町三ツ石の間ノ水尾(あいのみお)の係留地を発し、07時35分飛島西方海域に至って釣りを行ったものの、釣果がはかばかしくなかったので、08時15分同釣り場を発し、孫埼西方の釣り場に向かった。
 08時25分A受審人は、前示釣り場に着いて機関を停止し、水深約7メートルのところに、重さ5キログラムのダンホース型錨を投じ、錨索を20メートル延出して係止することにしたが、潮流はそれほど強くなく、船尾が沈下して海水が放水口から浸入することはないものと思い、錨索を船首クリートに係止するなどの適切な錨泊方法をとることなく、錨索を左舷船尾クリートに数回まわし掛けしたうえ、ヒッチを掛けて係止し、折からの北東方向の潮流を左舷船尾に受け、船首を北東に向けて錨泊した。
 A受審人は、錨泊後、操縦席付近で釣り道具の準備をしていたところ、潮流により錨索の引張り力が増大して左舷船尾が沈下し、海水が放水口から逆流して船尾甲板に浸入し始めるようになったが、このことに気付かなかった。
 こうして、ウィンドメロディは、錨泊中、船内に海水の浸入が続き、やがて左舷船尾が著しく傾斜し、ガンネルを越えて浸水するようになり、08時29分流水音で異状に気付いたA受審人が、錨索を左舷船尾クリートから解くため手繰り寄せようとしたが、結び目が締まっていて解けず、錨索を切断しようとキャビンにナイフを取りに行っている間に、大量の海水が浸入して、同時30分孫埼灯台から真方位263度430メートルの地点において、水船状態となった。
 当時、天候は晴で風力3の北西風が吹き、鳴門海峡の潮流は南流の中央期にあたり、付近海上には北東流があった。
 その結果、ウィンドメロディは、左舷側に横転して船外機及び魚群探知機に濡損を生じ、さぶたなどが流出したが、近くのマリーナの救助艇により係留地に引き付けられ、A受審人は、泳いでいたところ、付近を航行中の漁船に救助された。 

(原因)
 本件浸水は、徳島県孫埼西方沖合において、釣りの目的で錨泊する際、錨泊方法が不適切で、潮流により船尾が沈下して海水が船尾甲板放水口から船内に浸入したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、徳島県孫埼西方沖合において、釣りの目的で錨泊する場合、船尾甲板放水口の海面上の高さが低く、船尾係留すると潮流により船尾が沈下して海水が同放水口から容易に浸入するおそれがあったから、錨泊中船尾が沈下しないよう、錨索を船首クリートに係止するなどの適切な錨泊方法をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、潮流はそれほど強くなく、船尾が沈下して海水が同放水口から浸入することはないものと思い、適切な錨泊方法をとらなかった職務上の過失により、錨索を船尾クリートに係止した状態とし、海水が同放水口から船内に浸入して水船となる事態を招き、船外機及び魚群探知機などに濡損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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