日本財団 図書館




 海難審判庁採決録 >  2003年度(平成15年) > 安全・運航事件一覧 >  事件





平成15年神審第74号
件名

プレジャーボートタケハル マル運航阻害事件(簡易)

事件区分
安全・運航阻害事件
言渡年月日
平成15年12月10日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(相田尚武)

理事官
杉崎忠志

受審人
A 職名:タケハル マル船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
こし器が目づまりして主機が自然停止し、航行不能

原因
主機燃料油系統のドレンの点検不十分

主文

 本件運航阻害は、主機燃料油系統のドレンの点検が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年4月29日20時25分
 京都府舞鶴港
 
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートタケハル マル
全長 7.07メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 52キロワット
回転数 毎分3,500

3 事実の経過
 タケハル マルは、平成7年6月に進水した、一層甲板型のFRP製プレジャーボートで、甲板上には船体中央部にキャビン及び操舵室が配置され、同室後方は船尾甲板となっており、同甲板船尾部に船内外機が備えられていた。
 主機は、ヤンマーディーゼル株式会社が製造した4JH2-DTZ型と称するディーゼル機関で、その燃料油系統は、キャビン下に設置された容量100リットルの燃料油タンク(以下、燃料油系統の機器については「燃料油」を省略する。)内の軽油が、金属製エレメント式油水分離器を経て供給ポンプに吸引して加圧され、ペーパーエレメント式こし器を経由して噴射ポンプに導かれ、同ポンプにより加圧されて各シリンダに供給されるようになっていた。
 A受審人は、昭和50年12月に四級小型船舶操縦士の免許を取得し、平成7年6月に本船を購入し、京都府舞鶴漁港を定係地として、釣りの目的で、月あたり3ないし4回使用していた。
 タケハル マルは、毎年6月にこし器エレメントや潤滑油の取替えが業者により行われていたが、油水分離器エレメントは長期間取り替えられず、また、同分離器及びタンクに取り付けられた各ドレンプラグによるドレン抜きが行われなかったので、次第に水分やごみなどの異物が滞留する状況となった。
 A受審人は、積み込む燃料油中に水分が含まれていることやタンク内が結露すること、及び油水分離器の役割を知っていたが、平成15年4月29日朝定係地において、出港準備にあたり、燃料油をタンクにほぼ一杯まで補給した際、燃料油の供給が阻害されることはないものと思い、タンクや油水分離器のドレン抜きを行うなど、主機燃料油系統のドレンの点検を行うことなく、潤滑油量を点検して操舵室で始動した。
 タケハル マルは、A受審人が1人で乗り組み、友人3人を乗せ、船首0.3メートル船尾0.4メートルの喫水をもって、釣りの目的で、同日09時00分定係地を発し、同時45分冠島南西方沖合の釣り場に着いて主機を停止し、錨泊して釣りを行い、18時45分釣り場を発し、帰途についた。
 タケハル マルは、針路を207度(真方位、以下同じ。)に定め、主機回転数を毎分3,000にかけて南下し始めたところ、時化(しけ)模様となり、次第に強まってきた風浪を船首方向から受けるようになったので、19時15分主機回転数が毎分1,000に減じられ、船体が大きく縦揺れする状況で進行中、タンク及び油水分離器に滞留していた多量の水分やごみなどの異物が燃料油系統に浸入するようになった。
 こうして、タケハル マルは、毎時4キロメートルの対地速力で続航中、前示異物によりこし器が目詰まりし始め、20時過ぎから主機回転数がたびたび急低下するようになり、同時25分博奕(ばくち)岬灯台から205度1.1海里の地点において、こし器が目詰まりして燃料油の供給が阻害され、主機が自然に停止した。
 操船中のA受審人は、始動を試みたが果たせず、主機燃料油系統が閉塞したことに思い及ばず、投錨して救助を要請し、タケハル マルは、航行不能となった。
 当時、天候は曇で風力3の西南西風が吹き、付近海上には波高約1メートルの波浪があった。
 その結果、タケハル マルは来援した海上保安庁の巡視艇により定係地に引き付けられ、のち油水分離器及びこし器のエレメントが取り替えられ、タンクのドレン抜きが行われた。 

(原因)
 本件運航阻害は、京都府舞鶴漁港の定係地を釣り場に向けて出港する際、主機燃料油系統のドレンの点検が不十分で、燃料油タンクや油水分離器に滞留した水分やごみなどの異物が排除されず、同油系統が閉塞して主機の運転が継続できなくなったことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、京都府舞鶴漁港の定係地を釣り場に向けて出港する場合、燃料油タンクや油水分離器に滞留した水分やごみなどの異物が同油系統に浸入すると主機の運転に支障を生じるおそれがあったから、燃料油タンクや油水分離器のドレン抜きを行うなど、主機燃料油系統のドレンの点検を行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、燃料油の供給が阻害されることはないものと思い、主機燃料油系統のドレンの点検を行わなかった職務上の過失により、燃料油タンクや油水分離器に多量の水分やごみなどの異物を滞留させ、それらが同油系統に浸入して閉塞させる事態を招き、主機の継続運転を不能とさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION