(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成15年6月27日07時50分
北海道松前港沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
プレジャーボート第二清栄丸 |
総トン数 |
0.9トン |
全長 |
7.10メートル |
機関の種類 |
電気点火機関 |
出力 |
44キロワット |
3 事実の経過
第二清栄丸(以下「清栄丸」という。)は、船体中央やや後方に操舵スタンドを有し、専らプレジャーボートとして使用されるFRP製漁船で、A受審人(平成8年4月四級小型船舶操縦士免許取得)が1人で乗り組み、友人1人を乗せ、魚釣りの目的で、船首0.51メートル船尾0.58メートルの喫水をもって、平成15年6月27日05時00分北海道松前港を発し、同港沖合1,000メートルの釣り場に向かった。
ところで、清栄丸では、操舵スタンドから船外機の遠隔操縦ができるようになっており、その燃料タンクは、操舵輪下部の引き戸の中に収納され、燃料は同タンクからゴム管により船外機に導かれていた。また、同タンク容量は約100リットルで、その上部には油量計が備えられ、引き戸を開ければ容易に油量を確認することができた。
A受審人は、1箇月半前船外機を新替えしたばかりで、燃料消費率について確認していなかったが、同じ船外機を所有する友人から同消費率がよいと聞いており、当日の釣り場までの距離が短かったことや、前回釣りに出た2週間ほど前、いくらか補油をした記憶があったことなどから、燃料は十分に足りるものと思い、発航前、油量計を見るなどして搭載燃料の油量確認をしていなかったので、燃料がわずかとなっていることに気付かなかった。
05時05分ごろA受審人は、松前港港口の南方1,000メートル付近に到着して機関を停止し、釣りを始めたものの、釣果が得られなかったため西方に移動することとし、同時45分同港の西北西方1.4海里付近に至って釣りを再開したところ、南東向きの潮流があり、潮上りを繰り返しながら2時間ほど釣りを続けたが、相変わらず良好な釣果が得られなかったため、帰途に就くこととした。
07時47分A受審人は、松前灯台から293度(真方位、以下同じ。)1.4海里の地点において、針路を123度に定め、機関をほぼ全速力前進にかけて発進し、折からの南東流に乗じて20.0ノットの対地速力で手動操舵により進行中、07時50分松前灯台から270度830メートルの地点において、燃料がなくなって機関が停止し、運航が阻害された。
当時、天候は霧雨で風力2の東南東風が吹き、潮候は下げ潮の初期で、付近には1.0ノットの南東流があった。
この結果、清栄丸は、陸岸に沿って南東方に圧流され、13時50分ごろ松前港の東南東約5海里に位置する白神岬の南方沖合2海里の地点に至ったとき、航行中の外国船に発見、救助され、連絡を受けて来援した漁船により白神漁港に引きつけられた。
(原因)
本件運航阻害は、北海道松前港において、魚釣りのため発航する際、搭載燃料の油量確認が不十分で、航行中、主機関の燃料油がなくなったことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、北海道松前港において、魚釣りのため発航する場合、帰港するまで燃料油がなくならないよう、油量計を見るなどして、搭載燃料の油量を十分に確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、燃料は十分に足りるものと思い、搭載燃料の油量を十分に確認しなかった職務上の過失により、航行中、燃料油がなくなって運航阻害を招き、数時間にわたって漂流したのち外国船に発見、救助され、来援した漁船により近隣の漁港に引きつけられるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。