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 海難審判庁採決録 >  2003年度(平成15年) > 安全・運航事件一覧 >  事件





平成15年函審第41号
件名

プレジャーボート第二清栄丸運航阻害事件(簡易)

事件区分
安全・運航阻害事件
言渡年月日
平成15年10月28日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(黒岩 貢)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:第二清栄丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
機関が停止し、運航が阻害された

原因
搭載燃料の油量確認不十分

裁決主文

 本件運航阻害は、搭載燃料の油量確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年6月27日07時50分
 北海道松前港沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート第二清栄丸
総トン数 0.9トン
全長 7.10メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 44キロワット

3 事実の経過
 第二清栄丸(以下「清栄丸」という。)は、船体中央やや後方に操舵スタンドを有し、専らプレジャーボートとして使用されるFRP製漁船で、A受審人(平成8年4月四級小型船舶操縦士免許取得)が1人で乗り組み、友人1人を乗せ、魚釣りの目的で、船首0.51メートル船尾0.58メートルの喫水をもって、平成15年6月27日05時00分北海道松前港を発し、同港沖合1,000メートルの釣り場に向かった。
 ところで、清栄丸では、操舵スタンドから船外機の遠隔操縦ができるようになっており、その燃料タンクは、操舵輪下部の引き戸の中に収納され、燃料は同タンクからゴム管により船外機に導かれていた。また、同タンク容量は約100リットルで、その上部には油量計が備えられ、引き戸を開ければ容易に油量を確認することができた。
 A受審人は、1箇月半前船外機を新替えしたばかりで、燃料消費率について確認していなかったが、同じ船外機を所有する友人から同消費率がよいと聞いており、当日の釣り場までの距離が短かったことや、前回釣りに出た2週間ほど前、いくらか補油をした記憶があったことなどから、燃料は十分に足りるものと思い、発航前、油量計を見るなどして搭載燃料の油量確認をしていなかったので、燃料がわずかとなっていることに気付かなかった。
 05時05分ごろA受審人は、松前港港口の南方1,000メートル付近に到着して機関を停止し、釣りを始めたものの、釣果が得られなかったため西方に移動することとし、同時45分同港の西北西方1.4海里付近に至って釣りを再開したところ、南東向きの潮流があり、潮上りを繰り返しながら2時間ほど釣りを続けたが、相変わらず良好な釣果が得られなかったため、帰途に就くこととした。
 07時47分A受審人は、松前灯台から293度(真方位、以下同じ。)1.4海里の地点において、針路を123度に定め、機関をほぼ全速力前進にかけて発進し、折からの南東流に乗じて20.0ノットの対地速力で手動操舵により進行中、07時50分松前灯台から270度830メートルの地点において、燃料がなくなって機関が停止し、運航が阻害された。
 当時、天候は霧雨で風力2の東南東風が吹き、潮候は下げ潮の初期で、付近には1.0ノットの南東流があった。
 この結果、清栄丸は、陸岸に沿って南東方に圧流され、13時50分ごろ松前港の東南東約5海里に位置する白神岬の南方沖合2海里の地点に至ったとき、航行中の外国船に発見、救助され、連絡を受けて来援した漁船により白神漁港に引きつけられた。 

(原因)
 本件運航阻害は、北海道松前港において、魚釣りのため発航する際、搭載燃料の油量確認が不十分で、航行中、主機関の燃料油がなくなったことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、北海道松前港において、魚釣りのため発航する場合、帰港するまで燃料油がなくならないよう、油量計を見るなどして、搭載燃料の油量を十分に確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、燃料は十分に足りるものと思い、搭載燃料の油量を十分に確認しなかった職務上の過失により、航行中、燃料油がなくなって運航阻害を招き、数時間にわたって漂流したのち外国船に発見、救助され、来援した漁船により近隣の漁港に引きつけられるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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