(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年7月28日06時40分
山口県特牛港南西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第五荒波丸 |
総トン数 |
19トン |
全長 |
24.00メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
573キロワット |
3 事実の経過
第五荒波丸は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、平成10年2月交付の一級小型船舶操縦士免状を有するA受審人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首0.6メートル船尾2.2メートルの喫水をもって、同13年7月27日15時00分山口県特牛港を発し、18時ごろ同港の西北西方29海里沖合付近の漁場に至って夜間操業を行った。
ところで、A受審人は、日ごろ漁場の行き帰りには単独で船橋当直を行い、操業中に約3時間と入港中に約5時間の休息をとっていたが、27日特牛港入港中に漁仲間と漁場の情報交換等のために話し込んでしまい、休息をとらずに出港し、操業中の翌28日00時ごろから03時ごろまでの間、いつものように休息をとったものの睡眠不足の状態であった。
こうしてA受審人は操業を終え、03時45分特牛灯台から288度(真方位、以下同じ。)29.2海里の漁場を発進し、針路を109度に定め、機関を回転数毎分1,450にかけ、10.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)とし、2人の甲板員を休息させ、自ら単独の船橋当直につき、自動操舵により進行した。
A受審人は、05時50分特牛灯台から284度8.5海里の地点に達したとき、睡眠不足から眠気を催したが、漁場発進前に3時間ほど睡眠をとっているので、まさか居眠りすることはあるまいと思い、休息中の甲板員を昇橋させて2人当直とするなど、居眠り運航の防止措置を十分にとることなく、操舵室の横板に座り、後方の壁にもたれかかっていたところ、その後、いつしか居眠りに陥った。
A受審人は、居眠りしたまま、原針路、原速力で進行中、06時40分特牛灯台から207度1,200メートルの地点において、第五荒波丸は、特牛港南西方の陸岸から拡延する岩礁に乗り揚げた。
A受審人は、衝撃で目覚め、事後の措置にあたった。
当時、天候は晴で風力1の東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、シューピースを脱落し、船底外板に亀裂を生じたが、救助船によって引き下ろされ、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、漁場から特牛港に向け東行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、特牛港南西方の陸岸から拡延する岩礁に向首、進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、単独で船橋当直にあたり、漁場から特牛港に向け東行中、眠気を催した場合、日ごろのように前日の停泊中に睡眠をとらなかったのであるから、休息中の甲板員を呼んで2人当直とするなど、居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、漁場発進前に3時間ほど睡眠をとっているのでまさか居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、特牛港南西方の陸岸から拡延する岩礁に向首、進行して乗揚を招き、シューピースを脱落させ、船底外板に亀裂を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。