(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年9月12日03時00分
宮崎県東臼杵郡大碆(おおばえ)南岸
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船第三十八浩栄丸 |
総トン数 |
9.7トン |
登録長 |
14.90メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
漁船法馬力数 |
120 |
3 事実の経過
第三十八浩栄丸(以下「浩栄丸」という。)は、まき網漁業に従事するFRP製灯船兼探索船で、平成14年7月交付の一級小型船舶操縦士免状を有するA受審人が単独で乗り組み、操業の目的で、船首0.15メートル船尾1.00メートルの喫水をもって、同年9月11日18時00分宮崎県油津港を発し、同県東岸に沿った日向灘の漁場に向かった。
ところで、浩栄丸が所属するまき網船団は、網船1隻、運搬船2隻及び灯船兼探索船2隻によって構成されていて、その操業形態は、夕刻出航して魚群探索を開始し、魚群を探知できれば船団が集まって漁を行ったのち水揚港に向かい、魚群が探知できなければ翌日の日出時に同探索を切り上げ、近くの港に入港して休息することを繰り返していて、月齢14日から同18日までの5日間と、毎月第2土曜日とを休漁日として定めていた。
A受審人は、発航前に約6時間の睡眠をとったものの、9月の第2土曜日前であったことと、直前の月齢18日が8月27日であったこととから、その後の連続した操業によりやや疲労が蓄積している状況であった。
発航後、A受審人は、操舵室右舷側のいすに腰掛け、同室前面に設置したレーダー、魚群探知機及び魚群探索用ソナー(以下「ソナー」という。)をそれぞれ作動させ、主としてソナーの監視に専念し、離岸距離11海里付近を北北東方に延びる200メートル等深線をジグザグに横切るように、北東進と北西進とを繰り返して魚群探索を行いながら北上した。
9月12日02時10分A受審人は、細島灯台から136度(真方位、以下同じ。)12.0海里の地点に達したとき、針路を328度に定め、定針地点から約5海里北西進した地点で北東方に転針する予定として、機関を回転数毎分1,750にかけ、16.5ノットの対地速力で、自動操舵により進行したところ、付近の海底が漁を行うことに適さない地形であったので、ソナーを厳重に監視する必要がなくなって気が緩んだうえ、蓄積した疲労によってやや眠気を催したが、それほど強い眠気と感じなかったことから、まさか居眠りに陥ることはないものと思い、いすから立ち上がって手動操舵に切り替えるなど、居眠り運航の防止措置を十分にとることなく続航中、いすに腰掛けたままいつしか居眠りに陥った。
こうして、A受審人は、02時28分転針予定地点を過ぎても居眠りに陥ったまま進行中、03時00分細島灯台から017度3.1海里の地点において、浩栄丸は、原針路、原速力で、大碆南岸に乗り揚げた。
当時、天候は曇で風はなく、視界は良好で、潮候は下げ潮の末期であった。
乗揚の結果、右舷船首部外板に破口を生じ、ソナーを損壊したが、自然離礁して僚船に曳航され、北浦漁港に引き付けられて、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、夜間、宮崎県沖合の日向灘において魚群探索を行いながら北上中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同県東臼杵郡大碆南岸に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、単独で乗り組み、宮崎県沖合の日向灘において魚群探索を行いながら北上中、連続した操業による蓄積した疲労によってやや眠気を催した場合、いすに腰掛けたまま自動操舵で進行していると居眠りに陥るおそれがあったから、いすから立ち上がって手動操舵に切り替えるなど、居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、それほど強い眠気と感じなかったことから、まさか居眠りに陥ることはないものと思い、居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、同県東臼杵郡大碆南岸に向首進行して乗揚を招き、右舷船首部外板に破口を生じ、ソナーを損壊させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。