(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年12月17日10時00分
沖縄県沖縄島知念岬沖
2 船舶の要目
船種船名 |
作業船春三丸 |
登録長 |
11.27メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
62キロワット |
3 事実の経過
春三丸は、船体中央部船尾寄りに操舵室を設け、限定沿海区域を航行区域とするFRP製作業船で、平成元年2月に四級小型船舶操縦士の免許を取得したA受審人が1人で乗り組み、回航の目的で、船首0.5メートル船尾0.8メートルの喫水をもって、平成14年12月17日08時00分沖縄県金武中城港石川地区を発し、定められた航行区域外にある同県渡名喜島渡名喜漁港に向かった。
ところで、A受審人は、石川地区を基地として、主に中城湾及び金武湾内で行われる港湾工事などに携わっていたことから、中城湾南部にある久高島西端付近から沖縄島南岸にかけて、干出さんご礁帯が拡延しており、久高島西端と平瀬と称する干出さんご礁域の間に、可航幅約1,000メートル、長さ約800メートルの久高口と称する水路が存在し、平瀬東端部付近に左舷標識が敷設されていることも、また、久高島灯台から259度(真方位、以下同じ。)約1.2海里のところにあるコマカ島の西側に、主に地元の漁船が通行する可航幅約200メートル、長さ約1,300メートルの干出さんご礁帯の切れ間(以下「コマカ島西側水路」という。)が存在するものの、側面標識が敷設されていないことも知っていた。
A受審人は、春三丸にレーダー及びGPSを装備していなかったものの、海水の変色状況を見分けながら何度かコマカ島西側水路を航行した経験があったので、同水路を経由して渡名喜島に向かうつもりで、周囲の地形から目測で船位を確かめつつ中城湾を南下し、09時49分半久高島灯台から307度2.3海里の地点で、手動操舵のまま針路をコマカ島西側水路の北口付近に向かう195度に定め、機関を全速力前進にかけて12.0ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、09時55分久高島灯台から279度2.15海里の地点に達したとき、煙霧のため海水の変色状況を見分けることが困難な状況になったことを知ったが、コマカ島西側水路の北口に接近すれば、何とか同水路の側端を見定めることができるものと思い、直ちに針路を東南東方に転じ、久高口を航行する針路を選定することなく続航した。
A受審人は、09時57分少し過ぎ目測で久高島灯台から267度2.25海里の地点に至ったことを知り、コマカ島西側水路の中央部付近を航行するつもりで154度に針路を転じたところ、同水路の左側端に著しく接近する態勢となって進行することとなり、その後コマカ島西側水路の北口付近に差し掛かっても、同水路の左側端を見定めることができないまま、同じ針路、速力で続航中、春三丸は、10時00分久高島灯台から253度2.1海里の地点において、コマカ島西側水路の左側端となる干出さんご礁に乗り揚げ、これを乗り切った。
当時、天候は晴で風力3の北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
A受審人は、船体の衝撃で乗り揚げたことを知ったものの、大きな損傷を認めなかったことから、その後減速して目的地に向け航行中、船尾管からの浸水により航行不能となり、来援した巡視船により渡名喜島に曳航された。
乗揚の結果、推進器翼などに曲損を生じたが、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、沖縄県沖縄島知念岬沖において、レーダー及びGPSが不装備のため、側面標識が設置されていないコマカ島西側水路を海水の変色状況を見分けながら航行するつもりで南下中、煙霧のため同変色状況を見分けることが困難な状況になった際、側面標識が設置されている久高口に向かう針路を選定しなかったことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、沖縄県沖縄島知念岬沖において、レーダー及びGPSが不装備のため、干出さんご礁帯の切れ間にあって側面標識が設置されていないコマカ島西側水路を海水の変色状況を見分けながら航行するつもりで南下中、煙霧のため同変色状況を見分けることが困難な状況になった場合、直ちに側面標識が設置されている久高口に向かう針路を選定すべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、コマカ島西側水路北口に接近すれば、何とか同水路の側端を見定めることができるものと思い、久高口に向かう針路を選定しなかった職務上の過失により、コマカ島西側水路の側端に著しく接近して干出さんご礁への乗揚を招き、推進器翼などに曲損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。