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 海難審判庁採決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成15年長審第30号
件名

漁船第七公佳乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年10月7日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(清重隆彦、原 清澄、寺戸和夫)

理事官
金城隆支

受審人
A 職名:第七公佳船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
球状船首を凹損、推進器翼及び同軸を曲損

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年11月11日06時00分
 長崎県平戸島北岸
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第七公佳
総トン数 19トン
全長 24.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 160

3 事実の経過
 第七公佳(以下「公佳」という。)は、中型まき網漁船団の魚群探索及び漁獲物運搬などに従事するFRP製漁船で、一級小型船舶操縦士免許(平成12年3月29日取得)を有するA受審人ほか1人が乗り組み、船首1.0メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成14年11月10日11時00分長崎県神崎漁港を発し、同日夕方同県生月島北北西方の漁場に着いて操業を行い、漁獲した鯖など約30トンを積み取り、翌11日04時30分同漁場を発して同県松浦港に向かった。
 ところで、A受審人は、前々日の9日は休漁日で出漁せず、全日陸上で休息を取り、翌10日11時に神崎漁港を出港したもので、出港時から船橋当直に当たるとともに、連続して魚群探索等の操業に従事していた。
 A受審人は、発進後、単独で船橋当直に就き、大碆鼻灯台から320度(真方位、以下同じ。)10.0海里ばかりの地点で、針路を平戸島北岸のハナグリ鼻に向く131度に定め、機関回転数を毎分1,800にかけて10.0ノットの対地速力で、舵輪後方の船横方向に渡した板に腰を掛けて自動操舵により進行した。
 05時51分A受審人は、肥前横島灯台から272度1.7海里の地点に達したとき、出港時から休息が取れないまま、連続して作業を行っていたことから眠気を覚えたが、まさか居眠りすることはあるまいと思い、立ち上がって外気に当たるなどの居眠り運航の防止措置をとらなかった。
 公佳は、同じ針路及び速力で続航中、A受審人がいつしか居眠りに陥り、予定の転針地点に達したものの、転針が行われないまま、平戸島北岸に向かって進行し、06時00分肥前横島灯台から211度1.1海里の地点に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、球状船首に凹損を、推進器翼及び同軸に曲損をそれぞれ生じ、付近を航行中の瀬渡船の協力を得て離礁後、僚船によって松浦港に引き付けられ、のち、修理された。 

(原因)
 本件乗揚は、夜間、平戸島北方の白岳瀬戸において、漁場から帰港中、船橋当直者が眠気を覚えた際、居眠り運航の防止措置が不十分で、同島北岸に向首進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、平戸島北方の白岳瀬戸において、単独の船橋当直に就いて漁場から帰港中、眠気を覚えた場合、休息が取れないまま、連続して操業に従事していたのであるから、居眠りに陥ることのないよう、立ち上がって外気に当たるなどして、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、まさか居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、舵輪後方の船横方向に渡した板に腰を掛けたまま船橋当直を続けているうち、いつしか居眠りに陥り、平戸島北岸に向首進行して乗揚を招き、球状船首に凹損を、推進器翼及び同軸に曲損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して、同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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