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平成15年神審第72号
件名

貨物船アルガス岸壁衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年12月9日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(甲斐賢一郎、小金沢重充、平野研一)

理事官
加藤昌平

指定海難関係人
A 職名:アルガス船長

損害
右舷船首部外板に破口を伴う凹損、1号岸壁西角がわずかに破損

原因
操船(回頭措置)不適切

主文

 本件岸壁衝突は、回頭措置が適切に行われなかったことによって発生したものである。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年6月12日10時41分
 福井県内浦港
 
2 船舶の要目
船種船名 貨物船アルガス
総トン数 2,740トン
全長 102.27メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 2,132キロワット

3 事実の経過
 アルガスは、船体中央やや後方に船橋のある鋼製貨物船で、ロシア連邦国籍を有するA指定海難関係人ほか同国籍を有する35人が乗り組み、木材3,303立方メートルを積載し、船首5.4メートル船尾6.3メートルの喫水をもって、平成15年6月10日19時(現地時間)ロシア連邦ナホトカ港を発し、福井県内浦港に向かった。
 A指定海難関係人は、翌々12日09時40分(日本時間、以下同じ。)ごろ、内浦湾口北方6海里のところで昇橋して操船指揮に当たって進行した。
 ところで、A指定海難関係人は、内浦港に過去2回入港した経験があり、同港の状況は十分に知っており、また、着岸予定の内浦1号岸壁(以下「1号岸壁」という。)は、内浦湾の湾奥にあったので、岸壁付近には操船に影響を与えるような潮流は存在しなかった。
 10時12分A指定海難関係人は、正面埼(しょうめんさき)と押廻埼(おしまわしさき)を結ぶ線の中間地点に達し、手動操舵とし、機関を微速力前進にかけ、内浦湾の奥部に向かって続航した。
 10時29分A指定海難関係人は、内浦港防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から280.5度(真方位、以下同じ。)590メートルの地点に至って、1号岸壁に右舷着けの予定で、針路を同岸壁西角のやや南を向く120度に定め、機関を極微速力前進にかけ、4.5ノットの対地速力(以下「速力」という。)で進行した。
 10時37分A指定海難関係人は、防波堤灯台から138度740メートルの地点で、機関を停止して、惰力で1号岸壁に接近していったが、その後、1号岸壁西角との距離が150メートルほどとなったとき、同人は、海上が平穏なのでさらに接近してから左転しても同角を十分にかわせるものと思い、機関を停止した場合の回頭性能を考慮して早期に左転するなど回頭措置を適切に行わないまま続航した。
 10時39分A指定海難関係人は、防波堤灯台から134度830メートルの地点で1号岸壁西角が100メートルに近づいたとき、左舵15度として同岸壁西角をかわそうとしたものの、予測していたほど船首が回頭しないで同角に接近するので、同時40分左舵一杯とし、機関を半速力前進として左への回頭力を強めようとしたが、効なく、10時41分防波堤灯台から128度960メートルの地点において、3.5ノットの速力で船首が070度に向いたとき、右舷船首が1号岸壁西角に衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の西北西風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 衝突の結果、アルガスは右舷船首部外板に破口を伴う凹損を生じたが、のち修理され、1号岸壁西角はわずかに破損した。 

(原因)
 本件岸壁衝突は、福井県内浦港において、1号岸壁に右舷着けの予定で接近する際、回頭措置が適切に行われなかったことによって発生したものである。
 
(指定海難関係人の所為)
 A指定海難関係人が、福井県内浦港において、1号岸壁に右舷着けの予定で接近する際、機関を停止した場合の回頭性能を考慮して早期に左転するなど回頭措置を適切に行わなかったことは、本件発生の原因となる。
 A指定海難関係人に対しては、本件岸壁衝突を深く自戒していることに徴し、勧告しない。

 よって主文のとおり裁決する。





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