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平成15年神審第57号
件名

プレジャーボートともみ防波堤衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年11月14日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(竹内伸二)

理事官
前久保勝己

受審人
A 職名:ともみ船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
右舷船首部に破口を生じて沈没

原因
水路の位置確認不十分

裁決主文

 本件防波堤衝突は、防波堤切り通し水路の位置の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年5月17日22時00分
 神戸港第2区
 
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートともみ
総トン数 8.5トン
登録長 9.25メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 235キロワット

3 事実の経過
 ともみは、レーダーを装備したFRP製プレジャーモーターボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人3人を乗せ、夜の神戸港を見物する目的で、平成15年5月17日20時00分兵庫県尼崎西宮芦屋港第2区を発し、神戸港に向かった。
 ところで、神戸港第2区の摩耶ふ頭南西方には南北方向に延びる第4防波堤があり、同防波堤は、中央部やや北よりのところで長さ約190メートルの北堤防と長さ約320メートルの南堤防とに分かれ、各堤防の間は幅約130メートルの切り通し水路(以下「第4防波堤切り通し水路」という。)となっており、北堤防南端には毎3秒に1回の紅色閃光を発する神戸港第4防波堤中灯台(以下「中灯台」という。)が、南堤防北端には毎4秒に1回の黄色閃光を発する光達距離7.5キロメートルの簡易型太陽電池式標識灯がそれぞれ設置され、夜間、これらの灯火によって切り通し水路の位置を知ることができた。
 A受審人は、平成6年10月に一級小型船舶操縦士の免許を取得してヨットなどのプレジャーボートをレジャーの目的で運航し、これまでに夜間の通航経験はなかったものの、昼間、神戸港内を航行して第4防波堤切り通し水路を2度通航したことがあり、同水路の存在を知っていた。
 発航後A受審人は、尼崎西宮芦屋港を約8ノットの対地速力(以下「速力」という。)で西行して神戸港内に入り、六甲大橋下を経て第4防波堤切り通し水路を通航したが、そのとき、北堤防南端に中灯台の灯光を認めたものの、南堤防北端の標識灯には気付かなかった。
 その後A受審人は、神戸大橋下を通航して、同15年5月17日21時40分中突堤に至り、そこで友人3人が下船したのち、ふだん係留している大阪府堺市のマリーナに向かうこととし、船首尾とも1.0メートルの喫水をもって、21時45分同突堤を発進した。
 A受審人は、操舵室に備えたレーダーのスイッチを入れないまま、機関回転計、マグネットコンパス及びGPSなどが設置されたフライングブリッジで、専ら目視によって見張りを行いながら操舵にあたり、往航の進路を逆行した。
 A受審人は、神戸大橋下を経て新港東ふ頭とポートアイランドの間にさしかかり、21時56分中灯台から245度(真方位、以下同じ。)1,250メートルの地点に達したとき、第4防波堤切り通し水路を通航することとし、折から左舷船首方向に多数の水銀灯で照明された摩耶ふ頭を認め、その照明が眩しいことから、いちべつして中灯台や標識灯を認めず、切り通し水路の位置が分らなかったが、灯台が見えなくても左右の岸壁や摩耶ふ頭で見当をつければ大丈夫と思い、一時停船して注意深く中灯台を探すとか、レーダーを使用するなどして同水路の位置を十分に確認することなく、針路を072度に定め、機関を回転数毎分3,200の全速力前進にかけ、10.0ノットの速力で進行したところ、水路南側の第4防波堤南堤防に向首する状況となった。
 A受審人は、第4防波堤南堤防に向かっていることに気付かないまま、摩耶ふ頭の照明が眩しかったので左舷船首方向から視線をそらして操舵にあたるうち、レーダーを見て航行することを思い立ち、100ワットの室内照明灯を点灯していた操舵室に降りてレーダーのスイッチを入れ、映像が現れるのを待っていたとき、船首方向至近に第4防波堤南堤防を認め、急いで左舵一杯とするとともに機関を減速したが及ばず、ともみは、22時00分中灯台から174度150メートルの地点において、ほぼ040度に向首したとき、約3ノットの速力で、右舷船首が第4防波堤南堤防に衝突した。
 当時、天候は曇で風力1の北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期にあたり、視界は良好であった。
 衝突後A受審人は、自動ビルジポンプが始動したので浸水したことを知り、同ポンプにより排水しながら目的地に向け低速力で航行したものの、次第に浸水量が増加するので神戸海上保安部に通報し、22時30分中灯台東方約700メートルの地点でともみが沈没し、その後懐中電灯とフェンダーを持ち、救命胴衣を着用して漂流中、23時ごろ付近を通りかかったプレジャーボートに救助された。
 衝突の結果、右舷船首部に破口を生じて沈没したが、のちサルベージ船によって引き揚げられた。 

(原因)
 本件衝突は、夜間、神戸港第2区において、第4防波堤切り通し水路を通航する際、同水路の位置の確認が不十分で、同防波堤南堤防に向首したまま進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、神戸港第2区において、第4防波堤切り通し水路を通航する際、摩耶ふ頭の照明が眩しく、いちべつして同水路の位置を示す中灯台や標識灯を認めず、同水路の位置が分らない場合、一時停船して注意深く中灯台を探すとか、レーダーを使用するなどして同水路の位置を十分に確認すべき注意義務があった。しかし、同人は、灯台が見えなくても左右の岸壁や摩耶ふ頭で見当をつければ大丈夫と思い、一時停船して注意深く中灯台を探すとか、レーダーを使用するなどして切り通し水路の位置を十分に確認しなかった職務上の過失により、同水路南側の第4防波堤南堤防に向け進行して衝突を招き、右舷船首部に破口を生じて沈没させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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