日本財団 図書館




 海難審判庁採決録 >  2003年度(平成15年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成15年函審第42号
件名

漁船第58魁漁丸漁船勇幸丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年11月28日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(古川隆一、黒岩 貢、野村昌志)

理事官
千手末年

受審人
A 職名:第58魁漁丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士
B 職名:勇幸丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士 

損害
魁漁丸・・・左舷船首部外板に破口を伴う凹損等
勇幸丸・・・右舷船尾ブルワークに亀裂を伴う圧損及び集魚灯ステイに曲損等

原因
勇幸丸・・・見張り不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
魁漁丸・・・見張り不十分、警告信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、勇幸丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切る第58魁漁丸の進路を避けなかったことによって発生したが、第58魁漁丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Bを戒告する。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年9月25日16時30分
 北海道厚岸港南東方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第58魁漁丸 漁船勇幸丸
総トン数 9.96トン 9.7トン
全長 18.30メートル 18.55メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 496キロワット 463キロワット

3 事実の経過
 第58魁漁丸(以下「魁漁丸」という。)は、さんま棒受網漁業に従事する鋼製漁船で、A受審人(昭和55年10月一級小型船舶操縦士免許取得)ほか5人が乗り組み、操業の目的で、船首1.0メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成14年9月25日12時00分北海道釧路港を発し、厚岸港南東方沖合の漁場に向かった。
 A受審人は、単独で船橋当直に就いて東行し、15時15分厚岸灯台から229度(真方位、以下同じ。)4.9海里の地点に達したとき、針路を118度に定め、機関を全速力前進にかけ、7.5ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、自動操舵として進行した。
 定針後A受審人は、6海里レンジとしたレーダーを見ながら続航したところ、他船をほとんど認めず、15時50分正船首少し左方に認めたレーダー映像も右方に替わっていくのでレーダーから目を離し、操舵室右舷側で後方を向き床に座ってテーブルに置いた夕食をとり始めた。
 16時11分少し前A受審人は、厚岸灯台から156度7.4海里の地点に達したとき、左舷船首51度1.0海里に勇幸丸を視認できる状況で、その後前路を右方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近したが、前路に他船はいないものと思い、見張りを十分に行わなかったので、このことに気付かず、警告信号を行うことも、更に接近するに及んで右転するなどの衝突を避けるための協力動作をとることもなく続航した。
 16時30分わずか前A受審人は、夕食を終え前方を見ると船首至近に勇幸丸が迫るのを認め、驚いて機関を中立にしたが効なく、16時30分厚岸灯台から146.5度9.5海里の地点において、魁漁丸は、原針路、原速力のまま、その左舷船首部が勇幸丸の右舷船尾部に後方から24度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力4の東風が吹き、潮候は高潮時であった。
 また、勇幸丸は、さんま棒受網漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人(昭和50年12月一級小型船舶操縦士(5トン未満限定)免許取得)ほか6人が乗り組み、操業の目的で、船首0.6メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、同日13時40分厚岸港を発し、同港南東方沖合の漁場に向かった。
 ところで、B受審人は、自らの操縦免許が5トン未満に限定されているのを知っていたが、乗組員に一級小型船舶操縦士の免許取得者がいることから問題はないとして船長の職務を執っていた。
 B受審人は、単独で船橋当直にあたり、14時55分厚岸灯台から238度0.8海里の地点に達したとき、針路を142度に定め、機関を半速力前進にかけ、6.0ノットの速力で、自動操舵により進行した。
 定針後B受審人は、上部操舵室のいすに腰をかけ、レーダーを6海里レンジとして作動していたものの、他船をほとんど認めなかったことに加え魚群が回遊する海域に入ったことから、専らソナーを作動して魚群探索をしながら続航した。
 16時11分少し前B受審人は、厚岸灯台から148度7.6海里の地点に達したとき、右舷船尾75度1.0海里に魁漁丸を視認できる状況で、その後前路を左方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近したが、周囲に他船はいないものと思い、魚群探索に気を取られ、見張りを十分に行わなかったので、このことに気付かず、右転するなどして魁漁丸の進路を避けることなく続航中、勇幸丸は、原針路、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、魁漁丸は、左舷船首部外板に破口を伴う凹損等を生じ、勇幸丸は、右舷船尾ブルワークに亀裂を伴う圧損及び集魚灯ステイに曲損等を生じたが、のち両船とも修理された。 

(原因)
 本件衝突は、北海道厚岸港南東方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれのある態勢で接近した際、南東進する勇幸丸が見張り不十分で、前路を左方に横切る魁漁丸の進路を避けなかったことによって発生したが、東進する魁漁丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 
(受審人の所為)
 B受審人は、北海道厚岸港南東方沖合において、漁場に向け南東進する場合、前路を左方に横切る魁漁丸を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、周囲に他船はいないものと思い、魚群探索に気を取られ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、魁漁丸と衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、同船の進路を避けないまま進行して衝突を招き、魁漁丸の左舷船首部外板に破口を伴う凹損等を、勇幸丸の右舷船尾ブルワークに亀裂を伴う圧損及び集魚灯ステイに曲損等を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 A受審人は、北海道厚岸港南東方沖合において、漁場に向け東進する場合、前路を右方に横切る勇幸丸を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、前路に他船はいないものと思い、後方を向いて夕食をとり、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、勇幸丸が衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、警告信号を行うことも衝突を避けるための協力動作をとることもなく進行して勇幸丸との衝突を招き、前示のとおり両船に損傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって、主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:17KB)





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION