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平成15年那審第33号
件名

漁船みちぶ丸漁船みつえ丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年10月10日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(坂爪 靖)

副理事官
神南逸馬

受審人
A 職名:みちぶ丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士
B 職名:みつえ丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士 

損害
みちぶ丸・・・右舷船首部揚錨用ローラー破損、船首外板に擦過傷
みつえ丸・・・左舷中央部外板に破口等

原因
みちぶ丸・・・居眠り運航防止措置不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
みつえ丸・・・見張り不十分、警告信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、みちぶ丸が、居眠り運航の防止装置が不十分で、漂泊中のみつえ丸を避けなかったことによって発生したが、みつえ丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年3月16日23時37分
 沖縄県辺戸岬東方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船みちぶ丸 漁船みつえ丸
総トン数 9.1トン 4.49トン
登録長 13.15メートル 9.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 198キロワット 220キロワット

3 事実の経過
 みちぶ丸は、船体後部に操舵室を設けた、そでいか旗流し漁業に従事するFRP製漁船で、昭和56年1月に一級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.4メートル船尾1.4メートルの喫水をもって、平成15年3月11日21時00分沖縄県安田漁港を発し、同漁港東北東方約50海里の漁場に向かった。
 同月12日04時00分A受審人は、漁場に至って操業を開始し、21時00分ごろその日の漁を終え、潮上りをしながら漁具の整理や補修などを行ったのち、24時00分ごろ機関を停止して漂泊し、翌日04時00分ごろまで休息した。
 その後、A受審人は、毎朝04時00分ごろから操業を開始し、1日につき4時間ほど休息をとるだけの操業を繰り返し、そでいか約1.3トンを獲たところで漁を終え、同月16日20時32分安田漁港東北東方沖合の、北緯27度00分東経129度12分の地点を発進して帰途についた。
 発進したとき、A受審人は、針路を250度(真方位、以下同じ。)に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて6.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、航行中の動力船の灯火を表示して進行した。
 A受審人は、操舵室左舷側のいすに腰掛けて操舵操船に当たっていたところ、22時37分ごろ沖縄島北端辺戸岬灯台から084.5度39.3海里の地点に達したころ、5日間の連続操業による疲れと睡眠不足から眠気を催すようになったが、いすに腰掛けた姿勢より操舵室の床に座った方が疲れがとれるので、少しの間ならそこに座って休息しても大丈夫と思い、いすから立ち上がって身体を動かしたり、外気に当たったりするなどの居眠り運航の防止措置をとらないで、同床に座って続航するうち、間もなく居眠りに陥った。
 23時32分半A受審人は、正船首850メートルのところに、漂泊しているみつえ丸の黄色回転灯と白灯を視認でき、その後同船と衝突のおそれがある態勢で接近する状況となったが、居眠りしていてこのことに気付かず、同船を避けないまま進行し、23時37分辺戸岬灯台から087度33.5海里の地点において、みちぶ丸は、原針路、原速力のまま、その船首がみつえ丸の左舷中央部に前方から65度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の南西風が吹き、視界は良好であった。
 また、みつえ丸は、船体後部に操舵室を設け、汽笛を装備する、そでいか旗流し漁業に従事するFRP製漁船で、平成11年7月に一級小型船舶操縦士免許を取得したB受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.4メートル船尾1.6メートルの喫水をもって、同15年3月15日02時00分鹿児島県与論島茶花漁港を発し、辺戸岬東方約33海里の漁場に向かった。
 05時30分B受審人は、漁場に至り、3日間の予定で操業を開始し、19時00分ごろその日の漁を終え、漁具の整理や補修などを行ったのち、21時00分ごろ機関を停止して翌日早朝まで休息した。そして、同月16日04時00分ごろ起きて操業の準備を行い、付近を移動して05時00分ごろから19時00分ごろまで操業を行い、漁具の整理などを済ませたのち、21時30分衝突地点付近で、船首を南東に向けて機関を停止し、航海灯を消灯し、操舵室上部のマスト頂部に黄色回転灯、その下方に白色全周灯各1個をそれぞれ点灯して、操業を開始する翌日早朝まで休息するつもりで漂泊を始めた。
 ところで、B受審人は、一般船舶が通常航行する水域に漂泊していたが、漂泊を始めたころ付近に他船を見かけなかったうえ、自船は黄色回転灯と白色全周灯を点灯していて周囲からよく見えるから、接近する他船が漂泊中の自船を避けてくれるものと思い、他船が接近すれば警報ブザーが鳴る、レーダーの見張り警報装置を作動するなどして周囲の見張りを十分に行わないで、操舵室の寝床で横になって休息した。
 23時32分半B受審人は、船首が135度を向いた状態で漂泊していたとき、左舷船首65度850メートルのところに、自船の方に向かってくるみちぶ丸の白、紅、緑3灯を視認でき、その後同船が衝突のおそれがある態勢で接近する状況となったが、依然見張り不十分のまま、仮眠をとっていて、自船を避けずに接近するみちぶ丸に気付かず、警告信号を行うことも、機関を使用して移動するなどの衝突を避けるための措置もとらないまま漂泊を続け、みつえ丸は、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、みちぶ丸は、右舷船首部揚錨用ローラーを破損したほか、船首外板に擦過傷を生じ、みつえ丸は、左舷中央部外板に破口等を生じたが、のちいずれも修理された。 

(原因)
 本件衝突は、夜間、沖縄県辺戸岬東方沖合において、漁場から帰航中のみちぶ丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路で漂泊中のみつえ丸を避けなかったことによって発生したが、みつえ丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、沖縄県辺戸岬東方沖合において、1人で操船に当たり、沖縄県安田漁港に向けて西行中、連続操業による疲れと睡眠不足から眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、いすから立ち上がって身体を動かしたり、外気に当たったりするなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、いすに腰掛けた姿勢より操舵室の床に座った方が疲れがとれるので、少しの間ならそこに座って休息しても大丈夫と思い、同床に座っているうち、居眠りに陥り、黄色回転灯と白色全周灯を掲げて前路で漂泊中のみつえ丸を避けないまま進行して同船との衝突を招き、みちぶ丸の右舷船首部揚錨用ローラーを破損させたほか、船首外板に擦過傷を、みつえ丸の左舷中央部外板に破口等をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、夜間、沖縄県辺戸岬東方沖合において、休息のため、操業を開始する翌日早朝まで漂泊する場合、一般船舶が通常航行する水域に漂泊しているのであるから、接近する他船を見落とすことのないよう、他船が接近すれば警報ブザーが鳴る、レーダーの見張り警報装置を作動するなどして周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、漂泊を始めたころ付近に他船を見かけなかったうえ、自船は黄色回転灯と白色全周灯を点灯していて周囲からよく見えるから、接近する他船が漂泊中の自船を避けてくれるものと思い、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、操舵室の寝床で仮眠していて、みちぶ丸の接近に気付かず、警告信号を行うことも、機関を使用して移動するなどの衝突を避けるための措置もとらないまま漂泊を続けて同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


参考図
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