(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年8月31日11時46分
東京湾南部
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船よしの |
遊漁船ふじ丸 |
総トン数 |
199トン |
6.2トン |
全長 |
56.98メートル |
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登録長 |
52.00メートル |
11.53メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
出力 |
735キロワット |
235キロワット |
3 事実の経過
よしのは、船尾船橋型の鋼製貨物船で、船長M及びA受審人ほか1人が乗り組み、橋梁材100トンを載せ、船首2.0メートル船尾3.2メートルの喫水をもって、平成14年8月30日06時50分和歌山県由良港を発し、千葉港に向かった。
翌31日11時20分A受審人は、M船長から船橋当直を引継ぎ1人で同当直に就き、レーダーを3海里レンジにして浦賀水道航路南口に向け北上中、同時43分金谷港第1防波堤灯台(以下「金谷灯台」という。)から275度(真方位、以下同じ。)2.7海里の地点に達したとき、針路を027度に定め、機関を全速力前進にかけ、11.3ノットの対地速力(以下、「速力」という。)で、自動操舵により進行した。
11時43分半A受審人は、金谷灯台から277度2.65海里の地点で、左舷船首55度0.6海里にレーダー映像を認めてすぐ、肉眼により同映像がふじ丸に相当することを確かめ、間もなく東進中の同船の方位が変わらないので、同船が前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることを知ったが、ふじ丸が避航するものと思い、速やかに警告信号を行わず、やがて同船が間近に接近しても大幅に右転するなど、衝突を避けるための協力動作をとらず、長音1回を吹鳴しレーダーレンジを1.5海里に切り替えて続航した。
こうして、A受審人がふじ丸の避航動作を期待しながら再度の長音1回を吹鳴して進行中、11時45分少し過ぎ同船が近距離に迫って、ようやく不安を覚え、機関を中立とし、同時46分少し前同船が至近となって操舵を手動に切り替え右舵をとり、機関を後進にかけたが間に合わず、11時46分金谷灯台から286度2.5海里の地点において、よしのは、右転中の船首が61度に向いたとき約3ノットの速力で、その左舷船首部が、ふじ丸の右舷船首部に、後方から45度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力2の南風が吹き、潮候は下げ潮の中央期にあたり、視界は良好であった。
また、ふじ丸は、船体中央のやや後方に操舵室を有するFRP製の遊漁船で、B受審人(平成15年1月17日一級小型船舶操縦士免状を取得)が1人で乗り組み、釣り客8人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.30メートル船尾1.75メートルの喫水をもって、同日06時30分千葉県金谷漁港を発し、剱埼灯台北東方沖に至って釣りを行い、11時15分帰途につき金谷漁港に向け東進した。
B受審人は、11時40分金谷灯台から286度3.7海里の地点に達したとき、針路を106度に定め、機関を12.0ノットの全速力前進にかけ、手動操舵により進行中、同時43分半同灯台から286度3.0海里の地点で、右舷船首46度0.6海里に、よしのを視認できる状況であったが、この時間帯に浦賀水道航路南口を出入する船舶はいないものと思い、前方を向いたまま、右舷方の見張りを十分に行わなかったので、同船を見落としたまま続航した。
こうして、B受審人は、よしのが前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、速やかに右転するなど、同船の進路を避けずに進行中、ふじ丸は、原針路原速力のまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、よしのは左舷船首部外板に軽微なペイント剥離(はくり)を生じ、ふじ丸は右舷船首ブルワークに損傷を生じた。
(原因)
本件衝突は、東京湾南部において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で航行中、東進中のふじ丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切るよしのの進路を避けなかったことによって発生したが、北上中のよしのが、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
B受審人は、東京湾南部を東進中、航海当直に当たる場合、北上中のよしのを見落とさないよう、右舷方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、この時間帯に浦賀水道航路南口を出入する船舶はいないものと思い、前方を向いたまま、右舷方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、よしのが前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、速やかに右転するなど、同船の進路を避けずに進行して衝突を招き、よしのの左舷船首部外板に軽微なペイント剥離を、ふじ丸の右舷船首ブルワークに損傷をそれぞれ生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人は、東京湾南部を北上中、航海当直に当たり、左舷船首方にふじ丸を認め、同船が前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることを知った場合、同船が間近に接近したとき速やかに右転するなど、衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、ふじ丸が避航するものと思い、衝突を避けるための協力動作をとらなかった職務上の過失により、同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
参考図