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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 施設等損傷事件一覧 >  事件





平成15年神審第32号
件名

貨物船第十八三社丸灯浮標損傷事件(簡易)

事件区分
施設等損傷事件
言渡年月日
平成15年9月12日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(田邉行夫)

副理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:第十八三社丸船長 海技免状:二級海技士(航海)(履歴限定)

損害
三社丸・・・・・損傷ない
10号灯浮標・・・太陽電池モジュール等に損傷

原因
見張り不十分

裁決主文

 本件灯浮標損傷は、見張りが不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年1月21日02時55分
 播磨灘北東部
 
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第十八三社丸
総トン数 198.14トン
登録長 45.36メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 441キロワット

3 事実の経過
 第十八三社丸(以下「三社丸」という。)は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人が弟の機関長と2人で乗り組み、空倉のまま船首0.40メートル船尾2.60メートルの喫水をもって、平成15年1月20日17時30分尾道糸崎港の造船所を発し、大阪港に向かった。
 三社丸は、翌21日02時01分播磨灘の上島灯台から180度(真方位、以下同じ。)1.1海里の地点で、針路を108度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で自動操舵によって進行した。
 02時49分A受審人は、上島灯台から120度4.8海里の地点にあたる、播磨灘北航路第10号灯浮標(以下「10号灯浮標」という。)の手前1海里で、前直の機関長と船橋当直を交替したとき、周囲を一瞥して同灯浮標の灯火を認めなかったことから、操舵室後方の海図台のところでコーヒーを入れ始めた。
 A受審人は、02時53分上島灯台から119度5.5海里の地点に達したとき、正船首620メートルに10号灯浮標の灯火を視認できる状況であったが、コーヒーを入れていて前路の見張りを十分に行っていなかったので、同灯浮標に気付かず、右転するなど同灯浮標を避ける針路にしないまま続航した。
 02時55分わずか前コーヒーを入れ終わったA受審人は、正船首至近に接近した10号灯浮標の灯火を視認して、急ぎ操舵を手動に切り替えて左舵一杯、機関を中立としたものの効なく、02時55分三社丸は、上島灯台から118度5.8海里の地点において、その船首部が、10号灯浮標に原針路、原速力のまま衝突した。
 当時、天候は晴で風力3の北東風が吹き、視界は良好であった。
 衝突の結果、三社丸に損傷はなかったが、10号灯浮標の太陽電池モジュール等に損傷を生じた。

(原因)
 本件灯浮標損傷は、夜間、播磨灘北航路を東行中、見張りが不十分で、10号灯浮標に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、播磨灘北航路を東行する場合、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、操舵室後方でコーヒーを入れていて、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、10号灯浮標に向首していることに気付かずに進行して同灯浮標に衝突し、10号灯浮標の太陽電池モジュール等に損傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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