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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 運航阻害事件一覧 >  事件





平成14年那審第52号
件名

漁船徳丸運航阻害事件(簡易)

事件区分
運航阻害事件
言渡年月日
平成15年8月28日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(上原 直)

理事官
濱本 宏

受審人
A 職名:徳丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
蓄電池の過放電、運航不能

原因
電気設備(蓄電池の放電)の配慮不十分

裁決主文

 本件運航阻害は、蓄電池の放電に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年4月22日22時00分
 沖縄県伊良部島南方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船徳丸
総トン数 1.63トン
登録長 6.22メートル
機関の種類 4サイクル3シリンダ・ディーゼル機関
出力 7キロワット

3 事実の経過
 徳丸は、昭和55年9月に進水した刺網及び採介藻漁業に従事するFRP製漁船で、主機として、ヤンマーディーゼル株式会社製の3HMZ型と呼称するディーゼル機関の船内外機を装備し、同機を始動用電動機で始動するようになっていた。
 蓄電池は、直流電圧12ボルト容量130アンペア時のものが1個あり予備の蓄電池がなく、主機によるベルト駆動の発電機によって充電され、主機始動用電動機、船内照明、航海灯及び計器盤に給電し、そして、蓄電池は、平成13年5月に新替されていた。
 徳丸は、沖縄県久松漁港を基地にして、一本釣りまたは採介藻漁業を行っていて、一本釣り漁業の場合、北風だと片道1時間の伊良部島南方の通称ジーミソネで、南風だと片道1時間30分の伊良部島北方の八重干瀬で、夕方出港して朝の競りに間に合わすように帰港する、いわゆる日帰り操業を天候が許す限り繰り返しており、主機の開放点検を修理工場で2年毎に、蓄電池の蒸留水の補充及び主機直結充電用発電機のベルト点検をそれぞれ定期的に行っていた。
 A受審人は、一級小型船舶操縦士の免許を昭和56年9月24日に取得し、一本釣り及び採介藻漁業を行い、平成3年に中古の本船を購入後も同漁業を続けながら、主機の運転管理に従事していたもので、漁場への往復航に2時間から3時間かけて運転して蓄電池に充電していた。
 ところで、A受審人は、何回か短時間の主機使用で漁場移動を行うとともに、主機を停止して船内照明及び航海灯などを点灯して操業を行うことから、船内照明及び航海灯などの点灯に使用する放電量や、漁場移動時の主機始動用電動機に消費される多量の放電量で、漁場への往復航に充電していたと雖も、操業時、主機の運転を継続するなりして、蓄電池の放電に対しての配慮を行っていなかったので、放電量が多く次第に蓄電池が過放電状態に近付いていることに気付かなかった。
 こうして、徳丸は、A受審人が単独で乗り組み、一本釣り漁業の目的で、船首0.05メートル船尾0.25メートルの喫水をもって、平成14年4月22日17時30分僚船と共に久松漁港を発し、同日18時30分ジーミソネの漁場に至り、主機を停止して船内照明及び航海灯などを点灯して一本釣り漁業を始め、漁場を移動しながら釣りを続け、出港時や漁場移動時に正常に主機始動ができたので、問題はないものと思い、3度目の漁場移動時に主機の始動キーを回したところ、船内照明及び航海灯などに放電が続いていたことと主機始動用電動機に消費された多量の放電量とで、蓄電池が過放電状態になっており、同日22時00分タカツキャ瀬南東方灯標から真方位130度300メートルの地点において、主機が始動できず運航不能となった。
 当時、天候は晴で風力3の北東風が吹き、海上は穏やかであった。
 この結果、所属漁協から海上保安署に救助依頼が出され、翌朝、現場近くに錨泊している徳丸が発見され、僚船により久松漁港に曳航されて蓄電池を新替えした。

(原因)
 本件運航阻害は、夜間、沖縄県伊良部島南方漁場において、主機を停止して一本釣り漁業を行う際、蓄電池の放電に対する配慮が不十分で、船内照明及び航海灯などを点灯したまま釣りを行い、蓄電池が過放電して主機が始動不能となったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、沖縄県伊良部島南方漁場において、主機を停止して一本釣り漁業を行う場合、主機直結充電用発電機による蓄電池への充電を十分に行わずに、船内照明及び航海灯などを点灯したまま操業を行うと、蓄電池が過放電状態になり、主機が始動不能となるおそれがあったから、過放電させることのないよう主機の運転を継続するなどして、蓄電池の放電に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、短時間の主機使用で漁場を移動しながら、主機を停止して釣りを続け、出港時や漁場移動時に正常に主機始動ができたので、問題はないものと思い、主機の運転を継続するなど蓄電池の放電に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、蓄電池に過放電を生じさせ、主機が始動不能となる運航阻害を招き、僚船に曳航されるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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