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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 転覆事件一覧 >  事件





平成15年那審第2号
件名

遊漁船シーファイター転覆事件(簡易)

事件区分
転覆事件
言渡年月日
平成15年7月11日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(小須田 敏)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:シーファイター船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船外機に濡損、操縦席を大破し、のち廃船

原因
干出さんご礁域への進入を避けなかったこと

裁決主文

 本件転覆は、やや高いうねりが寄せる状況下、干出さんご礁域への進入を避けなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年7月8日11時00分
 沖縄県石垣島南岸沖 
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船シーファイター
全長 9.00メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 66キロワット

3 事実の経過
 シーファイターは、船外機1機を装備した最大とう載人員9人の和船型FRP製プレジャーボートで、平成8年2月に一級小型船舶操縦士免許を取得したA受審人が1人で乗り組み、釣り客3人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.2メートル船尾0.7メートルの喫水をもって、平成14年7月8日06時30分沖縄県石垣港内の係留地を発し、同県石垣島南東岸沖の釣り場に向かった。
 ところで、同日05時10分石垣島地方に波浪注意報が発表されており、09時の沿岸波浪図によれば、台湾の東方海上を北上する台風6号から伝播した波が、石垣島東岸沖合約15海里の地点で、波高2.2メートル、周期8秒、波長約100メートルのうねりとなって東南東方から寄せていた。
 このうねりは、長時間かけて伝播していることから、波高、周期及び波長がいずれも規則的な波となっていたものの、水深の浅い沿岸域に進入すると、海底摩擦などの影響により進行速度が遅くなるとともに波長が著しく短くなり、かつ、次第に波高が大きくなるため、干出さんご礁などの浅海域においては、傾斜が険しくなりかつ一段と隆起するおそれがあった。
 A受審人は、やや高いうねりが寄せる状況下、釣り客にも救命胴衣を着用させ、石垣島南東岸にある宮良湾などの釣り場を順次移動して釣りをしたのち、10時30分石垣島南岸沖に拡延する干出さんご礁域の周辺にあたる、石垣港南防波堤灯台から176度(真方位、以下同じ。)5,600メートルの水深約15メートルの地点に至り、その後船首を北方に向け、右舷正横やや後方から風とうねりを受ける態勢で、機関と舵を適宜使用してほぼその場に留まって釣りをしていたところ、同時50分ごろ釣り客の1人が大物のあじを釣り上げたことから、記念写真を撮るために機関を中立回転として漂泊を始めた。
 このとき、A受審人は、平成8年7月から石垣島周辺の沿岸水域を釣り場とする遊漁船業を営んでいた経験により、やや高いうねりが寄せる状況下などでは、干出さんご礁域で波が一段と隆起しかつその傾斜が険しくなることも、また、折からの風潮流により同域に向けて圧流されるおそれがあることも知っていたが、短時間ならば干出さんご礁域まで圧流されることはないものと思い、その後釣り上げた大物を撮影することなどに気をとられていて同域に著しく接近していることに気付かず、直ちに沖へ移動するなど、干出さんご礁域への進入を避けることなく漂泊を続けた。
 A受審人は、11時00分わずか前干出さんご礁域に進入していることにようやく気付くとともに、右舷正横やや後方至近に一段と隆起しかつ険しい傾斜となった波が迫っているのを認め、急いで左舵をとるとともに機関を前進にかけ、この波をかわそうとしたものの効なく、シーファイターは、11時00分石垣港南防波堤灯台から177度5,500メートルの地点において、船首を000度に向けたまま、その波に持ち上げられて左舷側に大傾斜し、復原力を喪失して転覆した。
 当時、天候は晴で風力3の東南東風が吹き、潮候は下げ潮の末期にあたり、付近には波高約3メートルの波があった。
 転覆の結果、シーファイターは、船外機に濡損を生じるとともに操縦席を大破し、その後廃船処理された。
 一方、A受審人及び釣り客は、海中に投げ出され、転覆したシーファイターの船底に掴まっていたところ、付近で操業していた漁船に救助された。

(原因)
 本件転覆は、沖縄県石垣島南岸沖において、やや高いうねりが寄せる状況下、干出さんご礁域の周辺で漂泊をする際、同域への進入を避けなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、沖縄県石垣島南岸沖において、やや高いうねりが寄せる状況下、干出さんご礁域の周辺で漂泊をする場合、同域では波が一段と隆起しかつその傾斜が険しくなることも、また、折からの風潮流により干出さんご礁域に向けて圧流されるおそれがあることも知っていたのであるから、同域への進入を避けるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、短時間ならば干出さんご礁域まで圧流されることはないものと思い、釣り上げた大物を撮影することなどに気をとられていて同域に著しく接近していることに気付かず、直ちに沖へ移動するなどして干出さんご礁域への進入を避けなかった職務上の過失により、同域において、一段と隆起しかつ険しい傾斜となった波に持ち上げられて左舷側に大傾斜し、復原力を喪失して転覆を招き、船外機に濡損を生じさせるとともに操縦席を大破させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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