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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成15年那審第13号
件名

漁船第一慶豊丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年9月9日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(小須田 敏)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:第一慶豊丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底外板に亀裂、シューピース及び推進器翼に曲損

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年10月18日03時40分
 沖縄県那覇港内
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第一慶豊丸
総トン数 2.7トン
登録長 8.75メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 110キロワット

3 事実の経過
 第一慶豊丸は、船体中央部船尾寄りに操舵室を設け、延縄(はえなわ)漁業などに従事するFRP製漁船で、昭和50年4月に一級小型船舶操縦士の免許を取得したA受審人ほか甲板員1人が乗り組み、いか引き縄漁の目的で、船首0.6メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、平成14年10月17日17時30分係留地である沖縄県那覇港新港ふ頭地区北側の小船溜りを発し、同県慶伊瀬島周辺の漁場に向かった。
 A受審人は、予定の漁場に至って操業を始めたものの、芳しい漁獲を得ることができなかったことから、新港ふ頭地区の北方に築造されている内防波堤(北)(以下「内防波堤」という。)沖から沖縄県浦添市空寿埼沖にかけての水域で操業することとした。
 ところで、A受審人は、前示水域で操業するときには、20メートル等深線を目安に、内防波堤の中央部付近から陸岸に沿って北東方に拡延する干出さんご礁域に沿って往復するため、平素から係留地に近い那覇港浦添北内防波堤灯台(以下「北内防波堤灯台」という。)の北方約800メートルの地点に戻ったところで、操業を終えるようにしており、そこからほぼ南方に向けて針路をとり、内防波堤のほぼ西端部にあって新港ふ頭地区北側の港口を示す同灯台を目標に帰航していた。
 A受審人は、22時20分内防波堤沖に戻り、そこから空寿埼沖に向けて1.8ノットの対地速力(以下「速力」という。)で引き縄漁を再開し、翌18日02時40分ごろ再度同埼沖で反転したのち、内防波堤沖に向けて南西進中、03時20分ごろ市場のせり開始時刻が迫っていることに気付き、急いで操業を切り上げて係留地に戻ることとし、揚縄作業に取り掛かった。
 A受審人は、03時26分半揚縄作業を終えたとき、北内防波堤灯台が目指す針路方向に見当たらなかったことから、一抹(いちまつ)の不安を感じたが、いつもの操業終了地点付近に戻っているものと思い、操舵室に備えていたGPSプロッターを見るなどして船位の確認を十分に行わなかったので、同地点から北東方約1海里の港界付近にあたる、同灯台から025度(真方位、以下同じ。)2,230メートルの地点に位置していることに気付かないまま、港口付近に向かうつもりで、針路をほぼ平素の帰航針路となる174度に定めて発進し、機関を微速力前進にかけて3.5ノットの速力で手動操舵により進行した。
 その後A受審人は、遠隔操縦装置を携えて操舵室前面付近の右舷側通路に立って操船に当たり、不安を感じながらも間もなく船首方に北内防波堤灯台を視認することができるものと考え、依然として船位の確認を十分に行わなかったので、内防波堤の中央部付近から陸岸に沿って北東方に拡延する干出さんご礁域に向首進行していることにも気付かなかった。
 こうしてA受審人は、北内防波堤灯台を視認したところで増速することとして続航中、03時40分わずか前操業の後始末を終えた甲板員が前路を見渡し、新港ふ頭地区北側の港口付近とは異なるところに向けて進行していることに気付き、あわてて同受審人に注意を促したものの及ばず、第一慶豊丸は、03時40分北内防波堤灯台から063度1,240メートルの地点において、原針路、原速力のまま、前示の干出さんご礁域に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力3の東南東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、船底外板に亀裂、シューピース及び推進器翼に曲損を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、沖縄県那覇港の港界付近において、操業を終えて同港内の係留地に向けて発進する際、船位の確認が不十分で、干出さんご礁域に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、沖縄県那覇港の港界付近において、操業を終えて同港内の係留地に向けて発進する場合、内防波堤のほぼ西端部にあって新港ふ頭地区北側の港口を示す北内防波堤灯台が、目指す針路方向に見当たらなかったのであるから、GPSプロッターを見るなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、いつもの操業終了地点付近に戻っているものと思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、同地点から北東方約1海里の地点にいることに気付かないまま、港口付近に向かうつもりで、平素の帰航針路に定めて発進し、内防波堤の中央部付近から陸岸に沿って北東方に拡延する干出さんご礁域に向首進行して乗揚を招き、船底外板に亀裂、シューピース及び推進器翼に曲損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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