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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成15年横審第63号
件名

ケミカルタンカー千祥乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年9月30日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(大本直宏)

副理事官
入船のぞみ

受審人
A 職名:千祥船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)

損害
船底部に凹損を伴う擦過傷

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年8月13日19時55分
 桃取水道東部
 
2 船舶の要目
船種船名 ケミカルタンカー千祥
総トン数 498トン
機関の種類 電気推進装置(2機)
出力 730キロワット

3 事実の経過
 千祥は、2機2軸を有する船尾船橋型の鋼製液体化学薬品ばら積運搬船で、A受審人ほか4人が乗り組み、デカノール等450トンを載せ、船首2.75メートル船尾3.75メートルの喫水をもって、平成14年8月13日16時30分名古屋港を発し、大阪港に向かった。
 A受審人は、1人で船橋当直に当たり、伊勢湾を南下して桃取水道に至り、19時47分少し前神前灯台から092度610メートルの地点に達したとき、針路を080度に定め、機関を全速力前進にかけ、11.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 A受審人は、三重県日向島北西方沖合に差し掛かったころ、同島東方に北上船を認め、同船が日向島の狸ノ鼻に接航するものと推察し、右舷対右舷の北上船との航過に備え、船位を少し左舷寄りにする目的で、19時52分半、島ケ埼灯台から280度1,000メートルの地点において、針路を077度に転じて続航したが、その後同船の前路を航過して右転すれば大丈夫と思い、同県弁天島の西方1ないし2ケーブルを危険海域と認識していたのであるから、同海域までの距離が分かるよう、レーダーを0.75海里の最小レンジとし弁天島までの距離を測定するなど、船位の確認を十分に行うことなく進行した。
 こうして、A受審人は、北上船が思いのほか狸ノ鼻から離れて北進していて、同船との接近模様だけに気を取られ、危険海域への接近模様に気付かず、ようやく北上船の前路を通過して右舵一杯をとって間もなく、19時55分島ケ埼灯台から329度400メートルの地点にあたる弁天島西方至近の暗岩に、右転中の船首が160度に向いたとき、ほぼ原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力2の西南西風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、視界は良好であった。
 乗揚の結果、船底部に凹損を伴う擦過傷を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、桃取水道を東航中、船位の確認が不十分で、三重県弁天島西方至近の暗岩に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、1人で船橋当直に当たり、桃取水道を東航中、三重県日向島東方に北上船を認め、同船が同島の狸ノ鼻に接航するものと推察し、針路を少し左に転じて続航する場合、同県弁天島の西方1ないし2ケーブルを危険海域と認識していたのであるから、同海域までの距離が分かるよう、レーダーを0.75海里の最小レンジとし弁天島までの距離を測定するなど、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、同船の前路を航過して右転すれば大丈夫と思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、危険海域への接近模様に気付かず、弁天島西方至近の暗岩に向首進行して同暗岩への乗揚げを招き、船底部に凹損を伴う損傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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