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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成15年横審第49号
件名

貨物船幸寿丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年8月28日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(大本直宏)

副理事官
入船のぞみ

受審人
A 職名:幸寿丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(履歴限定)

損害
右舷船尾船底部に亀裂

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年7月24日13時00分
 三重県鳥羽港
 
2 船舶の要目
船種船名 貨物船幸寿丸
総トン数 167トン
登録長 30.67メートル
8.60メートル
深さ 4.20メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 220キロワット

3 事実の経過
 幸寿丸は、船尾船橋型の鋼製砂利運搬船で、A受審人ほか1人が乗り組み、砕石400トンを載せ、船首2.90メートル船尾3.90メートルの喫水をもって、平成14年7月24日12時30分三重県鳥羽市菅島の鶴田石材株式会社菅島工場専用岸壁を発し、鳥羽港に向った。
 ところで、A受審人は、加布良古水道及び鳥羽港付近海域の航行経験が豊富で、誓願島南方至近には浅所があることも、同付近では大潮の上げ潮のとき、北西流が2ノット以上に強まることがあることも知っており、夜間に航行することはないので、同島南方を西進するときの船首目標として、小学校のグラウンドを使用し、船位の左右偏位を修正することにしていた。
 A受審人は、1人で船橋当直に当たり、西方に向首して加布良古水道を横断中、12時55分誓願島灯標から103度(真方位、以下同じ。)365メートルの地点において、針路を260度に定め、機関を対水速力2.0ノットの極微速力前進にかけ、折から0.5ノットの北西流に乗じ、9度右方に圧流されながら、2.4ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
 そのころ、A受審人は、前方から来航する小型艇を認めていて、同艇の動静のみに気を取られ、低速力のとき潮流の影響を大きく受けるから、北方への圧流模様が分かるよう、いつものように船首目標を基準に、船位の確認を十分に行うことなく、右方に9度圧流されながら浅所に向っていることに気付かなかった。
 こうして、A受審人は、ふと右方を向いたとき、ようやく誓願島に異常接近していることを知り、左舵一杯として間もなく、13時00分誓願島灯標から187度90メートルの地点において、原針路原速力のまま、同島南方至近の浅所に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力3の東北東風が吹き、潮候は上げ潮の初期で、付近には0.5ノットの北西流があった。
 乗揚の結果、右舷船尾船底部に亀裂を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、三重県加布良古水道を西方に向首して横断中、船位の確認が不十分で、誓願島南方至近の浅所に向け、圧流されたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、1人で船橋当直に当たり、三重県加布良古水道を西方に向首して横断する場合、低速力のとき潮流の影響を大きく受けるから、北方への圧流模様が分かるよう、いつものように船首目標を基準に、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、前方から来航する小型艇の動静のみに気を取られ、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、右方に圧流されながら、浅所に向っていることに気付かずに進行し、同浅所への乗揚を招き、右舷船尾船底部に亀裂を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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