日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成15年函審第27号
件名

漁船第五宝祐丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年8月22日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(古川隆一)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:第五宝祐丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
キールに破損及び船底外板に擦過傷等

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年5月29日02時35分
 北海道知床岬南南東方沿岸
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第五宝祐丸
総トン数 7.9トン
登録長 13.48メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120

3 事実の経過
 第五宝祐丸(以下「宝祐丸」という。)は、ほっけ刺網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人(昭和54年8月一級小型船舶操縦士免許取得)ほか4人が乗り組み、操業の目的で、船首0.3メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、平成14年5月29日01時45分北海道相泊漁港を発し、知床岬南東方の漁場に向かった。
 A受審人は、乗組員を船員室に待機させ、単独で船橋当直に就いて北上を続け、知床岬南南東方の烏帽子岩沖付近から投網することにし、02時20分少し過ぎ知床岬灯台から147度(真方位、以下同じ。)4.9海里の地点に達したとき、針路を烏帽子岩に向く326度に定め、機関を全速力前進にかけて13.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、自動操舵により進行した。
 定針後、A受審人は、操舵室の暖房を入れ、スポーツウェアを重ね着した暖かい服装で、主機遠隔操作盤にほおづえをついた姿勢で見張りに当たっていたところ、海上が穏やかなこともあり、眠気を催したが、間もなく投網地点に到着するので、それまで眠気を我慢できるものと思い、待機している乗組員を見張りに就かせて2人当直とするなど、居眠り運航の防止措置をとることなく続航するうち、いつしか居眠りに陥った。
 こうして宝祐丸は、居眠り運航となり、烏帽子岩に向首して進行中、02時35分知床岬灯台から148度1.7海里の岩礁に、原針路、原速力のまま、乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力1の南東風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、宝祐丸は、キールに破損及び船底外板に擦過傷等を生じたが、来援したクレーン船により離礁し、のち修理され、乗組員は僚船に救助された。

(原因)
 本件乗揚は、北海道相泊漁港から漁場に向け航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、知床岬南南東方の岩礁に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、北海道相泊漁港から知床岬南東方の漁場に向け、単独の船橋当直に就き自動操舵により航行中、眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、待機している乗組員を見張りに就かせて2人当直とするなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。ところが、同受審人は、間もなく投網地点に到着するので、それまで眠気を我慢できるものと思い、待機している乗組員を見張りに就かせて2人当直とするなど、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、知床岬南南東方の岩礁に向首したまま進行して乗揚を招き、宝祐丸のキールに破損及び船底外板に擦過傷等を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION