(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年8月26日02時55分
播磨灘北西部院下島
2 船舶の要目
船種船名 |
押船大福丸 |
はしけD-2705 |
総トン数 |
98トン |
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全長 |
27.60メートル |
70.00メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
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出力 |
551キロワット |
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3 事実の経過
大福丸は、鋼製押船兼引船で、A受審人ほか3人が乗り組み、船首2.20メートル船尾3.00メートルの喫水をもって、自船の船首に、山土4,300トンを積載して船首4.93メートル船尾5.03メートルの喫水となった、鋼製はしけD-2705の船尾をかん合して押船列とし、平成14年8月25日10時55分岡山県宇野港を発し、同港沖合で仮泊したのち、同日22時30分抜錨して神戸沖空港島埋立地に向かった。
A受審人は、単独で船橋当直にあたって香川県小豆島北方沖合を東行し、翌26日01時半ごろから船橋で当直にあたりながらビデオで映画を見始めた。
02時15分A受審人は、院下島灯台から245度(真方位、以下同じ。)4.5海里の地点に達したとき、機関を全速力前進にかけ、院下島の北方沖合200メートルばかりに向首する063度に針路を定め、折からの北東風と東方に流れる微弱な潮流を受け、6.6ノットの対地速力で、右方に1度圧流されながら自動操舵によって進行した。
A受審人は、院下島まで1海里に接近したとき、左転して同島の北方沖を航過する予定であった。
A受審人は、02時25分ごろから映画に見入っていて、船位の確認を行わなかったので、1度右方に圧流されて院下島に向首進行していることも、同時45分同島まで1海里に接近したことにも気付かないまま同じ針路で続航した。
02時54分半A受審人は、船首方に院下島の島影を視認し、機関を後進として左舵一杯としたものの及ばず、02時55分院下島灯台から274度220メートルの地点において、3.5ノットに減速したD-2705が、北東に向首して同島北岸に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力2の北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、微弱な東流があり、視界は良好であった。
乗揚の結果、大福丸には損傷がなく、D-2705の船首部に亀裂を伴う凹損を生じたが、積荷を瀬取りしたところ自力離礁し、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、夜間、播磨灘北西部を東行中、船位の確認が不十分で、院下島に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、播磨灘北西部を航行する場合、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、船橋当直に当たりながらビデオで映画に見入っていて、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、院下島に向首接近していることに気付かずに進行し、同島への乗揚を招き、D-2705の船首部に亀裂を伴う凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。