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平成15年広審第59号
件名

灯台見回り船たかひかり養殖施設衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年9月18日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(道前洋志、高橋昭雄、佐野映一)

理事官
村松雅史

受審人
A 職名:たかひかり船長 海技免許:二級海技士(航海)

損害
たかひかり・・右舷推進器軸曲損、両舷推進器翼曲損及び欠損
養殖施設・・・鋼製外枠に曲損

原因
たかひかり・・針路選定不適切

主文

 本件養殖施設衝突は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年3月8日02時05分
 高松港北方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 灯台見回り船たかひかり
総トン数 21トン
全長 17.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 411キロワット

3 事実の経過
 たかひかりは、高松海上保安部に所属する自動操舵装置を装備していない鋼製灯台見回り船で、A受審人ほか1人が乗り組み、灯台課職員2人を乗せ、船舶接触に伴う宇高東航路第3号灯浮標の損傷状況の調査に向かう目的で、船首0.83メートル船尾1.35メートルの喫水をもって、平成15年3月8日00時45分香川県高松港を発し、宇高東航路を通航して01時30分同灯浮標に至って調査を行い、これを終えて帰港することとした。
 ところで、A受審人は、見張りと操舵を兼ねて操船しなければならず、しかも、船橋前側中央部の手動操舵位置から、その左前方にある養殖施設などが入力されていないGPSプロッター映像を見ることができたものの、その右前方にあるレーダー映像を見ることができない状況であった。
 ところが、A受審人は、高松港までの針路の選定にあたり、航程を短縮しようと思い、宇高西航路を通航するなど目視によって無難に通航できる航路標識が敷設されている針路を選定することなく、夜間の通航経験はないものの、昼間の通航経験から魚などの養殖施設のある男木島西方から女木島東方を経て帰港することとした。
 こうして、01時50分A受審人は、宇高東航路第3号灯浮標を発して手動操舵に当たり、柏島南方で備讃瀬戸東航路を横断し、同時58分半男木漁港1号防波堤灯台から319度(真方位、以下同じ。)1,300メートルの地点で、針路を159度に定め、機関を全速力前進にかけて14.0ノットの対地速力で進行し、02時02分半同灯台から210度600メートルの地点に達して針路を122度に転じ、同時03分半同灯台から175度770メートルの地点で更に針路を175度に転じた。
 たかひかりは、02時04分には養殖施設まで430メートルばかりとなり、同施設に向首したまま続航し、02時05分男木漁港1号防波堤灯台から175度1,330メートルの地点で、原針路、原速力のまま養殖施設に衝突し、これに乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力3の西風が吹き、視界は良好であった。
 衝突の結果、右舷推進器軸曲損、両舷推進器翼曲損及び欠損並びに船尾船底に亀裂などを生じ、のち救援船により引き下ろされ、養殖施設の鋼製外枠に曲損などを生じたが、いずれも修理された。

(原因)
 本件養殖施設衝突は、夜間、宇高東航路第3号灯浮標の損傷調査を終えて高松港に帰港する際、針路の選定が不適切で、男木島西方を経て女木島東方に向かい、女木島東方沖合の養殖施設に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、宇高東航路第3号灯浮標の損傷調査を終え、単独で見張りと操舵を兼ねて操船に当たりながら高松港に帰港する場合、自動操舵が装備されておらず、操舵位置からはレーダー映像を見ることができなかったから、宇高西航路を通航するなど目視によって無難に通航できる航路標識が敷設された針路を選定すべき注意義務があった。しかるに、同人は、航程を短縮しようと思い、目視によって無難に通航できる航路標識が敷設された針路を選定しなかった職務上の過失により、夜間通航経験のない男木島西方を経て女木島東方に向かい、同島東方沖合の養殖施設に向首進行して同施設との衝突を招き、右舷推進器軸曲損、両舷推進器翼曲損及び欠損並びに船尾船底に亀裂などを、養殖施設の鋼製外枠に曲損などを生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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