(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年7月19日11時15分
沖縄県那覇港
2 船舶の要目
船種船名 |
遊漁船丸沖3号 |
総トン数 |
3.4トン |
登録長 |
9.83メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
143キロワット |
3 事実の経過
丸沖3号は、船体中央部に操舵室と客室を設けたFRP製遊漁船で、A受審人が1人で乗り組み、釣り客1人を乗せ、瀬渡しをする目的で、船首0.7メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、平成14年7月19日11時05分沖縄県那覇港新港ふ頭地区北側の係留地を発し、同港内の新港第1防波堤南端部付近に向かった。
ところで、A受審人は、平成4年頃に四級小型船舶操縦士免許を取得したのち、家業である瀬渡し業を手伝い、同10年から同業を専業とし、同12年12月に一級小型船舶操縦士免許を取得したもので、主に那覇港内の各防波堤への瀬渡しを行っていたところ、長期間にわたって定期的な休業日を設けることもないまま、毎日05時頃から18時半頃まで、係留地の近くに設置した受付事務所内で釣り客の応対をするとともに、丸沖3号で8ないしは10回の瀬渡しを繰り返していたことから、疲労が蓄積している状況となっていた。
A受審人は、離岸したのち、操舵室内の船尾側側壁に設けたいすに腰をかけて操船に当たり、11時09分半那覇港新港第1防波堤北灯台(以下「第1防波堤北灯台」という。)から098度(真方位、以下同じ。)2,080メートルの地点で、わずかな左舵をとり、ゆるやかに左転しながら内防波堤(北)と内防波堤(南)とによって形成された防波堤入口の中央付近に向けて進行した。
このころ、A受審人は、疲労の蓄積から眠気を覚えるようになったが、港内を航行していることから、居眠りに陥ることはないものと思い、立ち上がって操船に当たるなど、居眠り運航の防止措置を十分にとることなく続航した。
A受審人は、11時12分少し過ぎ第1防波堤北灯台から088度1,140メートルの地点に至ったとき、那覇港倭口第1号灯浮標(以下「倭口第1号灯浮標」という。)の東側近距離のところを航過するつもりで、針路を同灯浮標のわずか左側に向首する215度に定め、機関を半速力前進にかけて手動操舵により進行し、同時13分同灯台から098度1,010メートルの地点に達し、倭口付近から那覇水路入口付近にかけての港内を広く見渡せる状況となったとき、航行する他船を認めなかったことから、気が緩み、間もなく居眠りに陥った。
A受審人は、折からの風潮流により右方に2度圧流され、10.7ノットの対地速力となって倭口第1号灯浮標に向かう態勢で続航していたものの、居眠りをしていたため、このことに気付かず、11時15分わずか前ふと目覚めたとき、正船首方至近のところに同灯浮標を認め、直ちに左舵一杯としたが及ばず、丸沖3号は、11時15分第1防波堤北灯台から138度910メートルの地点において、船首が207度に向いたとき、原速力のまま、その右舷船首部が倭口第1号灯浮標に衝突した。
当時、天候は晴で風力4の南風が吹き、潮候は上げ潮の中央期にあたり、付近には北に流れる0.5ノットの潮があった。
衝突の結果、丸沖3号は右舷船首部外板に破口を生じ、倭口第1号灯浮標は浮体上部に擦過傷を生じたが、のちいずれも修理された。
(原因)
本件灯浮標衝突は、沖縄県那覇港内を航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、倭口第1号灯浮標に向けて進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、沖縄県那覇港内を航行中、疲労の蓄積から眠気を催した場合、居眠り運航に陥らないよう、いすから立ち上がって操船に当たるなど、居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、港内を航行していることから、居眠りに陥ることはないものと思い、居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により、倭口付近から那覇水路入口付近にかけての港内を広く見渡せる状況となったとき、航行する他船を認めなかったことから、気が緩んで居眠りに陥り、倭口第1号灯浮標に向け進行して衝突を招き、丸沖3号の右舷船首部外板に破口を、同灯浮標の浮体上部に擦過傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。