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平成15年横審第43号
件名

貨物船星祥丸遊漁船翔栄丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年8月13日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(阿部能正)

理事官
織戸孝治

受審人
A 職名:星祥丸船長 海技免許:四級海技士(航海)
B 翔栄丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
星祥丸・・・左舷船首部に擦過傷
翔栄丸・・・右舷船首部を破損

原因
星祥丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
翔栄丸・・・警告信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、星祥丸が、見張り不十分で、錨泊中の翔栄丸を避けなかったことによって発生したが、翔栄丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年12月11日11時13分
 三重県御座岬南方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 貨物船星祥丸 遊漁船翔栄丸
総トン数 492トン 4.3トン
全長 70.40メートル 11.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 1,029キロワット 169キロワット

3 事実の経過
 星祥丸は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか4人が乗り組み、空倉のまま、船首1.5メートル船尾3.9メートルの喫水をもって、平成13年12月10日16時35分京浜港東京区を発し、愛媛県三島川之江港に向かった。
 翌11日10時55分半A受審人は、単独で船橋当直に当たり布施田水道を西行し、布施田灯標から270度(真方位、以下同じ。)200メートルの地点において、針路を240度に定め、機関を全速力前進にかけ、11.5ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 A受審人は、11時08分少し前御座埼灯台から169.5度3.1海里の地点に達したとき、正船首方1.0海里のところに、船首を北西方に向け、所定の形象物を表示して錨泊中の翔栄丸を視認し得る状況であったが、折から左舷前方を先航中の速力が遅い小型鋼船が自船の針路上に次第に近づくことから、小型鋼船に気を取られ、翔栄丸を見落とさないよう、正船首方の見張りを十分に行わなかったので、同船の存在と接近に気付かなかった。
 こうして、A受審人は、その後、翔栄丸に衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、右転するなど、同船を避けることなく続航中、11時13分御座埼灯台から186度3.6海里の地点において、星祥丸は、原針路原速力のまま、その左舷船首部が、翔栄丸の右舷船首部に後方から75度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力5の北西風が吹き、視界は良好であった。
 また、翔栄丸は、エアーホーンを備えたFRP製遊漁船で、B受審人(平成11年11月一級小型船舶操縦士免状を取得)が1人で乗り組み、釣り客4人を乗せ、遊漁の目的で、船首尾とも0.10メートルの喫水をもって、同日05時55分三重県宿田曽漁港を発し、御座岬南方沖合の釣り場に向かった。
 07時40分B受審人は、衝突地点付近に至り、水深約70メートルのところで機関停止のうえ、左舷船首部から重さ35キログラムの鋼製錨を投じ、長さ3メートルのステンレス製鎖を繋いだ太さ20ミリメートル長さ170メートルの合成繊維索を延出して錨泊したのち、操舵室上部に錨泊中であることを示す所定の形象物を表示し、まもなく前部甲板で釣り客に遊漁を行わせた。
 B受審人は、自ら操舵室で周囲の見張りに当たっていたところ、11時08分少し前船首が315度を向いていたとき、右舷船尾75度1.0海里のところに、来航する星祥丸を初めて視認し、その後、同船が衝突のおそれがある態勢で接近していることを知ったが、やがて星祥丸が避けるものと思い、警告信号を行うことも、間近に接近したとき、機関を使用するなど、衝突を避けるための措置をとることもなく見守るうち、同時13分少し前星祥丸が至近に迫って、ようやく危険を感じ、エアーホーンを数回吹鳴しながら釣り客を船尾に誘導したが、翔栄丸は、船首を315度に向けて、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、星祥丸は左舷船首部に擦過傷を、翔栄丸は右舷船首部に破損をそれぞれ生じた。

(原因)
 本件衝突は、三重県御座岬南方沖合において、星祥丸が、見張り不十分で、錨泊中の翔栄丸を避けなかったことによって発生したが、翔栄丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、三重県御座岬南方沖合を西行する場合、錨泊中の翔栄丸を見落とさないよう、正船首方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、左舷前方の小型鋼船に気を取られ、正船首方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、翔栄丸の存在と接近に気付かず、右転するなど、同船を避けることなく進行して衝突を招き、自船の左舷船首部に擦過傷を、翔栄丸の右舷船首部に破損をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、三重県御座岬南方沖合において、錨泊して遊漁中、星祥丸が衝突のおそれがある態勢で接近していることを知った場合、機関を使用するなど、衝突を避けるための措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、やがて同船が避けるものと思い、衝突を避けるための措置をとらなかった職務上の過失により、そのまま錨泊を続けて衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


参考図
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