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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成15年長審第21号
件名

漁船幸繁維丸防波堤衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年7月14日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(原 清澄)

理事官
金城隆支

受審人
A 職名:幸繁維丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
幸繁維丸・・・船首部を圧壊、のち廃船
船長が胸部打撲及び鼻部裂創

原因
幸繁維丸・・・見張り不十分

裁決主文

 本件防波堤衝突は、見張りが不十分で、防波堤に向首進行したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年1月4日01時20分
 長崎県相浦1防波堤北西端東側
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船幸繁維丸
総トン数 4.96トン
登録長 10.35メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 80

3 事実の経過
 幸繁維丸は、FRP製漁船として登録されているが、専ら新聞の輸送に従事し、一級小型船舶操縦士免許を有するA受審人が1人で乗り組み、新聞約1,100部を積み込み、船首0.55メートル船尾1.28メートルの喫水をもって、平成15年1月4日01時05分長崎県相浦港を発し、同県有川港に向かった。
 A受審人は、離桟後、速力を徐々に上げ、機関回転数を毎分1,000として5.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で航行し、01時15分少し過ぎ相浦港第4号灯浮標を左舷正横20メートルに見る状況となったとき、針路を相浦港第1号灯浮標をわずか右に見る250度(真方位、以下同じ。)に定め、舵輪の前に立ち、手動操舵により進行した。
 01時19分半A受審人は、相浦港1号防波堤灯台から030度140メートルの地点に達したとき、正船首方に丸曽根灯浮標の灯火を視認したので、同灯火に向けるため左舵をとり、相浦1防波堤を左舷側に50メートル離して航過することとなる、針路を234度に転じ、機関回転数を毎分1,500に上げて速力を8.0ノットとし、船首が同灯火に向首していることを確認して舵を元に戻したのち、いすに座ろうと同灯火から目を離し、更に手も舵輪から放したが、その際、何かのはずみで舵がわずかに左にとられて左転を始めたものの、同人が前方の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かなかった。
 01時20分わずか前A受審人は、ふと前路に目を転じたところ、丸曽根灯浮標の灯火が見えないことに気付き、不審に思って続航中、01時20分相浦1防波堤北西端東側に、原速力のまま、ほぼ直角に衝突した。
 当時、天候は雨で風力4の北西風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 衝突の結果、幸繁維丸は、船首部を圧壊して廃船とされた。また、A受審人は、胸部打撲及び鼻部裂創を負った。

(原因)
 本件防波堤衝突は、長崎県相浦港から同県有川港に向けて西行中、見張り不十分で、相浦1防波堤北西端に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、長崎県相浦港から同県有川港に向けて西行中、相浦1防波堤を左舷側至近に見て航過しようとする場合、同防波堤を無難に通過できるよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、丸曽根灯浮標の灯火の視認模様を確認したから大丈夫と思い、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、いすに座ろうとして同灯火から目を離したうえ、舵輪から手も放し、その際、舵がわずか左方に取られて左転を始めたが、前路の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かないまま進行して相浦1防波堤との衝突を招き、船首部を圧壊させ、自らも胸部打撲及び鼻部裂創を負うに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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