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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成15年横審第31号
件名

巡視艇きりかぜ護岸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年7月30日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(黒田 均)

副理事官
入船のぞみ

受審人
A 職名:きりかぜ船長 海技免許:四級海技士(航海)(履歴限定)

損害
船首部を圧壊
乗組員が軽度の打撲

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件護岸衝突は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年9月20日03時04分
 京浜港横浜区
 
2 船舶の要目
船種船名 巡視艇きりかぜ
総トン数 24トン
全長 19.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,338キロワット

3 事実の経過
 きりかぜは、2機2軸を有する船体が鋼製の巡視艇で、A受審人ほか3人が乗り組み、電波の発信源調査の目的で、船首1.12メートル船尾1.48メートルの喫水をもって、平成14年9月20日02時25分京浜港横浜第1区にある第三管区海上保安本部横浜海上防災基地の巡視艇専用さん橋を発し、同港横浜第5区に向かった。
 A受審人は、国際ふ頭での調査を終え、レーダーを監視していた乗組員を降橋させて南本牧ふ頭MC1岸壁に向かっていたところ、横浜海上保安部の当直者から同ふ頭南西方の錨地に行くよう連絡を受け、03時02分少し過ぎ横浜金沢木材ふとう東防波堤灯台(以下「東防波堤灯台」という。)から040度(真方位、以下同じ。)1.6海里の地点において、船首を反転させ、横浜根岸第1号及び同第3号両灯浮標のほぼ中間に向首する180度に針路を定め、機関を回転数毎分770にかけて8.0ノットの速力とし、手動操舵で進行した。
 ところで、A受審人は、平成14年4月から船長としてきりかぜに乗り組み、昼間のほか夜間の当直業務も週1回の割合で行っており、南本牧ふ頭の南部は埋立中で、同ふ頭建設工事区域には標識灯が点灯されている外周護岸(以下「護岸」という。)が設置されていることを承知していた。
 定針したときA受審人は、南本牧ふ頭建設工事区域付近を南下する状況であったが、船首目標とした前示の両灯浮標が見えていたので、前方に障害物はないものと思い、レーダーで船首方の護岸までの距離を測定するなど、船位の確認を十分に行わず、前方460メートルに迫っていた護岸に向首接近していることに気付かないで続航した。
 03時04分少し前A受審人は、前示の標識灯に気付かないまま、目的地に向け右舵をとったとき、船首方至近に護岸を初めて認め、機関を中立に続いて後進としたが及ばず、03時04分東防波堤灯台から046度1.4海里の地点において、きりかぜは、200度に向首したとき、ほぼ原速力のまま、護岸に衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の北北西風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
 衝突の結果、船首部を圧壊し、乗組員が軽度の打撲などを負った。

(原因)
 本件護岸衝突は、夜間、京浜港横浜第5区の南本牧ふ頭建設工事区域付近を南下する際、船位の確認が不十分で、護岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、京浜港横浜第5区の南本牧ふ頭建設工事区域付近を南下する場合、護岸が設置されていることを知っていたのであるから、護岸に接近しないよう、レーダーで護岸までの距離を測定するなど、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、船首目標とした灯浮標が見えていたので、前方に障害物はないものと思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、護岸に向首していることに気付かないまま進行して護岸への衝突を招き、船首部を圧壊させ、乗組員に打撲などを負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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