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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 運航阻害事件一覧 >  事件





平成14年那審第63号
件名

プレジャーボート南州運航阻害事件(簡易)

事件区分
運航阻害事件
言渡年月日
平成15年5月28日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(上原 直)

理事官
濱本 宏

受審人
A 職名:南州船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
主機が始動不能、蓄電池全4個を取替

原因
電気系統の習熟不十分

裁決主文

 本件運航阻害は、電気系統の習熟が不十分で、蓄電池が過放電状態になり、主機が始動不能になったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年8月13日14時20分
 鹿児島県奄美大島梵論瀬埼沖合 
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート南州
総トン数 13.29トン
登録長 11.97メートル
機関の種類 過給機付4サイクル6シリンダ・ディーゼル機関
出力 181キロワット

3 事実の経過
 南州は、昭和55年1月に警察庁の警備艇として進水したプレジャーボートで、主機始動及び機器駆動の電源として、直流12ボルトの蓄電池2個を直列に結線して24ボルトの2群の電源系統を備え、主機直結の充電用発電機で主機運転中に充電していた。
 機関室後部左舷側の主配電盤には、電源切換スイッチ、電源表示灯、電圧計及び電流計などのほか、蓄電池1群、同2群、充電発電機、操舵室制御盤等の各スイッチを取り付け、主機の発停時には、主配電盤で電気機器の各スイッチを操作するようになっていた。
 A受審人は、平成14年2月に一級小型船舶操縦士の免状を取得したのち、同年5月に中古の本船を購入し三重県津市を中心に近隣県の海岸付近への遊覧及び釣りなどの目的で何度か使用したあと、翌々7月友人数名を乗せ同市津ヨットハーバーを発航して各地に寄り、沖縄島まで周航する航海計画を立てた。
 A受審人は、本船を所有しての運転時間が少なく、2群の電源系統を備えていることを知らないばかりか、日ごろ航行中、飲酒して燃料補給を忘れて主機を停止させても、燃料油補給後、空気抜きを行えば、主機を再始動できるものと考えていたうえ、主機の発停時に、電気機器の各スイッチを操作して、その状態を確認するなど電気系統の習熟が十分でなかった。
 A受審人は、沖縄島までの周航準備を整えたものの、友人が同行できなくなったので、単独で乗り組み、平成14年7月29日12時20分津ヨットハーバーを発し、途中の各港で燃料油の軽油を補充しながら沖縄島に向け航行を続け、翌8月11日22時20分鹿児島県吐鋪喇列島の口之島に到着した。同人は、翌12日09時00分同県名瀬港に向け同島を発した直後から飲酒を始め、自動操舵装置がなく手動で操舵し、主機を停止して休息を数回繰り返しながら続行していたところ、同日17時30分ごろ諏訪瀬島東岸を通過したのち、しばらくして就寝することにした。しかしながら、主機発停時における電気機器の各スイッチの状態を確認するなど電気系統の習熟が十分でなかったので、主機を停止して漂泊するとき、停泊灯を点灯したが航海灯及び夜間航行用探照灯を切らなかったうえ、翌朝の主機始動後に蓄電池充電用スイッチを投入しなかった。
 こうして、南州は、主機の始動はできたものの、その後、蓄電池に充電されなかったため、蓄電池が過放電状態になり、航行中、同月13日12時30分燃料切れで主機を自停させたのち、船内に保有していた燃料油を補給して空気抜きを行い、再始動を3度試みたが始動できず、もう一つの電源系統を備えていることを知らなかったので、主機の始動ができないと思い、14時20分梵論瀬灯台から真方位350度14.6海里の地点において、自力での航行を断念して海上保安庁に救助を求めた。
 当時、天候は晴で風力1の北東風が吹き、海上は穏やかであった。
 その結果、南州は、来援した巡視船により名瀬港に曳航され、本件時の蓄電池に不安を覚え、蓄電池全4個を取り替えた。

(原因)
 本件運航阻害は、主機の発停を行う際、電気機器各スイッチを操作して、その状態を確認するなど電気系統の習熟が不十分で、蓄電池充電用スイッチが投入されずに航行中、燃料切れで主機が自停し、燃料補給後の再始動時、蓄電池が過放電状態になり主機が始動不能になったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、主機の発停を行う場合、蓄電池が過放電状態にならないよう、電気機器各スイッチを操作して、その状態を確認するなど電気系統に十分習熟すべき注意義務があった。ところが、同人は、本船を所有しての運転時間が少なく、電気系統に十分習熟していなかった職務上の過失により、主機を停止して漂泊するとき、航海灯及び夜間航行用探照灯のスイッチを切らなかったうえ、翌朝の主機始動後に蓄電池充電用スイッチを投入しなかったため、蓄電池が過放電状態になり、航行中、燃料切れで主機を自停させ、燃料油補給後の再始動時、主機が始動不能となる運航阻害を招き、巡視船に救助されるに至った。





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