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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 死傷事件一覧 >  事件





平成14年広審第138号
件名

プレジャーボート岡稲石丸遊泳者負傷事件(簡易)

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成15年5月30日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(関 隆彰)

副理事官
亀井龍雄

受審人
A 職名:岡稲石丸船舶所有者 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:岡稲石丸乗艇補助者 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
遊泳者が右腰椎横突起骨折、頭部打撲及び右肘打撲

原因
キーを挿入したまま、水上オートバイが放置されたこと

裁決主文

 本件遊泳者負傷は、遊泳者がいる場所で、キーを挿入したまま、水上オートバイが放置されたことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年7月20日10時45分
 香川県豊島中玉浜
 
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート岡稲石丸
登録長 1.87メートル
全長 2.21メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 52キロワット

3 事実の経過
 岡稲石丸は、船首尾ともに0.16メートルの喫水をもつ、FRP製水上オートバイで、A受審人が単独で乗り組み、総勢20人ばかりの仲間が分乗した3隻のプレジャーボート及びB受審人が操縦する水上オートバイなどとともに、プレジャー目的で、平成14年7月20日09時岡山港の三播港船溜まりを発し、同時30分ころ香川県豊島の中玉浜に至り、海の家手前の海岸から3メートルばかり沖の、水深1メートル弱の場所で、沈めた錨に係留した。
 ところで、岡稲石丸は、立って操縦する一人乗りタイプで、右ハンドルにスロットルレバー、左ハンドルに機関の始動及び停止ボタンを備え、停止ボタンの付け根にキーを挿入して始動ボタンを押すことにより、主機が始動し、スロットルレバーを握ると加速する機構となっていた。
 A受審人は、到着後、仲間とともに海岸の清掃作業に従事し、そのとき岡稲石丸の傍には遊泳者がいて、誤って始動ボタンに触れると機関が始動するおそれがあったが、許可なく同艇に乗る者はいないものと思い、キーを挿入した状態のまま同艇を放置していた。
 B受審人は、一緒に作業に当たり、ゴミを燃やしていて、10時40分暑くなったため岡稲石丸の付近で水につかっていたところ、近くで水遊びをしていた同行の少女(12歳)に頼まれ、同艇の上に乗せてあげることにし、自身は海中に立って、艇の安定のため右舷後端部を支えていたが、操縦未経験の同少女が、誤って始動ボタンを押すと発進するおそれがあったものの、動かすのではなく、ただ乗艇させるだけなので、危険はないと思い、キーが抜かれていることを確認することなく、同少女の乗艇を許した。
 同少女は、岡稲石丸を動かす意図がなく、同艇に上がり、両膝をついたままの不安定な状態で乗っていたが、10時45分わずか前バランスを保とうと両方のハンドルにつかまったところ、誤って始動ボタンを押し、スロットルレバーも握っていたため、同艇は急発進した。
 岡稲石丸は、右後端をB受審人が押さえていたため右に急旋回してほぼ海岸線に沿う西方に向き、すぐ前3メートルばかりのところで岸に向かっていた3人の遊泳者の方に向かう態勢となったころ、同受審人の手を振りきり、錨を引きずりながら前進し、10時45分家浦港中央一文字防波堤灯台から真方位251度1,050メートルの地点において、異常に気付いて振り返った遊泳者の一人に接触した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の中央期であった。
 その結果、遊泳者は、右腰椎横突起骨折、頭部打撲及び右肘打撲の負傷をし、1箇月の入院加療を要した。

(原因)
 本件遊泳者負傷は、香川県豊島の遊泳者がいる場所で、キーを挿入したまま、水上オートバイが放置され、乗艇した未経験者が、誤って機関始動ボタンを押し、急発進したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、香川県豊島の遊泳者がいる場所で、沈めた錨に岡稲石丸を係留しておく場合、始動ボタンを押せば機関が始動するおそれがあったのであるから、誤って同艇を発進させ、遊泳者に危険を及ぼすことのないよう、キーを抜いておくべき注意義務があった。しかしながら、同人は、許可なく同艇に乗る者はいないものと思い、キーを挿入したまま放置した職務上の過失により、未経験者が誤って始動ボタンを押し、同艇を発進させ、遊泳者との接触を招き、遊泳者の右第1から第4腰椎横突起骨折、頭部打撲及び右肘打撲の負傷を生じさせるに至った。
 B受審人は、香川県豊島の遊泳者がいる場所で、岡稲石丸を支えて、未経験者に乗艇を許す場合、キーが挿入された状態でボタンを押せば、機関が始動するおそれがあったのであるから、誤って同艇を発進させ、遊泳者に危険を及ぼすことのないよう、キーが抜かれていることを確認すべき注意義務があった。しかしながら、同人は、動かすのではなく、ただ乗艇させるだけなので、危険はないと思い、キーが抜かれていることを確認しなかった職務上の過失により、前示のとおり接触を招き、負傷を生じさせるに至った。





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