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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成15年長審第19号
件名

旅客船エアポートライナー11乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年6月20日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(原 清澄)

理事官
向山裕則

受審人
A 職名:エアポートライナー11船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船尾船底外板に破損及び両舷推進器翼に曲損

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年9月8日16時29分
 長崎県大村市沖合亀瀬
 
2 船舶の要目
船種船名 旅客船エアポートライナー11
総トン数 12トン
全長 13.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 485キロワット

3 事実の経過
 エアポートライナー11(以下「11号」という。)は、平水区域を航行区域とし、専ら長崎県時津と同県長崎空港間の旅客輸送に従事する2機2軸1舵のFRP製旅客船で、一級小型船舶操縦士免許を受有するA受審人が1人で乗り組み、回航の目的で、船首0.5メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成14年9月8日16時25分長崎県大村港を発し、長崎空港マリンターミナルに向かった。
 16時26分半A受審人は、臼島78メートル頂(以下「臼島」という。)から081度(真方位、以下同じ。)920メートルの地点に達したとき、針路を228度に定め、機関を港内全速力前進の15.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)にかけ、手動操舵により進行した。
 16時27分半A受審人は、臼島から112度570メートルの地点に達したとき、正船首方750メートルのところに、停留する小型船を視認し、平素から航走波による漁船とのもめごとが多かったので、更に接近した際、同船を避航するつもりで続航した。
 16時29分少し前A受審人は、前路の小型船に100メートルばかりまで接近したとき、同船を避けて右転すると亀瀬に著しく接近する状況にあったが、亀瀬はすでに航過しているものと思い、自船をいったん停止するなどして船位の確認を十分に行うことなく、速力を12.0ノットに減じただけで、右舵15度をとって右転を始めた。
 11号は、16時29分A受審人が小型船を十分に離したと思って舵を中央に戻したとき、臼島から182度630メートルの亀瀬に乗り揚げ擦過した。
 当時、天候は晴で風力3の北西風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果、11号は、船尾船底外板に破損及び両舷推進器翼に曲損などを生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、長崎県大村港沖合を航行中、船位の確認が不十分で、亀瀬に向けて転舵進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、長崎県大村港沖合を同県長崎空港マリンターミナルに向けて航行中、前路で停留する小型船を避けて右転する場合、右舷方には亀瀬が存在していたのであるから、同瀬を避けて航行できるよう、自船をいったん停止するなどして船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、亀瀬はすでに航過しているものと思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、亀瀬に向けて転舵進行し、同瀬への乗揚を招き、船尾船底外板に破損及び両舷推進器翼に曲損などを生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して、同人を戒告する。





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