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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成15年那審第6号
件名

漁船北斗丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年6月12日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(坂爪 靖、小須田 敏、上原 直)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:北斗丸船長 海技免状:小型船舶操縦士

損害
船底を大破し、のち廃船

原因
針路確認不十分

主文

 本件乗揚は、針路の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年9月13日01時33分
 沖縄県伊是名島仲田港南東方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船北斗丸
総トン数 2.37トン
登録長 9.15メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 50

3 事実の経過
 北斗丸は、底はえ縄漁業に従事する、レーダーを備えない木製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.35メートル船尾0.65メートルの喫水をもって、平成14年9月12日08時30分沖縄県辺土名漁港を発し、09時30分同県伊是名島南東方約4.5海里の漁場に至って操業を開始し、その後北西方に移動し、たい等約55キログラムを獲て操業を終え、翌13日01時30分仲田港東防波堤灯台から113度(真方位、以下同じ。)600メートルの地点を発進して帰途についた。
 ところで、辺土名漁港の北西方約16海里のところに伊是名島があり、同島北東端の東方約900メートルから、同島東岸仲田港の南東方約1,200メートルのところにある降神島付近にかけ、陸岸から沖合に向かって干出さんご礁が拡延しており、A受審人は、日ごろ伊是名島東岸沖合で操業を行っていたことから、同島東岸沖合の干出さんご礁の存在について十分に承知していた。
 発進するとき、A受審人は、船首が312度で仲田港の方を向いた状態であったので、その反方位の辺土名漁港に向けるつもりで、機関を4.3ノットの微速力前進にかけ、船尾部で舵棒に取り付けたロープを手で操作しながら左舵を取り、勘だけを頼りに針路を定めたところ、207度となって、降神島北東岸付近の浅礁に向首する状況となったが、目的地に向いた針路になっているものと思い、コンパスを見たり、GPS画面の伊是名島東岸の海岸線と船首方向とを比較したりするなど、針路の確認を十分に行わないで、この状況に気付かないまま進行した。
 北斗丸は、A受審人が針路の確認を十分に行わないまま続航中、01時33分仲田港東防波堤灯台から147度700メートルの地点において、原針路、原速力のまま、降神島北東岸付近の浅礁に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力2の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、船底を大破し、のち廃船とされた。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、沖縄県伊是名島東岸の仲田港沖合において、帰港のため漁場を発進する際、針路の確認が不十分で、降神島北東岸付近の浅礁に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、沖縄県伊是名島東岸の仲田港沖合において、帰港のため漁場を発進する場合、同島東岸沖合には干出さんご礁が存在するから、これに著しく接近することのないよう、コンパスを見たり、GPS画面の同島東岸の海岸線と船首方向とを比較したりするなど、針路の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、舵棒を操作して勘だけを頼りに針路を定めたものの、目的地に向いた針路になっているものと思い、針路の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、降神島北東岸付近の浅礁に向首していることに気付かないまま進行して乗揚を招き、北斗丸の船底を大破して同船を廃船させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって、主文のとおり裁決する。





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