(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成15年2月23日17時35分
長崎市福田本町サンセットマリーナ南西岸
2 船舶の要目
船種船名 |
プレジャーボート潮風II |
登録長 |
7.20メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
102キロワット |
3 事実の経過
潮風II(以下「潮風」という。)は、FRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、イトヨリ釣りの目的で、船首0.30メートル船尾0.54メートルの喫水をもって、平成15年2月23日09時50分長崎県長崎市大浜町大浦川の船だまりを発し、同県大蟇島南西方4海里ばかりの釣り場に至って釣りをしたのち、16時56分大蟇島大瀬灯台から208度(真方位、以下同じ。)4.3海里の地点を発進し、帰途についた。
ところで、A受審人は、当日、長崎県南部地方に強風波浪注意報が出されていたことから、予定していた友人との魚釣りを中止したこともあって、02時ころまでテレビを見たのち、07時ころまで就寝し、その後、家の周囲の草刈りを行い、09時30分ころこれを終えたとき、予想されていたよりも風が弱かったので、急遽(きゅうきょ)、1人で魚釣りに出かけることにした。そして同人は、魚釣り中、12時ころに清酒1合を、15時30分ころに350ミリリットル入り缶ビールを1缶飲酒したものの、その影響はほとんどなかったが、平素よりも睡眠がやや不足した状態となっていた。
A受審人は、釣り場発進時に針路を104度に定め、機関を全速力前進にかけて25.0ノットの対地速力とし、舵輪の後部で、逆U字型に取り付けたパイプ状の鋼管に体をもたれかけ、手動操舵により進行し、その後、周囲に他船の船影を見かけず、かつ、静穏な海上模様であったためか、17時27分ころ長崎港小江沖防波堤灯台(以下「小江沖防波堤灯台」という。)から278度2.7海里の地点に達したころから眠気を催す状態となったが、すでに定係港に近付いており、同港に入港するまでは何とか居眠りに陥らないで航行できるものと思い、漂泊して眠気がとれるまで仮眠するなどの居眠り運航の防止措置をとることなく続航した。
17時30分少し前A受審人は、小江沖防波堤灯台から275.5度1.8海里の地点に達したとき、眠気のため意識が朦朧(もうろう)とした状態で、針路をサンセットマリーナの南西岸に向首する117度に転じ、舵輪を手に持ったまま進行しているうち、いつしか居眠りに陥った。
こうして、潮風は、適切に操船されないまま続航中、17時35分少し前A受審人の体がたまたま動いたとき、手に持った舵輪がわずか左に取られて回頭を始め、17時35分その船首が094度に向いたとき、小江沖防波堤灯台から159度1,700メートルの地点において、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は曇で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の末期であった。
乗揚の結果、潮風は、船首船底外板を圧壊するなどの損傷を生じたが、のち修理された。また、A受審人は頭部挫創などを負った。
(原因)
本件乗揚は、長崎県三重式見港の南南東方沖合を東行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、長崎市福田本町のサンセットマリーナの南西岸に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、長崎県三重式見港の南南東方沖合を東行中、眠気を覚えた場合、居眠り運航とならないよう、漂泊して眠気がとれるまで仮眠するなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、すでに定係港に近付いており、同港に入港するまでは何とか居眠りに陥らないで航行できるものと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、長崎市福田本町のサンセットマリーナの南西岸に向首進行して同岸への乗揚を招き、船首船底外板を圧壊するなどの損傷を生じさせ、自らも頭部挫創などを負うに至った。